第三十二章 登録と依頼
旨味に蕩けた舌を、渋いお茶で整える。
満足に膨れた腹を擦りながら2人は手を合わせた。
『ご馳走様でした』
「はい、お粗末さまでした」
そこは御神楽亭の中、三十人程度が座れる広さの食事処。
朝食はビュッフェ形式であり、焼き魚や納豆と和食に富んだレパートリーだ。
それ以外に並ぶ品々も日本の一般チェーン店よりも遥かに美味であった。
「うーん、これで他の安宿より少し高い程度なんだよね。ここに慣れると他の宿に泊まれなくなっちゃいそう」
「部屋も清潔で整っているし、風呂もあるもんな。風呂はそこそこ大きな宿にしかないって聞いていたんだけど、料金を少し割り増しただけで十分な広さの風呂に入れるのは助かるな」
「気に入ってもらえて何よりです。一応、首都や主要な交易都市には姉妹店がありますので、是非ご利用頂ければ幸いです。それに、各店舗の料理長はここと同じようにプロの腕を持っていますので、安心してご当地料理を食べられますよ」
「うわー、そんな事言われたら泊まらないわけにはいかないじゃないですかー。というよりも他の町に行くのが怖くなりましたよ」
頭を抱える鴉弥。
それもそうだ、この宿は日本の文化水準に染まった2人をもってしても十分に満足できた。
先日宿泊した個人用簡易宿所は清潔ではあったが、くつろぐには狭く、ただ寝るためだけの場所でしかなかった。
「ふふふ、そういった違いを楽しむのも旅の醍醐味の一つです。ちょっとしたトラブルはスパイスですよ」
「それは今までの経験からで?」
悠兎の問いに微笑んで頷く。
「ええ、色んな旅をしてきました。鞠さんとの旅も時間がある時にお話ししましょうか?」
「それは是非、あの仔がどんな生き方をしてきたのか、家族として気になりますから」
「わかりました。それでは、本日の夕食の時にでも話すとしましょう。今日はまだ始まったばかり、昨日のアルフィードさん達と組合本部で合流する予定でしたね。今の時間帯ですとホテル街通りは人で混んでいますね。あと30分程で宿前のバス停に組合直通バスが到着しますから、それに乗ればスムーズに向かえますよ」
地元民ではないが、この町に長く住んでいるエルの情報は新参の2人にとって大きい。
「いや本当、俺達に対して何から何までありがとうございます」
「いえ、後進を導くのは先達の務めですから。冒険者として貴方達が何を成すのか楽しみにしてますよ」
「ご期待に沿えるようにボク達も頑張ります。それじゃ悠兎、準備しようか」
出発の準備を整えに自室へ向かう2人を、エルは微笑みで見送った。
●
乗り込んだバスは、日本の公共バスを一回り大きくした以外にそう変わりは無かった。
ただ、他種族が乗り込めるよう、柱が撤去されていたりとバリアフリー化されているようだ。
乗り込んでみれば、既に席の半分程が埋まっていた。
「夜も人通りは多かったけれど、朝になるともっと賑やかだね」
組合へ向かう道中、観光も兼ねて外を眺める。
まだ開店には早い時間であるが、人通りの多さは昨夜より目に見えて増えていた。
「誰かしら何らかの武器を携帯しているようだし、殆んどが冒険者みたいだな」
槍や長銃など一目で分かる者もいるが、一番は立ち振る舞いだ。
非力そうな者であっても、その足捌きに隙が少ない。
そんな彼らの大半はある方向へ向けて移動していた。
「皆、依頼とやらを受けに移動しているのかな?」
「だろうな。こうして見ると、歩いて行くのは大変そうだな」
その考えは組合本部に近づくほどに強くなる。
バス停に停車するたびに続々と人が乗り込む。
組合前に着いた頃には、バスの中は芋洗い状態であった。
「ふぅ、やっと降りれたね」
「しっかし、凄い人だかりだな」
数分掛けてバスを降りれば、目の前に広がるのは人の波だ。
約束の時間にはまだ余裕はあるが、この中で目的の相手を探すというのは骨が折れそうだ。
