第30話 ご令嬢が本音を語ると事態が動く
間が空きましたが、宜しくお願いします。
ストーカー王太子を避けるべく、王子様方が私が失言王子と出会わないように手配してもらい、早々に侯爵家へ帰宅したのです。
強制力の事を考えても、自分でどうにか出来ない事を悩んでも仕方がないと、開き直る線で行こうと帰り道に頭の中で決めたのですわ!どうにも出来ないんですもの!仕方ないわ!開き直りましたの!
そうして侯爵家へ馬車が帰宅早々、私は出迎えてくれた執事長へ、この家の当主夫婦(お爺様とお婆様)へ急いで告げる事があるのだと告げました。
執事長と言葉を2、3だけ交わした従僕の一人が早歩きで飛び出していったので、私の事を告げに行ったのでしょう。
出来る執事は、「はい。すぐにお会いになれます。」と答え、私の前に出てエスコートをしてくれましたわ。
執事長がお爺様とお婆様のご予定を把握していらっしゃるから、私への返答が早かったのね。と感心しつつ、ゆっくりと歩きながら、「お2人方がいる場所までご案内いたします」と言ってきましたの。
私の後ろには、ハイドルミン王子様から婚約契約書を書いた直後に紹介された近衛騎士2人が、王城から付いてきていたのでした。
それを何も無かったかのように見て出迎えた執事長は凄いなーと思いつつ、その執事長と違い、私達とすれ違うたび、一瞬だけ訝しげに見やる家人には、私は曖昧な笑顔で誤魔化し、お婆様とお爺様、ええと、違うわね、お義父様とお義母様のいる部屋まで案内されていますの。
「お嬢様のお母上様よりは、随分と冷静に行動なさるので、助かっております。」
「まぁ!お母様ったら、私よりも活発でいらしたの?!」
「ええ。思いついたらすぐ行動のお方でしたが、お子様をお育てされたので、落ち着かれたご様子で安心いたしました。」
えぇ!!あのすぐ行動していたお母様が、あれでも落ち着いたと?!
「昔は、今よりももっと計画性もなく、ご自身の感情だけで動かれておりましたので、屋敷の者皆が大層、心配しておりました……。」
どんだけですか?!お母様!!私の事など言えないんじゃなくて?!
執事長の最後の言葉の間の取り方に、深~い深~い黒歴史があるんじゃなくて?!背筋がぞくっとしました。
うん、これは、ゾクッ!!……聞かない方がいい気がしましたわ!
ち、違う事を考えなくちゃ!
ええと、と私が悩んでいると、執事長が「王子の中のお一人と正式にご婚約なされたのですね。おめでとうございます。」と言ってきたので、どうしてわかったのかしら?と聞いてみたわ。
「近衛騎士がお嬢様の護衛として共にいらっしゃるからです。」
そうよね、でなくちゃ、近衛騎士が一介の貴族令嬢に付いて来る訳はないもの。
「お義父様にその件でお話しするので、あなたにも一緒に聞いて欲しいわ。そうすれば、私の事情も把握出来るでしょう?」
そうして辿り着いた部屋でお義父様とお義母様、執事長に近衛騎士2人に、王城の茶会で私にあった事を全て話しましたわ。
私の事情を聞き足りなさそうにしていた近衛騎士のお2人には、執事長から詳しく話しておくとお義父様に言われ、私の居る部屋から、執事長と近衛騎士様達が出て行きました。
「近衛がいると話しにくいだろう。だからね、理由をつけて部屋から出てもらったのだ。
私達の間に産まれたエンディスの母親に似ているからこそ、エンディスの本当の気持ちを聞きたいんだが、いいかね?」
「そうね。あの娘は無鉄砲だったから、若いうちは、私の胃が痛むばかりだったわ。エンディスが普通の常識のある娘で良かったと思っているの。」
お爺様、お婆様、ぶっちゃけ過ぎですわ!娘としてのコメントをして、それがお母様にバレたりしたら、後が怖いので、明言を避けさせていただきますわ!
私は年下は好みではないのです。どっちかって言うと、そうねぇ。
「…商会の手伝いをしてくれているアンソニー様の弟のハイド様が、私の好みですわ。年下だと、弟のように感じて、恋愛感情を抱けませんわ。」
「ハイド殿が好みだと、ふむ。彼の苦労が報われたのかな?」
「うふふっ。良かったわ。今ここにね、ハイド殿がいらしてるのよ。」
「お婆様?」どこに?
外套をまとい、長い髪の毛で前髪も長く、両目がちらりと見えるだけのいつものハイド様の姿が、大きな天窓のあるカーテンの間から出てきました。
「こんにちわ。今の話は本当?」照れ臭そうに聞いてくるハイド様の姿に私の方が照れますわ!
ちょっ!それにしても今のを聞かれてたの?!告白まがいの言葉を?!ええっ!!
真っ赤になった顔を両手で頬を隠すので手いっぱいになった私。
それを嬉しそうに見て笑うハイド様が眩し過ぎます!
ハイド様がニコニコと纏っていた外套を脱ぎ、外套の下から豪華な衣装が見えたと思ったら、髪の毛をはずしました。その長い髪、カツラでしたの?!
そうして現れた姿は、王城で婚約を交わした姿のままのハイドルミン王子でした。
私の目は節穴かっ!気付けなかった私を置いて、お爺様とお婆様とハイドルミン王子の間で話がされていきます。
「宣言通りですな。」「我が家へ押しかけて来た当時のままですわね。」「約束通りでしょう。」とかなんとか。
私が落ち着くまで、3人共、雑談をしてお茶を飲んでいましたが、私が少し落ち着いたのが分かったのでしょうか、お義父様に聞かれました。
「では、婚約を続けるので良いのかな?そうしてそのまま、エンディスはこの国の王妃になっても後悔しないんだね?」
「ええ。レオ王子の隣だと絶対に嫌だと思いましたし、苦労するのも絶対にご遠慮したいと思っていましたし、私、実際に、国外へ逃げてしまったのですもの。レオ王子のあの顔、もう二度と見たくなかったんですの。
でも、ハイドルミン殿下の隣に入れるのでしたら、私は何になろうとも構いませんわ…。」
答える私の声が若干、震えて、語尾が小さい声になっていても、お義父様とお義母様は「おめでとう」と2人共、言ってくれました。
ハイドルミン王子改めハイド様は、「名前でバレるのではないかと冷や冷やしたんだけどね、似た名前の人もいるからか、案外バレなかったね。エンディス、もう私からは逃げられないよ。」と言うと、嬉しそうに、それでも私の事を束縛すると宣言したので、安心したのでしょう。ご機嫌でいましたわ。
たはっ、両思いだとは思いませんでしたわ。照れます…。両想いってどうしたらいいんでしょうか?前世でも経験がないので、分かりません。
お爺様とお婆様の許可のもと、私の部屋へハイド様を案内しました。




