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嫌われ者の勝負勘

「おーいっ! 大丈夫かぁー!!!」


 上空からマジックマントの切迫した大声が響く。


「う、くっ……」


 先程の襲撃によって、目的の安全地帯とは真反対の場所――アリジゴクの中心付近まで吹き飛ばされてしまっていた。まともな受け身を取ることもできず、飛び散る瓦礫が旭の全身を激しく打ちつけた。中でも一番痛みが酷いのは額だ。ツーッと伝い落ちてくる感覚を手で押さえ、指先を確認する。べっとりと付着した鮮やかな赤色が、嫌でも視界に焼き付いた。


(痛てぇ……シャレになんないぞ……これ……)


 ――ガガガガッ!!


 ボートを粉砕したあの巨躯な手は、既に再び地中へと潜り込んでいた。今、どこに潜んでいるのか。次はどこから襲いかかってくるのか。頼もしいという隊長の応援はまだ到着しないのか。様々な思考が渦巻き、やるべきことを見つけ出そうとする頭の中で激しく邪魔をしてくる。


(このまま朝比奈たちのところに向かっても……被害を拡大させるだけだ……!)


 先程の襲撃でハッキリと分かった。敵は完全に激昂している。今まで以上に動きが活発になり、狂暴化するはずだ。


「ハッ……。結局俺は、化け物から嫌われる運命だな……」


 ポツリと独り言を呟くと、不思議と乱れていた頭の中がスッとクリアになった。

 自分が今どんな状況にあるかなんて関係ない。

 プロの隊長が来るまでの残りの時間、精一杯自分の方へ敵の注意を引きつけるだけだ。


「なんなら――討伐までしてやるよ!」


 覚悟を決めた旭は、額から流れ出る血を腕で力強く拭うと、崩れ果てたフィールドを蹴って走り始めた。いつどこから敵が現れても即座に対応できるよう、教習所で習った重心を強く意識したフォームで。


(まさか……今日習ったばかりのものを今日の実践で使うことになるなんて……思いもしなかったぜ……!)


 旭は上空を見上げ、喉が引き千切れるほどの声で叫んだ。


「俺の上に、常に鉄骨を用意しておいてくれっ!!!」


「はぁ!?」


「いいから!」


「もしかして、自分もろとも下敷きになるつもりか!?」


「ひぇぇ~っ!?」


「そんなことはしない」


 混乱する隊員たちを余所に、仄が静かに口を開いた。


「鉄骨が落ちたら……私も行く」


「嬢ちゃんまで……! 無茶言っちゃいけねぇ、ムリするな!」


 親方が慌てて止めに入ろうとする。


「人は救助できた」


「いいじゃないですかぁ〜〜っ、もう引いてくださいよぉ〜〜っ!」


「次は――殺すだけ」


「ややこしいことしないでくださいよぉ〜〜っ!!」


「待てない」


「君――」


 粒男を救急のテントに預けてきたコアシャフトが、仄に問いかける。


「君はなぜあそこに行く?」


「……なぜ……」


「あぁ。理由があるのかい?」


(……倒すだけ。それ以外に理由なんてない)


 今までだって、それしか理由はなかった。害をなす原因を一人で素早く潰すのが一番合理的だ。

 ――あの日、あの怪鹿との戦闘までは、本気でそう思っていた。


『強い奴が一人で全部抱えて突っ走るのは、合理でも何でもない!』

『チームを作るのは、その1ミリの狂いをカバーするためなんだよ!』


 泥まみれになりながら、自分を庇って叫んでいた旭の顔が、仄の脳裏を掠める。

 あの日、旭は言っていた。「一人で何も伝えずに勝手に行って不確定要素を作るな」と。


「……一人で勝手に行くと」


 仄は静かに呟き、旭を見据えた。


「不確定要素」


「え?」


「旭が、鉄骨を用意しろと言った。だから……私はそれを使う」


 自分ひとりで突っ込むんじゃない。

 旭が命がけで作ろうとしている隙に、自分が飛び込むのだ。旭は自分で済ませようとしているかもしれない。だからあの時、旭が自分の計算の狂いをカバーしてくれたように。今度は自分が、旭の作戦に乗っかる形で「チーム」として叩き潰す。


「人は救助できた。次は――チームで、殺すだけ」


「……そうか……」


 コアシャフトは呆れたように息を吐いたあと、その顔にニッと力強い笑みを浮かべた。


(まったく……今の教習生はどうなってんだ……!)


