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短編エピソード6『美沙の洋服づくり』
短編エピソード6『美沙の洋服づくり』
ある日、美沙が通販の大きな箱を抱えて帰ってきた。中から出てきたのは、家庭用のミシン。
「じゃーん! ゴンちゃんの洋服、作ってみようと思って!」
その目はやたらと輝いていた。ゴンちゃんのために何かしたい一心らしい。
「え、裁縫なんてできたっけ?」
「できない。でも気持ちでカバー!」
そのまま布や糸を並べて、ミシンに向かう美沙。最初のうちは真剣そのものだったが、数時間後。
「……なんだこれ」
信吾が見たのは、何かの変身途中で止まったような布の塊。ゆがんだ縫い目、あやしい立体感、糸がつった謎の開口部。
「思ってたのと違う……こんなに難しいとは……」
ぐったりする美沙の横で、ゴンちゃんはその布にじゃれつきながら、うれしそうに丸まっている。
「まぁ、ぞうきんならいくらあっても困らないしな」
信吾の一言に、美沙は布の塊を投げたが、すぐに笑い出した。
布にくるまりながら「きゅ」と鳴くゴンちゃん。その声が、全部の失敗を優しく包みこんだ。




