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第8話 あたしがヒロインよ1

ヒロインは普通の子を目指していますが、どうなるのか未定です。

宜しくお願いします。

 あたしがレオ王子様や、高位貴族とのめくるめく恋愛ゲームをするヒロインに生まれたんだって気付いたのは、レオ王子と悪役令嬢のエルディスが婚約したって噂を近所の大人達から聞いた時なのよ。


 あたしが貴族の家に生まれていれば、最初からあたしがヒロインで、レオ王子の婚約者だったのに!と悔しかったわよ!


 ヒロインはヒロインでも、ゲスいヒロイン、略してゲスロインって言われていたぐらい、人間味のあったヒロインですものねー。この現実でも勝ち組になってやんよ!


 前世では、地方回りのしがない劇団員だったけど、あたしは女優だったのよ!うふふ!その演技を生かして、王子や貴族のボンボンどもをあたしの魅力でメロメロにしてやるんだから!楽しみ♪


 午前中は、近所のガキどもと遊んでいたので、昼過ぎに家に帰れば、近所の店を手伝っている母さんが昼を食べに帰って来た所だった。


「父さんは?」とあたしが聞くと、歯切れ悪く母さんが答えた。


「父さんは、知り合いの所に行っててね、帰りが遅くなるんだって言ってた。」

「ふうーん。そう。あたしは午後から教会に行って、字を教えてもらってくるねー。」


 庶民でも貴族が通うような学園に入るには、勉強を頑張らないとねー。


 今は庶民で、王都の隅の方で暮らしているだけなんだけど。


 でも、前世は、これでも勉強嫌いのお嬢様だったんだよーだ。

 勉強よりも着飾ったり、遊んだりするのが好きだったから、義務教育を終えたら、馬鹿でも入れる高校に願書に名前だけを書いて、面接したら、入学出来たんだー♪


 高校を卒業したら、パパのコネで入った会社で働いてたんだけどぉ、趣味の演劇鑑賞が高じちゃって、劇団員になっちゃったー。

 パパやママには、すんごい反対されたんだけど、押し切っちゃったんだー!


 その時にね、パパとママの反対を押し切ったせいで、仕送りが全部、無くなっちゃったんだ。

 だからねー、結構、それまでに経験したことがないぐらいの貧乏な生活するしかなくなっちゃってて、バイトを掛け持ちしたんだよー。

 あたしが苦労してるってどっかで聞いた、高校で一緒だった子からの誘いで、アプリのゲームのヒロイン役のオーディションを受けたんだよねー。

 そうしたら受かっちゃってさ、それがゲスいヒロインちゃんだったんだー。

 だから、ヒロインの決め台詞は結構、覚えてる♪

 だから、ヒロインに生まれ変われたんだって思うんだ♪神様も粋な計らいをしてくれちゃって♪


 そのかし、あたしが何で前世で死んだかは覚えてないんだよねー。


 前世で劇団員だったとか、パパやママの事とか、アプリ内の台詞とか、ヒロインがどう動いていたとかは覚えてるんだけど。


 前世がどんな便利な世界だったかを覚えてないんだー。

 勉強は嫌いだったけど、そこまで馬鹿じゃなかった気がするんだけど、覚えてないんだから仕方ないんだよねー。


 だからこそ、今世では苦手な勉強をする気にもなっていたんだって思うもんね。

 あたしの住んでる国ではさ、教会で希望者には無料で文字の読み書きを教えてくれるんだよー。

 教会には、いろんな人が来ているんだ♪


 あたしが考え事をしながら、文字の練習をしているだけでも、あたしが可愛いからか、いろんな人が頑張れとか、可愛いねとか声をかけてくれるんで、文字の練習を続けていけてるんだよ。

 だけど今日は、蛇の様にあたしを見ている人がいるのに気が付いたから、怖くなって、逃げるように家に帰ったんだ。


 家に帰っても、家の中が真っ暗だったから、誰もいないかと思ってたけどね、椅子に座ってガタガタと震えていた父さんと、その父さんを支えるように、抱きしめていた母さんがいたのよ。


 あたしが何も言わないうちに、父さんから突然、謝られたんだ。

「済まなかった!!

 お前が男爵家のお嬢様だと知っていたが、我が子を無くした母さんを不憫に思って、子供が亡くなったのを言い出せずにいたんだ。

 だから、自分達の子と同じ時期に生まれた、勤め先にいた生まれたばかりのお嬢様を攫って逃げて、母さんと一緒に育ててたんだ。」


「はぁ?!ど-ゆー事よ!!あたしを攫ってきたの?!酷いじゃん!!最低じゃん!!人さらい!!」


 バン!!と家の扉を開けた人がいた。


 扉を開けたのは大きな男の人だったけど、その人があたしの本当の父親だと名乗ったから顔をよく見てみたよ。

 うん、今まで一緒に住んでいたあたしの父さんと母さんと言って、嘘をついていた人よりも、あたしの顔によく似ていたんだから、安心出来た。


 その男の人の後ろにもガタイの大きい男の人が3人程いたんだけど、父親と名乗る人の護衛だと紹介されたんだ。

 万が一、あたしを手放さないとごねた時に備えて連れて来たんだって。

 ずっと探してくれていたんだって、嬉しくなったし、もっと早く見つけて欲しかったとも思った。


「私の子供を返してもらおうか!お前達はしてはいけない事をしたんだから、その罪を償ってもらおうか!

