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短編エピソード10『はじめてのおつかい(未遂)』
短編エピソード10『はじめてのおつかい(未遂)』
「……あれ? ゴンちゃん、いない!」
休日の昼下がり。ふと目を離した隙に、ゴンちゃんが姿を消していた。玄関のドアが、ほんの少し開いている。
「まさか……!」
信吾と美沙が慌てて廊下に飛び出すと、数メートル先――エレベーターの前に、ちょこんと座る緑の背中が見えた。
「ゴンちゃんっ!」
ホッと胸を撫で下ろして駆け寄ると、ゴンちゃんは何やら口にくわえていた。……信吾の財布だ。
「えっ、それ……」「まさか、買い物?」
リビングのテーブルに置いてあった財布を、器用に持ち出してきたらしい。
ふたりは思わず顔を見合わせて、吹き出した。
「ていうか、エレベーターどうする気だったの……」「ボタン、届く?」
呆れつつも笑いながら美沙が受け取ろうとすると、ゴンちゃんは財布をぎゅっと胸に抱えて、しっぽを得意げに振った。
「……でも、やる気はすごいよね」
叱るよりも先に、感心してしまう。そんなところも、ゴンちゃんらしい。