どうしたものかと考えていると、鴉弥のPDAから音が鳴る。
「あ! パールちゃんからメールが来たよ。先に着いたから組合前広場のオブジェの下で待ってるって」
「オブジェ? ああ、アレか?」
見渡せばそれらしきものは直ぐに見つかった。
何を表したいのかよく分からない物体に近づけば、見知った顔が並んでいた。
「おはよー! いやぁ、凄い人だかりだね。ここまで来るのに一苦労だったよー」
普段から元気に溢れる彼女でもこの人だかりには辟易としているようだ。
「今日の目的は依頼じゃなくて2人の登録兼観光だからな。登録受付のフロアは混んでいない筈だ」
「でしたら早く移動しませんか? 流石に目が回りそうです」
「前の町も人が多かったけど、ここは桁違いだ……」
レイラとアルフィードの地方組みはその人の多さに目を丸くする。
そんな様子をどこか懐かしそうにシューヴァラは眺めていた。
「これは一時的なものだ、依頼が捌ければ落ち着くさ。ただ、祭りの時はこの光景が町中で見られるようになるぞ?」
「確かに、以前“武闘祭”の観戦に来たときは凄い人だかりでした」
冒険者として長いシューヴァラや貴族であるカルシェにとっては人混みは慣れたもののようだ。
「登録にも時間は掛かるし、観光もあるからな。さっさと済ませてしまおう。――こっちだ」
シューヴァラの誘導で一行は組合本部の中へと向かって行った。
●
「中の雰囲気は前の町と変わらないね」
「広さや受付の数は段違いだけどな」
構造自体は以前の説明にあったように変わりない。
ただ、その広さは倍以上はある。
「さ、新規登録受付はこっちだよー」
人混みから抜けたことでパールも本来の調子に戻ってきたようだ。
案内された受付には一人の女性職員が待機していた。
角や獣耳など目立った特長は無かった。
「ようこそ、冒険者組合本部へ。こちらは冒険者への新規登録受付です。初めてのご登録でしょうか?」
「はい、俺と彼女の登録をお願いしたいんですが」
「お願いします」
「わかりました。では登録前の前に注意事項です。冒険者登録を行う場合は登録した町……つまりはこの町に依頼遂行を除き、一ヶ月の拘束期間が発生しますがよろしいでしょうか」
頷くと、受付嬢は二枚の紙を取り出す。
「かしこまりました。今回は初回という事で登録料が5000円となります。お支払いはこの場で一括か、登録後の依頼の報酬料金からの天引きになりますがどちらにいたしますか?」
「あ、一括でお願いします」
「ボクもそれでお願いします」
2人は財布から5000という数字と、どこかの風景が描かれたお札を一枚取り出す。
受付嬢はそれを受け取ると、書類を出した。
「でしたら、まずこちらの書式に記入をお願いします。代筆を申請する場合は一枚200円を頂く事になります」
「あ、自分で書けるんで大丈夫です」
受付嬢の提案を断りながら記入する。
記入欄は名前や生年月日と簡単に書けるものしかない。
とはいえ、年齢や故郷の住所などは事情を知るエルに事前に相談して決めていた。
「共通言語や文字が日本語で良かったな」
「そうだね。新しく覚える手間が省けて助かるけれど、通貨単位まで日本のものって少し違和感だよね」
受付嬢に聞こえないよう小声で話す。
見慣れたものが、ファンタジーの世界に溶け込んでいる光景は、ゲームならともかく実体験として強い違和感を覚える。
そんな事を話しているうちに記入は終ってしまった。
「……記入自体に問題はありません。この後は、2階で簡単な試験と健康診断を行いますがお時間はよろしいでしょうか」
「え? 試験?」
初耳であった。
「はい、読み書きと四則演算の確認です。試験と言っても15分程度の簡易なものです。理由としては、こちらの掲示する依頼内容を把握できるかの確認です。もしも、規定の点数以下の場合は組合が開催している講習会に強制参加してもらう事となります」
