表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR

童話とか児童書ジャンル

空からこぼれた、星のお話 (童話版)

掲載日:2026/08/27

 きらきらと、お空に星々がまたたく夜のことでした。


 キラリ。

 ひとすじの星が長い光の尾を引いて、天から(すべ)り落ちました。


 地上の森の奥深く、大きな音を鳴り響き、

 眠っていた森の動物たちは、びっくり。


 朝、動物たちが音のした場所を見に行くと、そこには輝く泉が生まれていました。


「しくしくしくしく」

 泉の底から、泣き声が聞こえてきます。


「あなたはだぁれ? どうしたの?」

 口々に(たず)ねる小鳥やうさぎ、野ネズミたちに、泉の中から声が聞こえてきました。


「僕はお空の星だよ。間違って落っこちちゃって、お空に帰れない。(さび)しくて、泣いてるんだ」


 なんと泉は、空の星が落ちた穴に、涙がたまって出来たものだったのです。


 動物たちは、この可哀(かわい)そうな星に同情しました。

 そしていつも、泉のほとりに遊びに来ては、底に沈む星を(なぐさ)めました。


 昼には動物、夜には星空。

 にぎやかな彼らを水面(みなも)に写し、星は日々を過ごしていました。


 ある日のことです。

 村人が、星の泉を見つけました。


 とても澄んだキレイな水。

 底には光る小さな星。


 皆、泉を欲しがりました。


 泉の周りで争いが起こり、人々の流した血が、泉の中に流れ込みました。


 透明だった泉の水は真っ赤に染まり、それを見た誰かが叫びました。


「これは"絶望の泉"だ!」


 泉には、木で作った大きな(ふた)(かぶ)せられ、

 人も動物も寄り付かない、さびれた場所になりました。


 小さな星は、また(ひと)りぼっちになったのです。


 しくしくしくしく。

 泣き声は誰に届くこともなく、泉の水は少しずつ、(ふた)の木を(ひた)していきました。


 どれほどの時間が()ったでしょう。

 ある日、()ちて来た木の(ふた)隙間(すきま)から、水を(まと)った星がするりと出てきました。


 ◇


 きらきらとしずくを光らせながら、星はするすると森の中を進みます。


 寂しくて、寂しくて、たまらなくなった星は、強い(おも)いから魔法の力を身に着け、泉から出ると、(誰かと会ってお話したいな)

 わくわくと胸躍(むねおどら)らせました。


 けれど動物に会うことなく、ついには森を出てしまいました。

 森を出た先には、広い、田舎(いなか)の道が続いています。


 しばらく行くと、誰かが道に倒れていました。

 (おどろ)いた星が近づくと、それは人間の男の子のようです。


 すっかり()せた男の子は、苦しそうに(うめ)いていました。

 その腕の中には大事そうに、小さなパンが抱きしめられています。


(お腹が空いて倒れたのかな。どうしてこのパンを食べなかったんだろう。あ、もしかして水が足りないの?)


 幸い星の身体には、泉の水がしずくになってついていたので、少し考えた後、星は男の子の口の中に、もそもそ入っていきました。


 星は男の子の体の中で魔法を使い、どんどん水を送っていきます。

 そうしてしばらくすると、男の子はパチリと目を覚ましました。


 不思議そうにキョロキョロとあたりを見回します。

 自分を助けてくれた"誰か"を探しているのかも知れません。


 "僕はここだよ"


 星は男の子の身体の中から、話しかけました。


「えっ?」


 男の子は目を丸くして、自分のお腹に目を向けます。

 星は言いました。


 "僕は星。僕に出来ることはある? きみを助けたいんだ"


「!?!?」

 男の子はとてもびっくりしましたが、自分が親切な星に助けられたと知ると、どうしてこうなったのか、星に話しました。


 家で幼い妹が待っていること。

 兄妹には身寄りもお金もなく、どうにか手に入れたパンを持ち帰るところだったこと。

 何日も食べてなかったため、気を失ってしまったこと。

 パンで今日を生き()びても、この先どうやって暮らしていくか、途方に暮れていること。


 "それはとっても大変だね……。そうだ! 森の泉の近くに、不思議な木の実が()っているんだ。動物たちは、その木の実を食べれば病気が怪我が治るって言ってたよ。木の実を売って、暮らしていくのはどう?"


 男の子は星の提案に(うなず)き、家に帰ると待ちわびていた妹にパンを与えながら、森に木の実を()りに行きました。


 こうして兄妹と星が、仲良く過ごしていたある日。


 ふたりが住む小屋に、お城から突然、怖い兵士たちがやってきました。

「お前たち! ご領主さまの庭園から、"薬の木の実"を盗んだだろう?」


 ◇


 何度「違う」と(うった)えても聞き入れてもらえず、兵に(つか)まった兄妹は、お城の牢に閉じ込められてしまいました。


「うえっ、うえん、お兄ちゃぁん……」

 か細い声で、妹が泣き続けています。

「あたしたち、どうなるのかなぁ」

 小さな妹をぎゅっと抱きながら、男の子も不安でいっぱいでした。


 ご領主さまの庭園なんて、まったく知りません。

 兄妹が売っていたのは、星から教えて貰った泉のほとりに成る木の実。

 それがご領主さまの"薬の木の実"と同じものだったのでしょうか?


