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短編エピソード11『宅配便の影』
短編エピソード11『宅配便の影』
夕方、薄暗くなり始めた廊下に「ピンポーン」とチャイムが響く。
その音に、ソファの下で丸まっていたゴンちゃんの頭がひょこっと持ち上がった。翼の先がカーペットに擦れる音がする。
「……また来たな」
信吾は立ち上がり、玄関へ向かう。ドアを開けると、そこには段ボール箱。
宅配員の姿はなく、遠くで階段を降りていく足音だけが聞こえた。
「いつも置き配で助かるけど……」
玄関の角から、ゴンちゃんがこっそり顔を出す。黄金色の瞳がきらきら揺れている。
「怪しいものじゃないぞ。中身は……おやつ、かな?」
信吾が箱を開けると、ふわっと香る甘い匂い。美沙が注文したクッキーと、ゴンちゃん用のササミチップが入っていた。
その瞬間、ゴンちゃんのしっぽがぱたんと一度揺れる。
彼はゆっくり信吾に近づき、鼻先を箱の縁に押し付けて中身を確認。
――どうやら、ゴンちゃんの中で「宅急便の段ボール=うまいものが届く」という方程式が完成したらしい。
数分後、また階段を降りる音が聞こえると、ゴンちゃんは玄関前でしっぽを振り始めた。
信吾は思わず笑ってしまう。
「いや、今日はもう届かないって」