「えっとー、その場合の講習ってお金とか掛かります?」
悠兎の問いに受付嬢はにっこりと笑い。
「講習料金1万円。キッチリ一括払いか、報酬料金からの天引きのどちらかを選べます」
無情な答えに2人は絶句する。
「おいおい、そう怯えるな。試験と言っても学園の初等部の子供でも解けるぐらい簡単なものだ。一昨日の宴会でメニュー表を読んだり、割り勘の計算ができる時点で問題は無い」
2人のリアクションを見かねたのかシューヴァラからフォローが入る。
「そ、そうなんだ。なら安心かな? だとしたら、健康診断は何で?」
フォローに何とか持ち直した鴉弥は、受付嬢に疑問を投げ掛ける。
「はい、通常の健康診断は地区や町村ごとに、対象の住人に行われています。ですが、冒険者の場合は住所が定まらず、地区や町村での対応が難しくなります。ですので、組合の方で定期の診断を行っているのです。今回はカルテ作りも兼ねていますので新規登録者は診断を義務付けられています。費用については組合が徴収している税金で賄っていますのでご安心下さい」
「なるほどな。そうなると試験と健康診断でどれぐらい掛かる予定なんです?」
「大体一時間程度です。この時間帯は空いていますので、もう少し短くなるかもしれません」
時間については聞いていた通りだ。
だが、そうなるとアルフィード達を待たせる事になるが。
「それじゃあ、僕達は終るまでそこのカフェで時間を潰してるよ」
「組合のカフェって結構品揃え良いんだよー。特に一番人気のロールケーキは一度食べてみたかったんだよねー」
「前の町ではこの町の観光のためにお金を貯めてましたからね。今日は我慢しません」
「ユウトさん達なら、試験も大丈夫です!」
甘味を求め、燃え上がる女性陣に引き連れるリーダーは苦笑する。
「という訳だから、僕達のことは気にしないで登録してきなよ。次ぎに会う時は同じ冒険者だ」
「分かったよ。それじゃ、また後でな」
試験の場所を聞き、会場へ向かう2人の背を冒険者達は見送る。
2人の姿が階上に消えるのを確認し、次の行動を起こす。
「さーて、僕達も行こうか」
「行こう行こう! スイーツがわたし達を待っている!」
「紅茶の種類も豊富と聞いていますし楽しみです」
「ぼく、こういった場所は初めてです!」
胸躍らせている若者達に、水を差すようで悪いが声を掛ける。
「悪いが、俺は所用が出来たから少し離れる。あの2人の登録が終った頃には戻る」
「えー、スーさんタイミング悪ーい」
「スマンな。代わりにこれを使ってくれ。以前貰ったが使う暇が無かったからな」
渡すのは彼らが向かおうとしているカフェの割引券。
コーヒーと甘味のカフェよりも、酒とツマミの酒場が好みなのだ。
酒場の割引券は即座に使ってしまうが、こういったお洒落なものは手に余っていた。
「しょうがないなー。次は一緒だよ?」
「ああ、悪いな」
パールを宥め、アルフィードも一行から離れる。
彼が向かった先は、一基の昇降機だった。
●
昇降機に乗り込むが、階床ボタンは押さない。
目的の階に向かうボタンは無いからだ。
内部に自身以外の人影が無い事を確認し、懐からPDAを取り出す。
少々肉厚で、大画面を謳うそれはBランクに昇格した際に組合から支給された物。
ユウトたちが持つネクストフォンより数段劣るが、十分上質な部類に入る。
「確か……ここか」
階床ボタンの下部、そこには組合の紋章が刻まれていた。
中心の円に重なるように描かれた6つの輪。
輪は簡素な陣であったり、歯車に近い形と一つ一つ形状が違う。
理由は昔聞いた事があるが、今は想起よりも優先するべき事がある。
PDAを紋章に翳すと、軽い読み取り音と共に昇降機が静かに動き出す。
「さて、何が待っているか」
