第25話 薔薇苗と薬草苗の値段
次に洗うべきは、温室の増設費だった。
王妹殿下の保養には観賞用の薔薇も必要だ。けれど私が欲しいのは見た目だけの花ではない。療養用の薬草、香りの弱い品種、手入れに無理のない苗。それを同じ予算で回さなければならない。
苗の見本を並べたのは、温室脇の石畳だ。ヴォルフェルト商会は王都で流行りの白薔薇を誇らしげに並べたが、根鉢が弱い。反対に、地元の園芸家が持ち込んだ苗は派手さこそないが、葉が厚く病気に強かった。
「王家のお客様には、もっと見栄えのする薔薇を」
商会の男が言う。
「私は、保養の終わりまで咲いている薔薇を選びます」
私は苗を持ち上げ、根を見せた。乾いた土、切られた細根。輸送で疲れた苗だ。温室へ入れても長くはもたない。
最終的に選んだのは、白薔薇二種と薬草苗六種の混合納入だった。観賞と実用を分けず、同じ温室で支える形にする。
荷下ろしのあと、ユリウスが土のついた手で木箱を持ち上げた。
「近衛騎士隊長殿に苗運びまで頼むのは贅沢では」
「総監殿が倒れるほうが高くつきます」
真顔で言われると、妙に照れる。
「あなた、最近そういう計算ばかり上手くなりましたね」
「誰の隣にいると思っているのです」
返事に困って、私は苗箱へ視線を落とした。白薔薇の若芽が、やわらかく光っている。
見た目だけの温室はもう作らない。役に立ち、長く咲くものだけを残す。それは離宮にも、きっと人にも同じことだった。




