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第27話 近衛騎士は会議室にも立つ

翌日の調達会議は、最初から空気が悪かった。


 セルヴァン卿に加え、王都から補給係官二名、地元の商会代表三名。長机の上には見積書が積まれ、私の前には月光色の搬入札がある。


「警護の者は外で待機を」


 セルヴァン卿が当然のように言った。


 だがユリウスは動かなかった。


「王家保養の準備である以上、物資の封印と受領は警護対象です。会議室も例外ではありません」


 低い声だったが、それだけで場が静まった。


 私はその間に、見積書と納入札の差額を並べた。白リネン、香油、浴場塩。どれも同じ筆跡、同じ丸め方、同じ端数切り上げ。偶然にしては出来すぎている。


「離宮へ必要なのは、見栄えではなく運用です」


 私が言うと、補給係官の一人が鼻で笑った。


「女性の療養には香りも必要でしょう」


「では、その香りで王妹殿下が頭痛を起こした場合、誰が責任を持つのですか」


 返答はなかった。


 ユリウスが封印箱を机へ置く。


「今後、王家保養関連の物資は受領時に総監と警護責任者の双方が立ち会う。異論があるなら、私の名でも記録へ残す」


 それは脅しではなく、事実の宣言だった。会議の流れが変わるのが分かる。


 終了後、廊下へ出たところで私は小さく息を吐いた。


「助かりました」


「あなたが会議室で戦っているのに、外で立っているだけでは落ち着かない」


 そう言われると、胸の奥が妙に熱くなる。


「……あなたが隣にいると、会議室まで歩きやすいですね」


 ユリウスは少しだけ驚いた顔をして、それから静かに笑った。


「なら、今後もそこにいます」


 その返事が、何より頼もしかった。


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