一章 7
それから三日くらいして。
「あ、ししょー……」
長谷川が食堂でぐったりしていた。“こっちきて座りません?”と指でとんとんテーブルを叩く。まあ座ってやってもいいかなと思い、長谷川の向かい側の椅子を引く。
「飯それすか?」
野菜スティックを指さす。
長谷川の前にはラーメン食い終わったあとらしき鉢が残っている。
「うん」
「ひえ……よく足りますね」
いや、正直あんま足りてないんだけどね。
めちゃ腹減る。でも太りたくない。そして服を買って金がない。
「なんかぐったりしてるけど」
「あぁ。まぁ。はい」
長谷川は念のためにって感じで周囲を見渡す。
「最初はね。最初はっすよ。甘えてくるの、かわいいなって思ってたんすよ」
んんと? 御園の話かな。
「でもこの数日四六時中べったりでして。ちょっと目を離したらすぐ電話かかってくるなりLINE飛んできたりで」
丁度いいタイミングで長谷川のスマホにLINEの通知が届いてた。“どこ?”って。長谷川はスマホを伏せた。
「しまいになんか“よその子といるの?”とか“わたしのこと嫌いになった?”とか飛んできてですね。なんか意味わかんない責められ方してですね。メンタルがヘラってる子の相手って、ちゃんときついんすね……」
私は首を傾げた。
「いまさら?」
「はい、軽く考えてたあっしがわるぅございました……」
「まあ。あんたがちゃんとしてれば、そのうち収まるんじゃないの」
「そう、すかねえ?」
「どっしり構えて受け止めてあげなさいな」
長谷川はあきらめたみたいににべっと笑った。
「そっすね」
諦念と覚悟は似ている。長谷川は腹を括ったように見える。
なんだ、ちょっとかっこいいじゃんと思う。もっと遊んでやればよかった。
ま、人の物を欲しがるのはよくないな。でもそれが女だよなぁ。みたいな悪いことをちょっと考える。もうちょっと喋ったあと御園から電話が掛かってきて長谷川が食堂を出て行った。
入れ替わりで五十嵐と朱里が入ってきた。