 大人に守られるだけの子供じゃない。誰かに言われたからでもない。目の前の脅威を倒し、仲間を救うために己の意志で戦場に立ち続けている。


(芯が……どこまでも熱く燃え上がっているじゃないか……!!)


「頼もしいな。……彼の、今渦中にいる君のチームメイトの名前を教えてくれないか? ついでに、君の名前もだ」


「天城旭。私は……仄」


「覚えたぞ、旭に仄。……よし、プロとして君たちのバックアップに回ろう!」


 ◇


 バリバリバリバリ……!!


 上空の報道ヘリの中では、アナウンサーが唾を飛ばさんばかりの熱量でマイクを握りしめていた。


「無事……! 無事に、取り残されていた作業員の方は救助されました! しかし……! 今度は謎のオレンジ色のイグゼクターがアリジゴクの底に取り残されてしまいました! トラブルでしょうか、それとも自ら残ったのでしょうか!? ……おや!? 再び上空のマジックマントが巨大な鉄骨を浮かび上がらせています! 一体何をしようというのでしょうか――!?」


 ◇


 ――ガガガガッ……!! ザバァァァンッ!!!!


「ッ――!?」


 崩落した地表を蹴って走る旭の目の前で、爆発的に土砂が跳ね上がった。

 地中から突如として躍り出たのは、重機のショベルカーそのもののような、錆びついた黄色の金属甲殻――凶悪なバケットだった。


(食らったら……一発で死ぬ!!)


 本能が鳴らす最大の警戒アラート。

 だが旭は慌てなかった。教習所で行っていた重心を意識したステップ。ブレない体幹のまま瞬時に軸足を切り替え、紙一重の差で横合いへと滑り込むように回避する!


 ――ガズゥゥゥンッ!!


 直後、旭がコンマ数秒前までいた地面が、バケットの一撃で深く抉り取られて弾け飛んだ。


(……よし、かわした! だが……まだだっ!! 鉄骨はまだ降ろさせない!!)


 旭が向かっているのは、先ほど粒男が取り残されていた建設予定地。剥き出しの鉄骨と骨組みしか用意されていない、見晴らしの悪いガレキの山だ。

 目的地に近づくにつれ、地中を凄まじい勢いで掘り進む鈍い振動が、足裏を通して骨にまで伝わってくる。周囲の地面は穴だらけで、いつ落とし穴にハマってもおかしくない。


 そして骨組みが広がるエリアの直前――旭は、ピタッと足を止めた。


「!?」


 上空で鉄骨を構えるマジックマントが、旭のあまりに突然な行動に息を呑む。

 だが、地上にいる旭の顔に諦めの色など一切なかった。


「……もうそろそろ、顔を出したらどうだ」


 ザザザザッ……!!


 地中の主が、獲物が足を止めたことに気づいた。旭のすぐ目の前で、大量の瓦礫が盛り上がっていく。すぐ下に――奴がいる!


「俺は逃げも隠れもしねぇ……!!! かかってこぉぉぉーいっ!!!!」


 ――ドッパァァァンッ!!!!


