第四話 いざ、お城へ
それからトントン拍子に話は進み、王子たちと対面してから二日後に、私は豪華な馬車に揺られながらお城に向かっていた。
私が召喚された場所は神殿で、お城のある場所からそれほど離れていないらしい。
だから馬車に乗っていたのは、短い時間だ。
その間外を見ていたのだけど、行き交う人々も建物も全く日本とは違い、ここは異世界なんだなぁと改めて実感した。
「あー。先行き不安だわ! これからどうしよう!」
私の大きな独り言に、同乗していた神殿長はニコニコ笑った。
「大丈夫ですよ。なんとかなります!」
もう! お気楽なんだから。
神殿長と何日か過ごして、だいぶ打ち解けた。
今ではこの世界で気楽に会話できる唯一の友人のような気がする。
お城に行ったら、神殿長は神殿に帰ってしまうのよねぇ。私、向こうでお友達できるかしら?
また不安になってきたところで、馬車が止まった。
外に出ると、これまた御伽話に出てくるような大きなお城が視界いっぱいに広がっていた。
「わあ! 凄い! 大きいー」
「こんなお城に住めるんですよ? なにも不安を感じることなどありません」
確かにそうね。
きっとご飯も美味しいだろうし、ベッドもフカフカのはず。
私はお城での生活を思い、少しだけテンションが上がってきた。
神殿長に手を引かれながら、王の待つ謁見の間に向かった。
その玉座に、壮年の男性がどっしりと鎮座していた。
あの人がモラリナ王国の王様ね。
隣にはこの前お話しした二人の王子もいる。
神殿長は王様に挨拶をすると、早速私を紹介した。
「陛下。この可憐な女性が、先日異世界から呼び寄せた方です。お名前をルリ様と申します」
王様は立ち上がり、両手を広げて破顔した。
「おお! よくぞ来られた! ルリ殿と言うのか! 可愛らしい子だな!」
私はガチガチに緊張しながらペコリと頭を下げた。
「へ、陛下! お目にかかれて光栄です!」
「そう硬くなるな。ルリ殿とは今後身内になるのだ。私のことはお義父さんでもおじさんでもなんでも好きなように呼んでおくれ」
「めっ……滅相もございません!」
大慌てな私に対し、神殿長もルシルダ様もクスクス笑っている。王様を護衛する兵士たちすら苦笑いを浮かべている。
ローランス様だけは相変わらず仮面を付けていて、どんな表情をしているのか分からなかった。
流石にお義父さんなんて呼べないわよ。
でも、なんだかみんな良い人そう……。
私は王様がジョークを言ってくれたことにより、だいぶ緊張がほぐれた。
ホッと胸を撫で下ろしていると、王様が話を続けた。
「結婚については神殿長に聞いておる。一ヶ月の間にどちらかの息子を選ぶらしいな。その間、城でゆっくりなさってくれ。部屋も用意してある」
「ありがとうございます」
それから簡単な会話をして、私は王様が用意してくれた部屋に向かった。
部屋は白の家具で統一されていて美しかった。
リラックスできるよう、テーブルにはティーセットとお菓子が用意されている。
想像通り、大きくて柔らかそうなベッドだ。
私は早速ベッドにぽすんと座り込む。
お尻がどこまでも沈む感じがして嬉しくなる。
「きゃー! フカフカ!」
「良かったですねぇ、ルリ様」
一緒についてきてくれた神殿長もニコニコだ。
それから神殿長とお菓子を食べたり紅茶を飲みながら、他愛もない話をする。
しばらくすると、神殿長が頃合いを見て椅子から立ち上がった。
「では、私はそろそろ神殿に戻ります」
「えー。もう帰っちゃうのぉ?」
「またすぐ会えますよ」
「……」
寂しいわ……。
でも、会いたくなったら私の方から会いにいけばいいし、大丈夫よね?
「分かった。さようなら、神殿長。優しくしてくれてありがとう」
神殿長は私の言葉に目を潤ませた。
「いえいえ。ルリ様にそんなことを言われると、嬉しくて泣きそうになってしまいます」
「やだー。泣かないで?」
「ふふ……。異世界召喚したのが、ルリ様で良かった。ルリ様は、心のお優しい方です。ルリ様がこの国の王女になったら、きっと優しさのあふれた素晴らしい国になるでしょう」
「そうかな? そうだといいな」
神殿長は涙を拭ったあと、ニコリと微笑んでくれた。
「では、またお会いしましょう」
「うん!」
そんな会話をして、神殿長と別れたのだった。
※※※※
一人になってしばらくボーッとしていたら、部屋をノックする音が聞こえた。
ドアを開けると、私と同じくらいの歳の女の子が立っていた。
「ルリ様。これからルリ様の身の回りのお世話をするキサーヌと申します。よろしくお願いします」
わあ! 専属のメイドさんまでいるのね!
至れり尽くせりとは、まさにこのことだわ!
「キサーヌさん。よろしくお願いします」
「そんな……! キサーヌとお呼びください!」
キサーヌさんが恐縮したので、その方がいいのかと思い直す。
「分かったわ。よろしく、キサーヌ」
「はい!」
笑顔が素敵な子で、見ているだけで気持ちがほっこりしてくる。
歳が近い子で良かった。
この子となら、仲良くやっていけそう。
私はこれからの生活が、少しだけ楽しみになってきたのだった。




