13話 逃げる勇者02
戦いが始まる直前、マコトは南の空に黒い靄を見る。行軍中襲われた靄を・・・
顔をひきつらせたマコトは急いで服屋へと入り手ごろな騎士服を選びさっさと金額を払い着替えると、それまで着込んでいた騎士服を抱えみしぇと出る。
マコトが駆け込んだ先は、この町へ来た時にマコトに絡んできたゴロツキ集団のアジト。
「兄貴いらっしゃい! そんなに慌ててどうしやした?」
マコトはアジト内を見渡し人気がなさそうな場所に男を引き連れ移動した。
「なっ何なんですか? あっしには男色の趣味はありやせんぜ?」
するとマコトは男の耳元で囁くように呟く。
「この町もうすぐ戦闘になるぞ」
囁かれたその言葉に男は目を細める。
「そいつは本当ですかい?」
マコトは一瞬ためらい、改めて男を見据え頷くと、自分が率いていた部隊が襲われた時の状況を説明する。
「なるほど・・・兄貴が元騎士って訳ですかい」
「納得すんのはそこじゃない!」
「シッ! 声が大きいですぜ兄貴!」
男の言葉にマコトは口を押え周囲を窺うと、何人かの者からの視線を感じた。
「悪い。それでだな、何のために・・・」
「替え玉を用意してほしいんでしょ?」
にやつく男にマコトは頷き服を渡す。渡された男はすぐに部下の男を呼び、孤児の誰かマコトと姿が似ている者にこいつを着せるように指示を出し、更に別の部下とはいくつかの脱出案を練る。替え玉が【ナイトメイツ】へ逃げた場合、北にある【ディアーネ】へと逃げた場合、それとここ【ガンドーク】に残った場合と・・・
打ち合わせを終え食糧を集め終えたころ南門の内側の居住区より悲鳴が上がる。マコトは男たちと共に顔を見合わせ荷物を背負い地下の下水道へと足を踏み入れ息をひそめる。
そこへ斥候に出ていた部下より替え玉の孤児が西門へと逃げていると報告してきた。マコト達は、替え玉が【ナイトメイツ】へと逃げると判断して下水道を北へと進む。
半日くらい歩いたであろうか縄梯子を昇り明るい場所へと出た。そこは【ガンドーク】北にある森の中、岩に囲まれ外からは分かりにくい場所である。
男たちは周囲を警戒し用意していた【ライドバード】馬車に次々と乗り込む、マコトもそれに続き乗り込むと警戒しながら森の中を駆け抜け【ディアーネ】を目指し移動した。
・・・・・・・・・・・・・・・
替え玉として騎士服に着替えた少年は住民たちと共に西門を突破して【ナイトメイツ】を目指す。少年は足の速さで、ここまで生き抜いた孤児である。その走力を活かし先頭集団へと来ると追撃の為であろう【ファングウルフ】のアンデットの群れが後方集団を襲い悲鳴が上がった。