 旭が喉を割らんばかりに叫んだ瞬間、前方わずか5メートルの地面が爆パーされたように弾け飛んだ。土砂と瓦礫の壁を突き破り、その地中の主が姿を現す。


 バス一台分は優に超える巨大な影。

 両腕には削岩機のような爪と、錆びついた大口のバケット。そして本来顔があるはずの頭部には獣の面影など無く、もう1つの巨大なバケットが仮面のように歪に食い込んでいた。


 暴虐の化け物が、眼前の旭を叩き潰そうと、バケットと融合した巨腕を振り上げる――。


「今だ――っ!!! 鉄骨を降ろしてくれぇぇぇっ!!!」


「マント……解除ぉぉぉッ!!!」


(頼むっ……どうか無事でいてくれっ!!)


 上空でマジックマントが祈るように叫び、巨大な鉄骨を解き放つ。

 旭の死力を尽くした挑発にまんまと乗り、地表へとその巨体を晒してしまったアナグマ型の界裂生物――『怪穴熊(かいけつゆう)』。頭上から迫る数トンの鉄骨の存在など知る由もなく、その凶手で旭を握り潰そうと飛びかかった。


 バケットと融合した腕が、旭の体を激しく押し潰す――ッ!


 ――スゥ〜……ッ


「!?」


 押し潰されたはずの旭の影が、手応えもなく幻のように霧散した。

 怪穴熊の手がむなしく地面を打ち砕いた、まさにその瞬間。上空から急降下してきた巨大な鉄骨が、無防備なその頭上へと到達していた。


 ――ガガガガッ! ガッシャァァァンッ!!


 何本もの巨大な鉄骨が、怪穴熊の上半身と頭部へ容赦なく叩きつけられた。


——グググ、グワァァァァンッ!!


 怪穴熊の悲痛な悲鳴が、荒れ果てた工事現場に響き渡る。

 激しい土煙の中、旭はむき出しになった骨組み建築の頂上に立っていた。


「へっ! どうよ!」


 旭は自慢げに鼻の下を指でこする。

 その無事な姿を遠く上空から見下ろし、マジックマントは胸を撫でおろした。


「良かった……っ。無事で……!」


「――今だ!!」


 待機していたコアシャフトの眼光が、鋭く光る。

 鉄骨の直撃を受け、頭部を抱えて大きく体勢を崩した怪穴熊。隙だらけのその巨躯は、これ以上ない絶好の標的だった。


「行くぞ、仄少女! 旭はそこに待機しておくんだ!!」


「朝比奈!? なんで……」


「仄少女は君の力になりたいそうだ」


「……!」


 旭が遠くから見守る中、既にコアシャフトが地面を蹴り、一瞬で距離を詰めていた。その足元から伸びるように、仄の手から放たれた大量の太い蔓が地表を疾走する。


「……植生凶化」


 地面を割って噴き出した禍々しい木々が、鉄骨の下敷きになった怪穴熊の巨体をさらに締め上げ、地面と鉄骨へその体を完全に縫い付けていく。


「榕樹鬼児垂根枷(がじゅまるきじすいこんか)」


 赤黒い木々がギリギリと音を立てて怪穴熊を圧迫し、強固な檻となって逃げ道を塞ぐ。


「ナイスサポートだ! 我が誇りの軸(スピン)――貫けぇぇッ!」


 コアシャフトの腕が高速回転し、凄まじい風圧とともに削岩機のような旋風を纏う。隙を突いた完璧な必殺の一撃。怪穴熊の頭部のバケットへ向かって、コアシャフトの拳が一直線に突き刺さろうとした――その時だった。


 ――ズズズズズズンッッ!!!


「――――ッ!?」


 拘束の隙間から見えた怪穴熊の後ろ足――毛に覆われた筋肉質な脚部が、不気味な排気音とともに 蠢き、太く巨大なドラム缶状へと急速に変貌を遂げた。

 直後、強烈な逆回転の力とともに、その楕円形の脚の付け根と頭部バケットの隙間から、ドバァァッ! と泥状の灰色液体が爆風とともに噴出された。


「なっ……攻撃(カウンター)か……ッ!?」


 ――泥じゃない……ッ!?


