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第31話 ご令嬢は妃になりました…

微妙にR15です、ね。中世の立会人を想像するか、それに近いモノとして扱ってもらえば、分かり易いかと思います。宜しくお願いします。

 私の部屋にハイドルミン王子ことハイド様を案内したものの、侍女がお茶の用意を済ませて私の部屋から出て行きました。


 侍女の出て行く後ろ姿を見た後、ハイド様を好きだって自分で自覚したからか、自分の部屋なのにカチコチに固まってしまいましたわ…。


 その姿を見て、ハイド様が噴き出した様な声と音が聞こえました。


ぷはっ!「くくっ!」と。


 笑われるのは悔しいわ!


 でも!そのハイド様を盗み見ると、私の方へ甘い笑顔を向けているのを見たら怒れないじゃないのっ!!そんな顔で私を見ないでっ!恥ずかしいわっ!ど、どうしたらいいのっ?!


 片思いの経験は前世でも何度かあったけれど、両想いの経験が全くないのよっ!どう動くのが正解なのっ?!


「それにしてもこの部屋はエンディスの好みなのかな?可愛い部屋だね。

 隣国の公爵家令嬢だった頃のエンディスの部屋には訪れたことは無かったけれど、同じだった?


 あぁ、婚約者の部屋に招待されるのは、男としては格別だね。自然と笑顔になってしまうよ。」


 あ、あの、ずっと見つめられていると、これ以上、私の顔の赤みが引かないんですけどっ!!笑顔が甘いっ!溶けそうっ!瞳に熱を感じますっ!!


「あ、の、隣国では、お母様の好みで部屋は調えられていたので、私の好みではありませんでしたわ。

 この国へ来てから、自分の好みで部屋を作りました、の。」


「かわいいなぁ。


 今ここで、エンディスをとって食べたりしたいけれど、今はまだ我慢するから。」と。


 固まったままの私がこれ以上真っ赤になれないほど羞恥を感じていると、クスクスと嬉しそうなハイド様の声が聞こえました。


「隣国でも次期王妃と相応しいとの声も高かったし、淑女としても大層評判も良かったエンディスを手放したレオ王子は、馬鹿だったんだね。


 こんな、何気ない私の一言で赤くなったり、コロコロと表情を変えてくれるエンディスを知らなかっただろうに。私だけしか知らないって言うのは嬉しいな。

 淑女の仮面を付けたエンディスも可憐だけど、今はただただ可愛いだけだね。


 私は婚約者だから、エンディスを()()()()と呼ぶ権利があるのも、家族以外には私だけっていうのはいいな。

 エンディは、私の事を今まで通りにハイド呼びでいいからね。


 エンディ、こっちを向いてごらん。ほら。」


 可愛いと褒められて、照れたままの私がハイド様の方へ向くと、怖いくらいに熱っぽい視線で見つめられていました。


 恥ずかしさで、はくはくと声にならない私の口を手で塞いだハイド様に、私は固まって、動きを止めました。


 視界がハイド様の瞳の色で一杯になったと思ったら、次に、唇が柔らかい何かとくっ付いているのだと感じたのです。

 マウス・トゥ・マウスの、口同士をくっ付けるというキスをされているのだと自覚しました…。


 す、すみませんっ!初キスなんですけどっ!と思った瞬間、羞恥と照れと何かで、目の前が真っ暗になりました。





 ………なんやかんやで一杯一杯になった私は、キスの最中に羞恥と照れと何かで気を失ったようです…。


 気付くと、ハイド様に膝枕をされていて、身体はソファに横になっている状態でした…。


 目覚めた途端に、膝枕と失神(しっしん)のコンボに気付いて、またまた真っ赤になった私を見て、ハイド様が嬉しそうにキスをしてきます!!


 また失神(しっしん)したらどうするんですかっ!淑女の仮面で、今にも本音を叫びそうな自分を律しますっ!!