昇降機の中で一人ごちる。
過去の経験上、部下を使わない直接の対話の時は厄介事が待っていた。
今回のカルシェ少年の案件もその一つのようだ。
そんな事を考えていると、到着音と共に扉が開く。
「全く……相も変わらず無用心にも程があるぞ」
まず目に入るのは一面の青空。
昇降機から一歩踏み出せば、そこはカーペット。
見渡せば資料の詰まった本棚や応接用の机とソファなどが目に入る。
視線を前に向ければ、シンプルであるが上品なプレジデントデスクがその存在を主張していた。
「無駄に凝った受付を作るより、限りある空間を有効活用した方が益だと思うけどね」
そういって出迎えたのは一人の……精霊だ。
顔立ちや体付きは男にも女にも見える。
声を聞いても判断は難しい。
一見すれば中性的な人間にも見えるが、腰までボサボサに伸びた緑色の髪はその異形を表していた。
髪の一本一本が枝として緑色の葉を無数に生やし、ところどころに紛れ込むように色とりどりの花を咲かせていた。
噂によると、時折実を付けるらしいが、事実は定かではない。
現在は壁一面のガラス窓から差し込む陽光で光合成の真っ最中だ。
何らかの神樹の化身と聞くが、その正体を知るものは居ない。
「やあ、いらっしゃい。折角の観光中に悪かったね」
「悪いと思っているなら呼ばないで貰えると助かるんだが。組合総長殿?」
「そうしたいのは山々だったんだけどねぇ、事が事だし早めに耳に入れた方が良いと思ってね」
外見は成人したばかりに見えるが、実際には数百年以上昔の組合の黎明期から存在している最古の精霊だ。
一見すると気の良い相手だが、気が付けば不利な要求を呑まされてしまうので気が抜けない。
「で、一介のBランク風情に総長殿が出張る程で?」
「いやー本当は本部長が対応でも良かったんだけどね。彼には今、別件で動いてもらっているから。それに、暇潰しついでに調べてみたら顔見知りで丁度良かったしね」
思わず苦い顔をするが、総長に咎める様子は無い。
それどころが、楽しんでいる様子もある。
「このまま昔話に花を咲かせるのも悪くないけど、待ち人も居る事だしね。さっさと本題に入るとして、今回の呼び出しの件はね、まぁ保険だよ。あの少年は優先順位が低いとは言え身の危険はまだ残っている。そこを、かの“飛穿”が護衛してくれるなら大助かりだなーって話」
言われずともカルシェ少年は状況が落ち着くまで保護するつもりであった。
それをこうして呼び出してまで伝えるという事は
「……あの子の叔父は面倒なのと繋がっているのか?」
「そうだよ。でなければあの放蕩息子が当主を弑逆した挙句、まがりなりにも統治するなんて出来るわけがないでしょ」
「そりゃそうか」
カルシェ少年の領地の噂は、中央まで届いていた。
耳にするのは重税に次ぐ貧困で住人の不満が溜まっている事。
既に商人の間で留まっているが、冒険者に広がるのは既に時間の問題だ。
少年の叔父からすれば、噂が広まる前に完全な体制を築きたいのだろう。
「あの少年を狙っている叔父の一派は、基本ゴロツキ程度の人材しかいない。けれど、裏のキナ臭い所に接触したって情報が上がってね。2人、仕事を受けたのが居るみたいだ。だからその刺客の排除と護衛の依頼を頼みたいんだ」
「護衛か。だが、今は新人とパーティを組んでいるだぞ。俺だけでは守りながらで2人も手が回らん。あと1人は応援が要るぞ」
自身の戦闘スタイルは1対1の技術に特化しており、複数相手では不安が残る。
少年だけならばともかく、今は将来が楽しみな新人達が居るのだ。
刺客に少年が襲われれば、彼らは身を挺して戦うだろう。
相手の力量次第だが、片方を処理する間にやられてしまうかもしれない。
裏家業で稼ぐような技量の持ち主であれば、その可能性は高い。
悪意ある人間との戦闘経験は必要とは考えているが、今は流石に早過ぎる。
