第22話 白いリネンの入札会
最初に洗ったのは、客間用リネンの見積書だった。
白布は清潔に見える。だからこそ、ごまかしも紛れ込みやすい。数量、幅、糸の密度、洗い替えの日数。必要数を積み上げると、セルヴァン卿の見積額は三倍近かった。
「中庭で量ります」
私がそう告げると、マルグリットは少しだけ楽しそうに目を細めた。
離宮の中庭へ洗濯台を並べ、納入候補の商人たちを集める。王都のヴォルフェルト商会は艶のある布を積んできたが、巻きを解くと端の織りが甘い。長さも帳簿より短い。
「見た目は立派です」
商人が笑う。
「客は端まで数えません」
「私は数えます」
私は秤へ布を乗せ、長さを測り、洗い水の吸い方まで見た。すると地元の織元が持ってきた質素な布のほうが、耐久も吸水も上だった。
「王家用なのに地味すぎませんか」
ヴォルフェルトの男が言う。
「療養に必要なのは光沢ではなく、毎日きちんと洗えることです」
沈黙のあと、周囲の職人たちが少しずつ頷いた。
私はその場で公開入札へ切り替え、単価と納期を全員の前で書き出した。最終的に採用したのは、地元の織元三軒による分納案だった。費用は見積書の半額以下。洗い替えも十分回せる。
作業が終わるころ、ユリウスが布巻きを一つ肩へ担いだ。
「会計官というより戦術家ですね」
「白布は油断すると負けます」
「なら、私は荷運びで援軍を出します」
そう言って当然のように荷を運ぶ姿が可笑しくて、私は思わず笑ってしまった。
離宮の夏支度は、派手な飾りより先に、白い布の正直さから始まった。