「エンディが横になっていたのは10分くらいかな?私からのキスに慣れてくれないと困る。

 外交で挨拶のキスにでも反応されたら、次期王妃としてはマズいし、ねぇ。


 それに、エンディが照れたり、動揺するとか、カワイイ反応をした相手を私が裏で殺しかねないので、慣れて欲しんだ。外交に支障をきたしてしまうからね。」


 物騒な内容をガンガンと盛り込んできていますが、それを嬉しく感じるデレデレな私と、冷静に受け止め呆れる私とが同居しています。それでも、キスに慣れる事には「正しい」と両方の私が答えているのですわ。


 ハイド様とキスをしている合間に答えます。「は、い。」と。


 私の答えに満足し、目を細めたハイド様の瞳の中が熱量を増した気がしました。

 そこからは、会話もなく、ただひたすらにキスをするだけとなりました…。





「もう暗くなったか。」とハイド様が呟いたことで、浮かされた頭が、はっと正気に返りました。


 キスに夢中になっていたので気付きませんでしたが、昼に帰宅して明るかった部屋の中が、すっかり闇色になっているのに気付いて、え?もう?暗いの?!と思ったのです。


「夕食を客間で済ませるか、エンディスの部屋で済ませるかを前もって聞かれたのでね、エンディスの部屋でと私は答えておいたんだ。エンディの部屋で夕食から全てをこなしてもいい?


 元々の予定でもね、今夜、私はこの侯爵家で泊って、明日の朝一で少しだけ王城に戻り、またここへすぐに戻ってくるつもりなんだよ。」


 夢見心地でポヤポヤなまま、「はい。ハイド様に任せますわ。」と答えた私の未来は、ここで決まったようです。ニッコリと微笑んだハイド様の目が鋭く輝いた気がしたのもこの時でした。


 ハイド様は王城へ戻ってもいいのに、何故わざわざこの侯爵家へ泊るのか、私の了解がどういう結果と意味をもたらすのか、その意味も私の生まれた隣国とこの国の違いを未だに理解しておらずにいた私は、殊更、幸せそうな表情をするハイド様に気を取られてました。


 はい、ポヤポヤした浮かれた頭の中で「両想いって幸せ(ハート)」と思っていて、その重大さに全く何も気付いていませんでした…。後悔って後からするから、後悔って言うんですよ、ね…。


 ハイド様を好きと自覚し、婚約したのは後悔していませんし、婚姻するのも楽しみでしたが、婚約期間の恋人のようなやり取りを夢見ていた私からすれば、婚約の翌日に婚姻したのがあんまりだったのだと後悔しただけですからっ!!


 決して、ハイド様と一緒になるのを否定した訳ではありませんのよ!そこの所を勘違いしないでねっ!!


 夜会で私の事を陛下自らが王子達に逃がさないようにと言っていた意味も、色々な事を含んでいたのだとハイド様から後日説明されなければ、私はそれも理解していなかったようです…。


 ハイド様が何故、お爺様とお婆様と会話をしてた時から終始、ご機嫌だったのかを一番最初に理解していなければいけなかったのに、私は何も理解していませんでした…。


 ただ婚約して、両想いだったからだとしか思わなかったのですからっ!!






 その日の夜、大人の階段を一足飛びに昇らせられました…。朝まで寝れなかった、です…。



 私が目覚めて起きたのは昼でした。


 寝起きの私の手を握っていたハイド様がキラキラとキラメキ度を増していたのは解せぬ!と思いましたわ…。


 ええ。狼の前に羊を差し出したらどうなるか、誰にでも分かりますよね。オレンには絶対に恥ずかしくて言えないわ。前世でも今世でも色々と()なんですもの!




 既成事実を示す、その証拠のシーツと正式な立会人の署名でもって、婚約した翌日でも婚姻可能だそうですわ。


 ええ、婚約していれば何でもありだとか。


 婚姻に必要な各種書類をハイド様が朝一で王城へ取りに行ってから、すぐに侯爵家へ戻って来たのだそうです。


 私が目覚めたらすぐに署名を出来るようにと、ハイド様はドキドキしながら、楽しみに私の側で待っていたのだとか聞かされて、イヤだとは言えませんでしたわ。


 ハイド様が次々に刺していく書類の所へ何も考えずに署名をしました。商会の時から、ハイド様を信用していましたから。


 そうしてその日のうちに、書類もサクサクと処理されたようで、私は正式な王太子妃となりました…。


 ハイド様は、私という正妃を得たので、正式に王太子と確約されました。


 第二王子や第三王子は、万が一の予備、ただのスペアとなって、王位継承権も、ハイド様が王太子に決定した時点で無くなったそうです。



 それと、ハイド様と私の正式な婚姻の立会人となったのは、お爺様とお婆様とこの侯爵家の者1人、近衛騎士2人と王家から1人だったそうです。


 …私は婚姻には正式な両家からの立会人が必要な事を事前に知らなくて良かった…で、す。夜通し、私とハイド様のあれこれを観察をされるという事実を知らなくて済んだのですから………。


 観察されていたのは、忘れる事にしましょう。ええ、記憶の彼方へ!!!!!!


 その日もハイド様と翌朝まで一緒でしたわ……。

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