第七話 ルシルダ様と探検
お城での生活を始めて二日目の朝。
私はパッチリと目を覚ました。
うーんと伸びをしながら昨日のことを考える。
昨日の夕食会はとても楽しかったわ。
こんな生活が続くなら、異世界転移も悪くない。
今日はどんな素敵な一日になるのだろう?
期待感に胸を躍らせていたら、キサーヌが部屋に入ってきた。着替えを手伝ってもらいながら、今日の予定を確認する。
「朝食と夕食を陛下たちと食べていただきます。予定はそのくらいですね」
「ふーん。お昼は?」
「お昼は自由です」
へー。思ったよりゆるいのね。
もっと座学の勉強とかするのかと思っていたわ。
勉強はしなくていいのか聞くと、キサーヌはニコニコと笑った。
「モラリナ王国の歴史などは、結婚してから学んでいただきます。今は自由に過ごしていただき、この国を好きになってもらうことが最優先事項だと、陛下がおっしゃっていました」
王様! 本当に優しい!
そうよね! 結婚する前から勉学に励んでたら、外で遊ぶ暇がないもの。
今は自由にさせて、この国に慣れてほしいのね!
つまり、一ヶ月間は遊びまくれるってことね!
お城を探検したり、街に遊びに行ったり、城で働いている人たちと話したり、色々なことをして楽しく過ごすぞー!
私は嬉しくて、やったー! とバンザイをした。
すると、キサーヌが「それに……」と話を続けた。
「ルリ様はきっと、こちらの世界の文字を難なく読めると思うんです。歴代の異世界転移してきた方たちもそうでしたから。文字さえ読めればあまり不自由は感じないと思いますので」
「え!? そうなの!?」
試しに本棚に行き一冊の本を取ってくる。
ページを開くと見たことのない文字がつらつらと書かれていた。
だけど、なんて書いてあるのか理解できる。
「わっ! 本当だ! 文字が読める!」
「ふふ……。そうなんです。不思議ですよね」
本当に不思議だわ。
でも、とてもありがたい。
これならモラリナ王国の歴史の本も読めるし、大好きな物語の本も読める!
「うれしー。私、この国の本を読み尽くすわっ」
「それは素敵ですね。お城の中には図書室もあるので、あとで行ってみてはどうですか?」
「きゃー! 行く行く!」
本も読めるし、みんな優しいし、ご飯も美味しい!
本当にこの国は素敵だわ。
そんなことを考えながら、私は王様たちと朝食を食べるため、部屋を出たのだった。
※※※※
朝食も美味しかったし、王様たちは優しかった。
私はお腹いっぱいで幸せな気持ちになりながら、部屋に戻ってきた。
さあ、少し休んだらお城の探検に出かけよう。
まずは図書室を探すのが目標よ。それでたくさんの本を読むの! などと意気込んでいたら、部屋のドアがコンコンとノックされた。
キサーヌが来たのかしら? と思ってドアを開けたら、予想外の人物が立っていた。
「ご機嫌いかがですか? ルリ様」
「!」
金髪のサラサラの髪に美しいお顔。
ルシルダ様だ。
ルシルダ様がなんでここに!?
私は動揺してしまい、一瞬ドアを閉めそうになってしまった。
だが、そんなことをしたら失礼にあたるので、バクバク心臓を鳴らしながら、下手くそな笑顔で「こ、こんにちは」と挨拶をした。
「ルシルダ様……。なにかご用ですか?」
「ふふ……。ルリ様とお話ししたくて来てしまいました」
「お、お話し!?」
「部屋に入れていただけると嬉しいです」
「あっ。ごめんなさい。どうぞ」
慌てて部屋に入れると、椅子に座ってもらった。
ティーセットが常備されているので、紅茶を淹れてルシルダ様の前に置いた。
「ありがとう」
「い、いいえ。お口に合うか分かりませんが……」
ルシルダ様はティーカップに口を付けると、ニコニコ微笑んだ。
「美味しいですよ。ありがとう」
や……優しいーーー!!
いつも美味しい紅茶を飲んでいるくせに、素人の私が淹れた紅茶でも美味しいと言ってくれた!
なんて良い人なの!
私はルシルダ様への好感度が爆上がりした。
とりあえず私も椅子に座り、自分で淹れた紅茶を飲んでいたら、ルシルダ様がニコニコと話しかけてきた。
「ルリ様とあまり話す機会がなかったから、二人でお話ししたかったのです」
「そ、そうなんですか!」
「ルリ様の今日のご予定は?」
「えーっと、今日はお城の中を探検しようと思います」
私の子供っぽい予定を聞いて、ルシルダ様はクスクス笑った。
「探検……。素敵ですね」
「えへへ。私、図書室を探したいんです。本が大好きなので」
「ほう、そうなんですか。図書室は入り組んだ場所にありますよ?」
「そうなんですか? でも私、きっと見つけてみせます!」
「あはは! その意気込み、良いですね」
ルシルダ様は楽しそうに笑ってくれた。
さすがは民に慕われている太陽の王子だわ。
明るくて、とっても話しやすい。
私はだんだん緊張がほぐれてきて、いつの間にか自然に笑えるようになっていた。
しばらく他愛のない話をしていたら、ルシルダ様が「そうだ!」と提案をしてくれた。
「良かったら、私も探検にお供させてください。図書室までご案内しますよ?」
「本当ですか!?」
一人で探検するのも楽しいけど、ルシルダ様がいたら、他の場所についても色々教えてくれそう。
「是非ご一緒したいです!」
「ふふ……。じゃあ、紅茶を飲み終わったら行きましょう」
「はいっ」
私はご機嫌で紅茶を飲み干した。
すると、ルシルダ様が冗談っぽく笑う。
「これから探検に行くので、お弁当でも持っていきましょうか?」
「お弁当って……。子供のピクニックじゃあるまいし……」
「私はピクニック気分ですよ」
ふふ……。ルシルダ様って楽しい方ね。
私はルシルダ様が面白くて、クスクスと笑ったのだった。




