第5章のちょっと前 「呪われし勇者」④
容疑者その1。
「『ミハエル様に愛を届け隊』代表、クリスティです。人間ごときがミハエル様に行う無礼や暴言の数々、非常に遺憾に思っています。あのクソ人間、死ねばいいのに」
いや、無礼や暴言の数々はわたしも受けてるし……ってか本人目の前にいるんだけど?
「ですが、それはそれ。まずはわたし達がミハエル様に認められることが大切と考えています。そうよね、あなたたち!」
「「完膚なきまでに完璧な料理を! 美味しい料理を!」」
「というわけで、わたしたちが勝つまで、生ゴミ女には生きていただかなくては困ります。天誅を下すのはわたし達ではなく、わたし達の料理であるべきです」
肉じゃがとかタコの刺身とか、簡単なものしか作ってないんだけどなぁ……
容疑者その2。
「『ジョン君寵愛連合』の……えっと、さっきじゃんけんで勝ったミーアです。えっと、その、ジョン君はとっても優しい人なので、誰にでも優しいのは知っています。優しいジョン君を見ているだけで、その……心が暖かくなるんです」
ミーアちゃん、いい子だ。その言葉だけで、わたしの心は暖かくなりますとも。
「だから、あの……ジョン君が哀しむことをする人は、わたしたちの中にはいないと思います。人間の女の子にまで優しいなんて、ジョン君、超萌えです♪」
「「ジョン君萌え! わたし達の愛はジョン君のためにっ!」」
ふと、ストーカー集団と思ってしまったことは、心の隅に仕舞っておこう。
容疑者その3。
「『崇高なる魔族の血』司教代理のゲフィニカです。いやぁ、人間を配下に列席させるとは、今代の魔王シモン様は非常に寛大なお心を持っていらっしゃると存じます。ましてやその人間は、魔族を二度も救い、エンゼルフィッシュまで従えていると言うではないですか!」
どうやらタコを素手で掴んだのは、わたしが思っているよりも遥かに偉業らしい。
「勇者が我ら魔族の味方になったのであれば、もはや怖いものなしです! シモン様万歳!」
「「シモン様万歳! シモン様万歳! 我ら魔族に栄光あれ!」」
意外と心が広い人たちで安心だけど、そのサバト風の衣装はどうにかならないかな?
容疑者その4。
「『香澄様を勝手に後援会』で副会長をしております、クルスといいます。ちなみに会長はノホホン姐さんです。此度に限らず、お困りのことがありましたら、我々を頼ってください。微力ながら手伝わせていただきます」
あ、わたしのもあるんだ……ちょっと嬉しいかも。
でもノノが会長ってところだけは、ちょっと不安かも。
「テメェら、香澄様がお困りだ。血祭りだ、呪いの犯人を血祭りにあげるぞ!」
「「うぉぉらっしゃぁぁぁぁぁぁ!」」
「えっと、血祭りはやめてね?」
「血祭りはやめだぁぁぁぁ!」
「「感動っ! 香澄様、優しすぎだぁぁぁぁ!」」
どうしよう。このノリについていけない……
容疑者その5。
「自分は『筋肉ガルム軍』の自称総司令、マッスルボブであります。香澄様は我らがガルム様が一目置かれているお方。人間の女子ながら練兵に参加するその心意気、敬服に値します! 総員、敬礼っ!」
「「サー!」」
「香澄様に、我々のこの上腕二等筋の躍動の音、是非とも聞いていただきたい!」
「えっと……また今度ね」
「ありがとうございます! 幹部は一六〇〇時に俺の部……ではなく臨時軍議室に集合。リサイタルの日程について軍議を行う。今回は三曲だ!」
「「よっしゃぁぁぁぁぁ!」」
え? 筋肉でリサイタルって何?
というわけで、グリードがシモンに無事謁見し終わったあと、ジョンとグリードと一緒に、呪いをかけた犯人を捜した。
仕事が残ってるからと言ったら、そんなことよりこっちの方が大切ですとジョンに怒られたのだ。
その一環で色々なグループの話を聞いて回ってみたのだが、悉くハズレだったようだ。
わたしたちは打つ手が無くなり、わたしたちは最初の前庭へと戻ってきていた。
「魔族って馬鹿しかいねぇのか?」
ぽつりとグリードが呟く。
「いえ、そんなことはないですよ。たまたま話を聞いた方々が、そういう人たちだったというだけです」
さらりとジョンが毒を吐くが、おそらく本人は気付いていないのだろう。
ジョンは素直でいい子だからなぁ。きっと誰かに悪意を向けたことなんて無いのだろう。
※IF裏話※
香澄「どうやらタコを素手で掴んだのは、わたしが思っているよりも遥かに偉業らしいんだよね……」
ミーア「あの、その……偉業というか、わたしたちとは違うって言うか……」
クリスティ「はっきり言って大丈夫ですよ、ミーアさん。『うわっ、何あの人……ありえない』って感じたと」
ゲフィニカ「ヒャーッハッハッハ!! 香澄様は我々の常識など容易く超えてしまわれるのですよ!」
マッスルボブ「聞けばそのタコとやら、全身がほぼ筋肉だとか! 是非とも語り合いたいものです!」
クリスティ「香澄さん、あなたはこのお二方と一緒です。わたしには常識を踏み外したように見えますわ」
香澄「えっ、わたしってこいつらと一緒!? そんな……クルスはわたしの味方だよね!?」
クルス「すみません香澄様。我々もタコの件だけは……」
香澄「………………」
以上、新キャラ達の常識度が分かる会話でした。