 お前たちが盗んでいった私の大事な娘を返してもらうからな!!

 さぁ、私の娘よ、持っていきたい物だけを持って、私と、本当の父親の私と、本当の家に帰ろう。」


「はい。すぐに用意します。」あたしは素直に返事をしたけど、それを見ていた嘘だらけの両親だった人達が泣き喚いていたのは、納得出来なかったし、理解したいとも思わなかった。


 だって、あたしって前世はセレブなお嬢様で、貧乏が好きじゃなかったし、劇団員時代は貧乏に慣れなくて、何度も泣いたこともあったので、あたしや本当の父親の同情を引こうとして、泣いて謝る偽物の両親を憎く思ったんだもの。


 嘘をついていた誘拐犯達から、さっさと離れる為にも、勉強のノートとかペンだけを持って、嘘だらけの家を、偽物の両親を置いて出て行くことに決めたんだから。


 あたしの父親だと名乗った人とその護衛だと紹介された人達も一緒に、今まで住んでいた家から必要な物だけを持って、一緒に出たのだ。


 あたしの本当の父親だと言う人は、あたしと一緒に待っていた馬車に乗ったんだー。


 そこで、近所の人達の事が気になったんだけどと、あたしが言うと、あたしが攫われていた事を知っている人はいなかったのだと教えてくれたし、その為に周りに聞き込みをして、身元がはっきりするまで時間が掛かったのだと説明してくれたのでした。


 乗っていた馬車が停まったので、父親が抱きかかえて馬車から降ろしてくれたんだー。

 目の前に見えた家が本当の家だと教えてもらえたし、今まで住んでいた家よりも大きい家だなーって思ったよー。


 今まで呼ばれていた嘘の名前を忘れるように言われたし、本当の名前も教えてもらった。


 ゲームの初期設定で付けられていたのと同じ名前で、あたしはこの日から、オレイヌ・ダットン男爵令嬢となったんだよ。


 お父様からは、教会に来ていた何人かは、あたしを守る為の警護と調査員だった事も聞いたっけ。

 だから、蛇のような目で見ていたのが、あたしを調べに来た調査員だったと分かって、後日、その人が「調べるとはいえ、嫌な感じを受けたでしょう。お詫びします。」って、謝りに来てくれたんだー。


 嘘っこの両親は、あたしを攫った事を公表しない代わりに、鉱山での重労働で、あたしの家の受けた被害を弁償する為の金銭を稼ぐのだと聞かされたのは、何か月も経った後だったっけ。


 何年も一緒に暮らしていたから、あたしがショックを受けないように配慮されていたみたいでねー。

 実際は、「ふうーん、そう。」ってな感じだったんだけど。

 だってさ、男爵令嬢になる為に、マナーとか勉強で忙しくってさ、それどころじゃなかったんだよねー。


 前世では、何でもパパやママが用意してくれていたんだけど、今は、王子様や高位貴族のご子息様に出会う為の努力をしないと、ここで脱落しちゃうからねー。やる事やっておかなくちゃならないんだよー。


 最初から、男爵令嬢だったら、こんな苦労しなくて済んだかもしれないのにさ、自分達の子供の代わりに他人様の子供を攫うっていう神経がもう分からんし、分かりたくもないんだわー。

 そんな人達が今更どうなろうと、あたしの知った事ではないんだよね。


 だから、もうあの人達に思う事も何にもないから、ってお父様にもお母様にも言ったし、今は無関心に近いかな?って正直に言っちゃったんだー。


 お父様もお母様も、オレイヌが気にしていなくて良かったって言って、ニコニコしながらあたしの頭を撫でてくれたので、とっても嬉しかった。


 お父様も、お母様も、私の上にお兄様がいるだけで、一人娘が攫われたのをずっと気にして探し出してくれたから、大好き。

 お母様も、嘘の母親の様に怒鳴らないから、大好き。


 お兄様だけは、どことなく余所余所(よそよそ)しいけど、今までいなかった妹が、急に一緒に暮らすようになったんだもんね、ビックリして、そんな態度になるのも理解出来るんだよねー。私だってさ、おお!「あたし」って言わないで、「私」って言えたー!


 私だって、お兄様には余所余所(よそよそ)しいんだから、一緒じゃんか。

 いちいち、気にしないでいる事にしたんだー。でも、ちょっと変わってるかな?前世では兄弟がいなかったから、不思議な感じがするんだわー。


 そうして本当の家族と暮らすようにもなったし、お兄様とも少しづつ仲良くなってから、一緒にお茶を飲んで話をしながら過ごすようになったわよ。


 私もね、マナーや教養も何とか貴族として振舞えるまでに身に着けた頃、貴族の子女が入学する学園に通う事になりました。


 ちょっとだけ、悪役令嬢のええと、何て言う名前だったか忘れちゃったけど、公爵令嬢は私よりもマナーや教養に王妃になる勉強をしているのだと知って、公爵令嬢が多少は気の毒に思えるようにもなったから、学園に入ってからは様子見をするつもりでいたのよね。


 学園に入学してから、思い知ったわ。私は甘かったんだと。

 

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