 瞬時に空気に触れて激しく硬化を始める、異様な密度の超速乾コンクリート。

 コアシャフトは咄嗟に腕の旋風で吹き飛ばそうとするが、粘着質で重厚な灰色の塊は回転を強引に巻き込み、その腕から胸元にかけて一瞬でへばりついた。


「ぐ、おぁぁぁッ!?」


 ずしりと増す猛烈な質量。固まりゆくコンクリートがコアシャフトの体の軸を狂わせ、高速回転していた腕の動きが強制停止させられる。あまりの重量と衝撃に、コアシャフトはたたらを踏んで地面へ叩きつけられた。


「くっ……体が……重い……ッ!」


 服や装甲に付着したほんのわずかな泥が、重厚な石膏のように固まり、コアシャフトの機動力を完全に奪い去る。

 そして噴出された灰色の濁流は、後方にいた仄の足元にも容赦なく押し寄せていた。


「っ……!」


(足を固められた……)


 回避しようと地面を蹴った瞬間、飛び散ったコンクリートが仄の膝から下にへばりつく。

 着地した途端、その両足は瞬時に硬化したコンクリートによって地表と一体化し、ガッチリと固められてしまった。


「あさひ……な……っ!?」


 建設中の建物から見守っていた旭の顔が凍りつく。

 鉄骨と木々によって頭部と上半身を押さえつけられた怪穴熊だったが、凶悪な尾をむちのようにしならせ、足止めされた仄へ向けて振り下ろそうとしていた。


「くっ……しまっ――!」


 旭はすぐさま建物から飛び降り、地表へと駆け出す。だが、距離がありすぎる。間に合わない。


(くそっ……動け、脚……!!)


 悔しさに歯を限界まで噛み締め、必死に脚を動かす旭。

 凶暴な尾が仄の身体を直撃する、まさにそのコンマ数秒前――。


「とうッ!」


 コンクリートで上半身の大半を固められ、動くことすら激痛を伴うはずのコアシャフトが、地を這うようにして仄の前へと立ちはだかった。


 ――バチィィィンッ!!!!


 鈍く重い衝撃音が響き渡り、コアシャフトの身体が仄の代わりに直撃を受け止める。

 固まったコンクリート甲殻がヒビ割れ、激しい衝撃が内部の肉体を苛む。


「ハァ……ハァ……言ったろう……プロとして、君たちのサポートをすると……!」


「……っ!」


 だが、怪穴熊の攻撃は止まらない。拘束が緩い下半身をくねらせて、脱出を試みている。その巨尾が二度、三度とコアシャフトに打たれる。


「くっ……!」


 身体中に激痛が走る中、コアシャフトは仄の方へと向き直り、腕の先端――右手を死力で回転させた。そしてその拳を、仄の足元へと勢いよく振り下ろす!


 ――ガガガガッ!!


 高速回転する旋風の拳が、仄の足と地面を一体化させていた分厚いコンクリートを削り削岩していく。


「これで……ヒビが入ったら……すぐに……逃げるんだ……!」


「どうしてっ……!?」


 今この瞬間も、背中に容赦なく凶悪な尾が叩きつけられ、血とコンクリート片を飛び散らせているコアシャフト。その命を削るような行動が理解できず、普段は感情を表に出さない仄が、柄にもなく叫んでいた。


「私なんか……私なんかを助けなくても……っ!」


「ハァ……ハァ……っ」


 ――ガガガガガッ!!


 コアシャフトは仄の方を向かない。決して仄に弱音や苦貌を見せまいと顔をコンクリートの方だけを向け、一心不乱に仄の足を縛るコンクリートを砕こうと拳を振るい続ける。


「困っている人を助けることに……理由なんて要るかい……ッ!!」


 ――ズキン、と胸の奥が跳ねた。


 仄の脳裏に、旭の言葉が鮮明に蘇る。親方に向かって話していた、あのまっすぐな言葉が。


『困っている人がそこにいるなら、助けに行く。……それがイグゼクターの意義ってものだろ?』


 仄の頭の中で、旭の声が何度も何度も反芻され、深く激しく反響する。

 ずっと疑問だった。なぜ旭は、出会ったばかりの人たちの輪にあっさりと溶け込めるのか。どうして頑なだった周りの大人たちを巻き込み、変えてしまえるのだろうか、と。


(……ちがう。変えてなんて……いなかった)


