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23.歪なままの証を編んで

雨に濡れた翌日、目の奥が熱く足元もふわふわとした感覚に襲われた私は38.6℃の数字を目にして納得した。

あれだけ長い間濡れた服を着て、あまつさえ薄着になんてなったもんだからそりゃ風邪もひく。


出社前の母親に熱が出たことを伝えて学校に連絡を入れてもらい、借りた服のことについて尋ねると「返しておくから寝てなさい」と言われた。


みんなに顔も合わせづらいし、学校に行けなくなったのは不幸中の幸いかな。


ずる休みでもしようかと考えていた手前、休むこと自体に抵抗はなく、むしろラッキーだったかなと思う程だった。


冷蔵庫からペットボトルの水を出し、部屋に持ち込んだ。

机の上に光る宝石が目に入る。


オパールは変わらずにその遊色効果で綺麗な姿を私に魅せてくれていた。

こんなどうしようもない女にも分け隔てないのが逆に申し訳ないなと思ってしまう。


ただ、この宝石は私が莉子を想っていた証でもあり、罪の証でもある。

石引君にしたことだって、この宝石はきっと覚えているのだ。


そう思うと私は机にペットボトルを置いて、母の手芸箱を取りに行き、衝動的に加工をはじめた。

この宝石をまた身に着けられるようにしたい。


莉子を愛した証として、石引君を災禍の芽にしようとした罪の証として、そして自分の弱い心が振り回してきた友達と私自身の心への贖罪として。


インターネットで調べるといろんな方法が出てくるが、ワックス紐が大量にあったので使わせてもらうことにし、『マクラメ』という編み込みで作れるネックレスにすることにした。


熱で茹だる体を椅子にどっしりと乗せ、動画を参考にしながら少しずつ編み込んでいく。


集中しすぎていたからか一瞬で夜になり、ガチャリと自宅の扉の鍵が開く音で我に返った。

携帯を見るとたくさんのメッセージが莉子達から届いており、その中には「差し入れ玄関のノブにかけておくからね」の文字がある。


お見舞いに来てくれていたことにも気づかなかったのか…と少し怖くなったが、どのみち寝たふりでもしてやり過ごそうと思っていたから丁度いい。


一度意識が集中から外れると、体のしんどさが急に際立ってきて、我慢できずにベッドに体を投げ込んだ。

頭痛に少し響いたが、ほとんど気を失うようにして眠りにつく。

しばらくは目覚めなくてもいいかなと思いながら。


それから数日。

熱が下がった後も学校を休み、ただひたすらマクラメを編んでいた。


文化祭の準備なんかもうどうでもよくて、ただただ一心不乱に。


親は心配こそしてくれていたが、学校に行きなさいと口煩く言う程でもなく、何かを察しているかのようにそっとしてくれていた。

今はその配慮というか、気遣いがとてもありがたく感じる。


そして文化祭を翌日に控えた木曜日の夜。


オパールを編み込んだマクラメのネックレスが完成した。

少し歪だけど手で作り上げたそれは、自分の歪な気持ちとかも大切にできそうな気がして、作ってよかったなと思えるものだった。


私は自分の気持ちも大切にしていきたい。


たとえ、世界がこの恋を間違いだと言ったとしても。

私だけは、目を逸らさないで抱きしめて生きていたいんだ。


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