「それはそうだ。だから、サポートとして安全な場所と人材を紹介させてもらおう。まずは拠点として“御神楽亭”という宿をお勧めする」
「“御神楽亭”? 聞いた事は無いが」
「小さいが落ち着いた和装の宿だよ。だけど、この町では組合本部の次に安全な場所でもある」
「ほぅ。人類の絶対安全地帯の一つである組合本部の次にね……」
顔色を見る限り嘘ではなさそうだ。
普通ならば、ホラ吹きとしか思えない。
が、その組織の最高責任者が提言したのだ、完全とはいかないが信用はできる。
「人材に関しても、とびっきりのが1人志願してくれたから安心してね」
「それはどんな相手だ?」
相手が相手だ、命のやり取りが想定されるのだ。
見ず知らずの人間に背中を預けるのは御免である。
しかし、
「ごめんね。“契約”で話せないんだ。名前や種族だけじゃなくて何もかもね」
総長の言葉に思わずため息が出る。
自身と仲間の命に関わる案件で、最低限の情報すら隠す助っ人など信用以前の問題だ。
冒険者としてなら、“ふざけるな”と一喝すべき場面だ。
「……信用はできるのか?」
気楽に話してはいるが、冒険者組合という組織のトップというのは大国の王様と同等以上の地位を持つ。
そんな相手と“契約”を結べる存在というのは、知にしろ力にしろ並ではないだろう。
「ああ、腕も人格も保障する。そして伝言だ。“1人はこっちで貰う。もう1人は好きに任せる”、だとさ」
「随分と強気な発言だな。大言壮語でない事を祈っておく」
「それは仕事働きで証明してくれるさ。あと、刺客の情報は把握済んでいる。情報はPDAに転送しておこう。それと――」
PDAから電子音が鳴る。
確認は話の途中であるので後回しだ。
「今回の件、つまり当主争奪の原因だが……“絵札師”の関わりが確認された」
苦々しく総長が告げた名に顔を顰めてしまう。
「……よりにもよって奴等か。連中は貴族の権力闘争に興味は無かったんじゃないのか?」
奴等が狙うのは、有形無形、使用用途に問わない全てだ。
それも、現在でも再現不可能な武器や道具、封印指定を受けるような術式や技術を重点的に狙う。
過去幾つかの国で神器や聖剣といった逸品が強奪され、禁術が記された魔導書も盗まれた。
各国で生死問わずの指名手配をされるその集団は、好き好んで関わりたい相手ではない。
「彼らのスタンスに変わりは無い。今回は放蕩息子を傀儡に権力を利用しようとしていたようだ。ただ、領璽の紛失に正統継承者の子息の取り逃がし、その他多くのやらかしに手を引いたようだけどね」
「なら気にする事は……ああそうか、“巨星”のナイフか」
脳裏に過ぎるのは、前の町で展示されていた一振りのナイフ。
「そう、数十年ぶりに現れた“新作”を彼らがマークしていない訳がない。この近辺に潜んでいる可能性は十分に考えられる。少年の所在を知れば、権力目当てに利用しようとする可能性は少ないながらもある。落ち着くまでは町から出ないほうがいいだろう」
公式発表では、少年は失踪中とされている。
町への移動も組合のサポートを利用しているため、所在を知る者は同行者の自分達と組合の上層部のみだ。
「依頼の期限としては一ヶ月。それ位で少年の処遇や政治的なアレコレの処理は済む。その期間の護衛をお願いしたい。依頼の詳しい事はPDAに転送したから確認して欲しい」
PDAを見れば、依頼が表示されていた。
内容は、総長の話と相違は無かった。
画面をスクロールし、一通り目を通して決める。
「……わかった。この依頼を受ける。ただ、幾つか聞きたい事がある」
「何だい?」
予想はついているのだろう、見れば微笑を浮かべている。
「まず、この部分だが、これはどういう事だ?」
「ああ、それはね――」
依頼の細部を詰め、シューヴァラが仲間の元へ戻る頃には新人2人の登録は終っていた。




