第32話 ヒロインは元悪役令嬢だった友の心配をしているつもりだけど
我が国、ロンデリンの王子としての業務だけは評判の良いレオ王子が外交の一環として、隣国トランドル国へ出かけているそうでーすっ。はいはーい!!オレイヌちゃんでーすっ!!皆、元気にしてたかなー?
私の親友で、元悪役令嬢のエンディの居るだろうと思う隣国のトランドル国へ出かけているのだと言うのを聞いたのは、学園で日頃からピーチクパーチクと喧しく騒いでいる貴族のご令嬢方のおしゃべりからでしたー。
はぁー。
エンディが学園からいなくなっても、元々仲が良かった何人かの下級貴族のご令嬢方とは、今も仲良くしているんだけどねー。
公爵ご令嬢でトップだったエンディがいなくなったのと、レオ王子との婚約が無効になったせいで、上級貴族のご令嬢方の間には、レオ王子の婚約者の座と学園での我こそは一番上の淑女なのだと争う、キーキーと煩いヒステリックな権力争いが勃発していまーすっ。
面倒くさいとは思うけど、レオ王子の勘違いに振り回されたあたしは、レオ王子の勘違いによって傷付いたと言う被害者面をして、その面倒な争いからは一番遠い場所で、傍観者として、エンディに不利な事があったら知らせようと、観察していまーす。
レオ王子が外交に向かったのも、どうやら陛下へは事後承諾であったそうで、元々は、陛下が元王妃様がいらっしゃる隣国へ外交がてら、復縁を頼みに行く筈だったそうでございますー。
これもその上級貴族ご令嬢達のおしゃべりと噂からでーす。たまには役に立ってもらわなくちゃねー。
ほんとーに女々しいったらありゃしないわぁー!この国の王様って。
王様には、城下にも通っている妾が何人かいて、貴族内にも側妃や妾が両手の数ほどいるのにさー、なんだかねー。
十年以上ほったらかしにしていた元王妃様に復縁を願わなくても、陛下には女は充分、足りてるんじゃないのかなー?と思うんだけど。
元王妃様と同じ女の立場として、あたしだったらと語らせてもらうとねー、陛下は自分の都合に合わせて都合が良過ぎるって思うなー。
ほんと、今更だよねー。
今までちっとも守ってもくれなかったし、庇いもしなかったし、命の危険のあった暗殺や毒殺があっても一向に助けてくれないし、夫としても支えてもくれなかったし、妻として元王妃様の元にも全然通ってなかったんでしょ。
そんな甲斐性なしの元夫がさ、自分以外に手を出している女が一杯いるのにも関わらず、自分との復縁を願ってきてもさー、今更、私の所へ何しに来たの?!キッ!!となるよね。
今頃、私の所までのこのこと現れて、一体、何しに来たの?今更、どの顔でここまで来れたのかしら?図々しいわぁー!って叩き出して追い払うだけでしょ、ねぇ。
あたしだったらあり得ないからー。
多分、レオ王子もアノ陛下と親子だから、エンディの所へ再婚約の直談判に行ったんじゃないのかなー?!と想像出来たわー。
エンディもエンディママも、シスコン気味だったエンディの弟君も、あのレオ王子を許さないだろうなーって思うし、隣国で出会ったら、袋叩きしようと手ぐすね引いてそうだって思った。
エンディの事だから、レオ王子以外の他の人と婚約しているだろうと思うんだー。あたしが知っているエンディならね。ポヤポヤのほわほわって自覚がないもんね、あの娘。
エンディって、自己評価が実際よりも低いし、男性からの押せ押せ攻撃には弱そうだしねー。
あんなに良い物件がフリーになったんだもの、隣国に着いた早々、誰かしらの目に留まって、婚約させられてるってもんよ!!あたしが男なら、エンディを嫁にしてたわよっ!!
レオ王子のストーカー並みの執着力には驚いたけど、あの失言といい、好き過ぎて何も出来ずに指をくわえていただけで何も出来なかった姿、好きな子をいじめてしまうという余計な態度のせいで、エンディ自身はレオ王子にはすさまじく嫌われていたんだと思っていたし、嫌っている人から好かれたいとも思っていなかったエンディからも、レオ王子は凄まじく嫌われてたんだよねー。
その上、エンディの代打で仕事をしていた他の女性に優しくされただけで、勘違いするんだから最低よねー。その勘違いから婚約破棄を宣言しちゃったんだから、愛想を尽かされるのは当たり前で、レオ王子の失恋自体も、ようはレオ王子の自業自得の結果なんだし。あたしには関係がないって学園では、周知の事実って事になってまーす。
だから、あたしの結婚相手を見つけようとは努力してるんだけどねー、如何せん、レオ王子のせいで遠巻きにされてるんでー、あたしの方が隣国で婚活したかったんですよーーーーっ!!
なーーーーんて自分語りをしましたが、エンディがいないと物足らないって思うあたしは、エンディの親友よね?!
そうして、今日も学園で当たり障りのない平凡な一日を過ごし、寮の自室であたしとエンディの間に起きただろう強制力の事を考えた。
あの強制力は、あたしやエンディがどうにも出来ない、人ではどうにもできない程の大きな力だと言う事。
通常なら一度でも来れば、もう来ないでいただろうが、乙女ゲームとは違う物語となっているこの世界では、再度、あの強制力が聞きに来る可能性があるのだと思わされた。匂わされた。
あたしの所へ来た後にエンディの所へ行くと言っていたし、すぐに行ったんだろうと思うけど、あれから何日も経っているのに、今まで過ごしてきた生活自体に変化が無かったからこそ、エンディも強制力にリセットを願わなかったと言う事。そう想像するだけ。
願わくば、二度と来ないでいいと思う。普通は、どんな人生もリセットなんぞありはしないのだから。ふぅ。あたしにしては、深刻に考え過ぎたわね。
また、お兄様に心配をかけたりしたら、お兄様の眉間の皺が増えてしまうし、不機嫌顔が定番になってしまうわー。妹として、お兄様の婚約者が見つかるように気をつけなくちゃいけないわ!
エンディと出会ってから、何があっても証拠を残そうと書き始めた日課になった日記を書いてから、眠ったのでした。




