第28話 ご令嬢も色々と想定外の事に遭遇しました
オレンが何日か前にそんな大変な目に遭ったのも知らずにいた私は、オレンから来た急ぎの手紙を読まずにいたのです。
どうしてオレンが急ぎで手紙を出してくれたのかも考えず、オレンからの手紙が今朝、私の元へ届いたのに喜んでいただけですの。
いつもの私なら、手紙を読むのを優先したのでしょうけれど、生憎、今日は私以外の王子達の婚約者候補のご令嬢達が集まって、王城での王子との交流する茶会が開かれるので、そのせいで王城へ向かわなくてはいけない日だったのです。
この間のような、私だけが王子達と交流するだけの茶会と違い、他のご令嬢達の手前、新参者の私が、その茶会に遅れる訳にはいきませんでしたので。
だからこそ、オレンからの手紙を読む余裕がなく、すぐに屋敷を出て王城へ向かいました。
オレンからの手紙は、帰ってから大事に読もうと楽しみにして、自分の机の引き出しへ放り込んで出かけたのですから。
ご令嬢達の茶会へ参加するのは、日本のような喫茶店で飲む様に、のほほんと過ごしていられませんけれど。
生まれた国のロンデリン国の公爵令嬢の立場を捨てて、隣国であるトランドル国のべ・ネラン侯爵家のご令嬢になりましたし、第1王子から第3王子までの婚約者候補に私が望まなくても、この国の王に王子達の婚約候補と言う、その立場に強引にねじ込まれたとはいえ、候補は候補です。気が抜けません。
同じ立場の王子達の婚約者候補である他家のご令嬢達のいる、足の引っ張り合いと言う名の茶会への強制参加が決まっているのですわ。参加したくないと言えたらいいんですけどね、凄く迷惑だと大きな声で言えないのはツラいのですよ。はぁ。
王城で、王子達と候補のご令嬢達での交流をしている時に、隣国の第1王子、私の元(仮)婚約者だったレオ王子が、この茶会に飛び入り参加するのだと告げられました。
内心、「ええっ!マズいっ!やばい!」と思ったけれど、公爵令嬢と元王太子の仮婚約者だったので、大きな猫を被るのが標準装備となっていたので、私が焦ったのとビックリした事は誰にも気付かれませんでした…。
何でわざわざ隣の国まで来るかな?それも、この国の王子の婚約者候補がうじゃうじゃといる時に!
私としては、出来るだけ会いたくない相手だし、いや、出来たら、もう二度と会いたくない相手だわ!変な手紙を何通も寄越す変態よっ!会いたくなかったわ!これが本音ね!
そんな本音を溢さないようにしていた私へ、ご令嬢達からずっと感じていた視線のような、私の粗を見つけて、王子達の婚約者候補から引きずり落そうとするような妬み嫉みの視線とは違う、興味本位で観察するような視線が刺さりました。
不躾な視線の主を自然に探そうとして、お茶を飲みながらその視線を自然に探ると、不躾な視線を送って来ていた相手を見つけました。
ええ、第1王子のハイドルミン殿下でしたね。
ご令嬢が誑かされるような王子様らしい爽やかな笑顔を浮かべてはいますが、目だけは、私へ向けて、観察するような興味津々だと言う視線を向けて、それを隠そうともしていません。
あぁ、多分あれだわ、私が王妃になった時に、苦手な相手とどうやり合うのかを知りたいのと、私が妃に相応しいのかとか、レオ王子と私が円満に婚約無効になったかどうかの噂や情報を確認する意味合いもあって、私を観察するんでしょうね。
私と視線があったら、ハイドルミン殿下が一瞬だけ楽しそうにニヤリと私へ笑ったもの。そう、それが理由なのね…。
なーんて事を考えているうちに、外交用の外面のイイ笑顔の仮面をつけたレオ王子が、茶会を開いている庭園にやって来ましたわ。
レオ王子もレオ王子で、トレンドルを始めとして、外交特使として各国を回る予定ね。ふーん。
私と婚約無効にした影響で、国内では婚約しにくくなったって所かしら?だから、他国で婚約者を自力で見つけてくるか、お見合い相手が自分と合うか合わないかを様子見する為に、外交するんだろうなー。
あら?何人かのご令嬢は器用な事をしているわ。私へは怖ーい顔をするのに、王子方を見る時は微笑みをたたえているわね。高位貴族のご令嬢ね、きっと。下位貴族のご令嬢なら、そこまで器用じゃないもの。
王妃教育は無駄にはなりませんわよ。王妃教育で得た威圧をかけて、っと、高位貴族のご令嬢達に微笑み返しましょうか。優雅に、にっこりとしましょうか。
誰にケンカを売ってるんでしょうか?って、ご令嬢達へ向かって、にっこりとすれば、下位貴族のご令嬢達は不思議そうにするだけで済んだけれど。
まぁ!青くなってる方と白くなってる方がいるけど、高位貴族のご令嬢達に聞かれたら、皆様には私が笑いかけただけだと知らない振りをしておきましょうね。
さて、レオ王子がこちらに来ましたわ。こちらも外交用の笑顔で対応しましょう。
「おや?珍しい方がいらっしゃいますね。お元気でしたか?」
「はい。お久しぶりでございます。殿下もお元気でいらっしゃいましたでしょうか?」
笑いかけたくもない相手に笑うのは、骨が折れるわ!笑顔が引きつりそう!
「ああ。国を出たとは聞いていたが、隣国にいるとは思わなかった。」
その物言い、白々しいにも程があるわ!ストーカーちっくな手紙を何度も寄越しているくせに!嘘つき!
「円満に婚約を無くしたので、私の方はこれから、殿下を気に留める暇も余裕もないのですわ。素敵な相手を見つけませんと女性はあっと言う間に婚期が過ぎてしまいますので、忙しいんですの。」
ピクッとレオ王子の顔が少しだけ引きつった。
私の渾身の嫌味を理解したのでしょう。
お前なんかに私の時間を割く暇も余裕も一切ないから!他に結婚相手を見つける気、満々だから!再婚約もしないから!って伝わったみたい。
「レオ王子が手放してくださったおかげで、彼女のような素敵な情勢が我が国へ来てくれました。感謝しますよ。」
おぉ!ハイドルミン殿下もやるぅー!
レオ王子が私のような(私が素敵な相手を見つけたいと言ったから、それに合わせて)素敵な女性を手放してくれて、ありがとう。って、嫌味を込めてくれました。少しだけ、スカッとしたわ。
そこからは、第3王子のレンドルミン殿下がとりなしてくれて、表面上は和やかな茶会でいたの。
私は付き添いで来たご夫人方に囲まれたテーブルで、情報収集しつつ、お茶をしてましたわ。この茶会が終わったら、王子達と私だけの茶会が行われるので、もちろん、レオ王子抜きでね!私は安全なご夫人方の居るテーブルにいるのですのよ。
王子殿下方とレオ王子は、ご令嬢方の居る各テーブルをバラバラにばらけて回っていました。こうすれば、私へ嫉妬するご令嬢が増えないでしょうと言う王子様方からの配慮ですけれど。
レオ王子は、そんな配慮なんてしてくれた試しもありませんでしたけれど。
お茶のおかわりを頼もうとして、周りを見た私は、固まりました。誰も動いていないんですもの!まるで時間が止まったようで、ビックリしたのです!
えっえっ!様子見しても誰も動きません!どうしよう!?




