12話 逃げる勇者01
南東大陸の西側で【ナイトメイツ】を巡り騎士王国、聖王国の連合軍と魔王軍の戦いが繰り広げられている頃、東側でも大きく動いていた。
ハジメ達の予想通りアードルフ率いる不死の軍団は森に居た魔物達を借り、アンデットとして蘇らせ配下に加えていた。その配下が勇者が潜伏する【ガンドーク】へと部隊を進める。
【ガンドーク】領主の館、豪華な室内でここの支配者である【リッチ】が配下の【スケルトン】から報告を受けていた。
「・・・それでここの戦力の3倍近い1個師団が我の支配するここ【ガンドーク】を取り囲んでいると」
【スケルトン】の口がカタカタと蠢く。
「新たに【スペクター】となった人間の部隊だと?・・・ふむ、エイプリル様にも困ったものだな」
この指揮個体の【リッチ】は上司であるリカルド・エイプリルの顔を思い浮かべ呟く。
「実力のみなら元四元将の兄リンクス様を超えているというのに、気まぐれでこの様なことをなさるから・・・」
【リッチ】の予測はおおむね当たっていた。アードルフを【スペクター】として作り替えたまでは普通に他の者たちも行っている。なのにアードルフは魔王軍に対する制限が無いのだ。リカルド自身や魔王に対する制限はあるのだが【リッチ】はそのことを知らない。いや知っていて遇えて口にしないのかもしれないが、その場で立ち上がり目が赤く怪しい光を発する。
【ガンドーク】には常時展開している【スケルトン】達は1個大隊ではあるが、地面に隠した【スケルトン・ナイト】達を合わせると2個大隊まで膨れ上がる。更に【リッチ】自身の魔術により戦力的には互角と言ってよかった。
【ガンドーク】へとまず攻撃を仕掛けたのが【スカウトバード】のアンデット【アンデットバード】である。上空から人々を襲い怪我を負わせ死に至らしめると、その死んだ人間がゾンビとして蘇り次々と人を襲って行く。繰り返し行われるこの攻撃で【ガンドーク】内部に敵の戦力を作ることになり城壁の戦力が低下する。
そしてしばらくすると【デスグリズリー】のアンデット【アンデットグリズリー】の小隊を先頭に東の城門へと押し寄せ、城門へと体当たりをし、城門がゆがむと更に前足を上げ門へと殴りつけ破壊する。東門が破壊されたことによりそこへと他の門攻略に赴いていた一団も一斉になだれ込み反対側の西門が手薄となった。
【ガンドーク】の住人たちは我先にと西門へと向かい【スケルトン】達の静止を力ずくで突破して西門を開け逃げ出した。逃げ出す人々の中に双剣を携えたマコトの姿もあった。