 旭が何か特別な力で周りを変化させたわけじゃない。

 親方も、現場のイグゼクターも、そして旭も――この場にいる全員の心の根底には、最初からたった1つの共通した誇りが息づいていたのだ。


(誰かを――助けるため)


 自分を守るために背中を削られているプロの背中を見つめながら、仄の瞳に冷徹な合理性とは違う、熱い光が宿り始める。


 ――バキッ! ガコッ!!


 ついに仄の自由を奪っていたコンクリートが、音を立てて大きく砕け散った。


「……っん!」


 足が解放された瞬間、仄は迷うことなくコアシャフトの巨体を小さな腕で抱え込み、必死の力で地を蹴って怪穴熊の死角へと躍り出た。直後、二人がコンマ数秒前までいた地面を凶悪な尾が激しく打ち砕く。


「コ、コアシャフト……っ!」


「ウッ……! ぐ……ふ……大丈夫さ……。これでも……体力には……ハァ……自信があってね……」


「ダメ! 一緒に下がる!」


「朝比奈っ!」


 ガレキを跳び越え、旭が二人の元へと滑り込んでくる。


「……ッ!?」


 目の前に集まった旭の視線が、コアシャフトの背中に焼き付く。そこは削られたコンクリートと血で赤く染まり、まともな状態ではなかった。


「なんで……こんな無茶を……っ!」


「私を……私を庇って……! 早く、安全な場所へ連れて行かなくちゃ……!」


 旭と仄が左右からコアシャフトの腕を抱え、肩に通そうとした――その時。コアシャフトは血に濡れた大きな手のひらを二人に見せ、静かに、だが力強く制止した。


「俺は……大丈夫だ。……フッ、やはりこの場所には……誰かが残って時間を稼がなきゃいけないらしい……」


「そんなこと言える怪我じゃねぇだろッ!!」


「いいから……君たちは行くんだッ!!」


 ――メキメキ……ガガガガガッ!!!


 二人のやり取りを嘲笑うかのように、怪穴熊を押し込めていた鉄骨と木々の拘束が猛烈な勢いで軋み始めた。先ほどよりも明らかに動きの幅が広がり、怒りに狂った巨躯が地表へ躍り出ようとしている――。


(コイツが完全に出てきたら……この人も、朝比奈も……! このままじゃあ……!!)


 ――ドックン!


 その瞬間、旭の胸の奥で激しい動悸のような不気味な脈動が打った。

 視界が一瞬だけ歪む。頭の奥底で、誰かの呟くような声が聞こえた気がした。


 ――旭の瞳に、禍々しい赤の色彩がうっすらと差し始める。


「仄……その人連れて下がってくれ」


「旭までっ! ダメッ!! 一人で行くのはダメッ!!」


「悪ぃ……朝比奈……」


「よすんだッ、旭!!」


 旭の身体が、すぅ〜……ッと不気味にぼやけ始める。


「行った……」


 残像を残して消えた旭は、次の瞬間――解き放たれようとしている怪穴熊の顔の横に立っていた。


「おい、クソデカ穴熊……ッ!!」


 ――ズバァァァンッ!!


 旭は足元の瓦礫を拾い上げ、全腕力で怪穴熊の頭部バケットへ叩きつけた。甲高い金属音が夕方の橙色の空に響き渡る。


「お前の相手はここにいるぞ!! 」


 ——グググッ……グオォォォォォンッ!!!!


 自分を何度も欺いたオレンジ色のイグゼクター――。

 怪穴熊の怒りのボルテージが臨界点を突破する。拘束していた鉄骨と木々を粉々にはじけ飛ばし、狂暴化した眼光のすべてが旭一人へと注がれた。

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