 誰も来ないお城の牢の中で、男の子はほとほと困り果てていました。

 このままではどんな重い罰を受けるのか、想像するのも恐ろしく、ふたりは(ふる)えます。


 そのうちに妹は熱を出し始めました。

 不安と疲れが、一度に出たのでしょう。


 男の子が妹だけでも助けなくては、と心を決めた時、お腹の中から声がしました。


 "僕がお城の中を探ってくるよ!"


 星です。

 星はずっと、男の子の中にいたのでした。

 そうして身体から出た星は、夜にお城の中をめぐり、ご領主さまの娘が重い(やま)いで困っていること。

 もう長く(わずら)っているのに、"薬の木の実"が足らなくて、なかなか治らないことを調べてきました。


 星が言いました。

 "森の泉の木の実なら、僕の影響で魔法の力も宿(やど)ってる。きっとお姫さまを治せるよ。だからこう言ってみて"


 お役人が牢に来た時、男の子は声を張り上げました。


「"薬の木の実"がたくさん生えているところを知っています! "魔法の木の実"です。ぼくがお姫さまの病気を治してみせます!」


 ◇


 そうして。

 男の子の案内で、森の泉に辿(たど)り着いた人たちは、皆で木の実を()みました。


 たわわに実る木の実は、まるでお空の星のようにキレイでまぁるく、神秘的な力が宿っているようにみえました。庭園の木の実とよく似ていましたが、それよりももっとずっと素敵な実でした。


 木の実を(せん)じて、薬にして、ちょっぴり苦いその薬をお姫さまが飲むと……?


 どうでしょう。

 お姫さまはみるみるうちに、元気になったのです。


 ご領主さまは大層(たいそう)喜び、お姫さまも笑顔でお礼を言いました。


 ご領主さまの庭園の木の実が減っていた理由もわかりました。

 お城の使用人がこっそり盗んでいたのです。

 使用人は罰せられ、ご領主さまは兄妹を間違って捕まえてしまったことを()びました。


 牢から解放された兄妹は、ご領主さまからたくさんのお礼をもらい、お城の保護(ほご)のもと、薬屋を始めました。


 固く閉ざされていた泉の(ふた)も、ようやく(はず)されました。

 銀色の水面(みなも)はまばゆく光り、まるで聖水のよう。


 泉には再び、たくさんの動物たちが集まるようになりました。


 それから何度も季節が()ぎて、かつての"絶望の泉"が“希望の泉”と呼ばれ始めた頃。


 男の子は立派な青年に成長しました。

 多くの命を救った功績で(くらい)(さず)かり、ご領主さまのお姫さまを、お嫁さんに迎えました。


 男の子の妹は、国一番の薬師(くすし)としてお城に勤めていますが、素敵な恋人ともうすぐ結婚するようです。


 では地上のお星さまは?

 森の泉に戻ったのでしょうか?

 それともお空に(かえ)れたのでしょうか?


 いいえ。

 お星さまは、男の子とお姫さま。ふたりの赤ちゃんになって生まれてきました。


 (ひと)りぼっちだったお星さま。

 いまは家族に囲まれて、幸せにスヤスヤと眠っています。


 新しい生命(いのち)の誕生を、(そら)も地上も皆で祝って喜んだのでした。




 ―おしまい―




 お読みいただき有難うございました!

 このお話は、今月アルファポリス様の「第1回児童書大賞」に参加している「短編賞」https://www.alphapolis.co.jp/novel/790065991/31073779に収録するため、2022年に詩ジャンルで投稿した『空からこぼれた、星のお話』を童話に仕立て直しました。

 久しぶりに過去作を振り返ったのですが、とても懐かしく、楽しく作業にホクホク(∩´∀`*)∩


 男の子の貰った「(くらい)」って何だろうと思うのですが、お姫様が嫁ぐくらいなので、そこそこの身分を貰ったに違いない(笑)

 男の子、一言もしゃべってない上に、兄妹は名前も出ていませんが…!

 それを言ったら登場人物、誰も名前出ていませんが…!!


 お話を楽しんでいただけましたら幸いです♪ヾ(*´∀`*)ノ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
良かったらコチラもよろしくお願いします!
普段は異世界恋愛が多いです!

・▼・▼・▼・▼・▼・
【総合ポイント順】
・▲・▲・▲・▲・▲・

・▼・▼・▼・▼・▼・
【新しい作品順】
・▲・▲・▲・▲・▲・

・▼・▼・▼・▼・▼・
【異世界恋愛+α】
・▲・▲・▲・▲・▲・

【最近書いたお話】
童話ジャンル『黒猫もらいます』
エッセイ『パセリって「悪魔のハーブ」なの?』
― 新着の感想 ―
拝読させていただきました。 辛いことがたくさんあったのに、自分のことだけじゃなく、他の人のことを思った星に男の子。 何と優しく強いのでしょう。
命名・落花星(≧▽≦) 問答無用で捕まえた上に、病気になった妹ちゃんを見ても牢に繋ぎっぱなしにしてた兵士たちはダメぴょん。 というか、妹ちゃん、薬の実を食べていなかったのか。 星くん、かぐや姫の様…
よかったよかった( ˘ω˘ )
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