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第13話 本物が欲しがった成果

その夜、ロザリンドは離宮の主寝室へ入り、私には東棟の客室へ移るよう命じた。


 私は従った。部屋などどうでもいい。問題は、彼女が離宮の成果まで自分のものにするつもりだということだ。


 案の定、翌朝の朝食でロザリンドは言った。


「明日の王都向け報告書には、わたくしが温室再建を主導したと書きなさい」


「書けません。事実ではないので」


「事実なんて、見せ方次第でしょう?」


 私はナイフとフォークを置いた。


「私には、その見せ方で飢えた人の夕食は作れませんでした」


 ロザリンドが唇を歪める。


「あなた、ユリウスまで味方につけたのでしょう」


 思わぬ名が出て、私は目を瞬いた。


「仕事上の協力です」


「ふうん。無口な騎士様が、よくあなたには付き合うのね」


 言外の含みが不快だった。けれど怒る代わりに、私ははっきり答える。


「彼は離宮を守っているだけです。誰かと違って」


 食卓が静まり返る。


 食後、私は旧会計庫へ向かった。途中の回廊で、ユリウスが待っていた。


「主寝室へ移されたと聞きました」


「ええ。本物は、成果の置き場所まで欲しいらしいので」


 彼は少しだけ眉を寄せた。


「証拠は別の場所へ移します」


「そんなことまで」


「今夜、庫の鍵が壊される可能性があります」


 冷静すぎる予測だった。そして、たぶん当たる。


 私たちは日が暮れる前に原票箱を三つへ分け、温室裏の物置、礼拝堂の床下、そして警護詰所へ隠した。


「用意がいいですね」


「戦場では一つの保管場所を信じません」


 彼らしい答えに、私は苦く笑う。


「私はずっと、数字だけあれば勝てると思っていました」


「現場も要ります」


「ええ。あなたのおかげで、よく分かりました」


 彼は何も言わなかった。けれど、夕暮れの回廊で並んで立つ沈黙は、もう気まずくなかった。


 本物が欲しがるのは、名前と成果だけだ。


 なら私は、その中身を守り抜く。


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