第98話 チロル、はじめてのご飯
さて、エンシェントスライムこと、チロルちゃんも連れて帰ったことだし。
お昼ご飯はなにをしようかしら?? 歓迎会も兼ねて……ちょっとしたパーティー仕様にしてもいいかもしれない。
となると、肉、魚、フルーツの在庫をインベントリで確認してから……セルシスと手分けして、料理を作ることにした。
だいたいは今まで作ってきたものでいい。その方がすぐに出来るものもあれば、時間がかかることもわかっているもの。なので、主食は私が、おかずとかはセルシスが担当することにしたわ。
『……? なに、してるの??』
しばらくザクロさんから離れないでいたチロルちゃんが、こっちに興味が出てきたのか質問してきた。
「これ? 今からご飯作るの」
『……ごはん??』
「作ったご飯は美味しいわよ? ザクロさんも材料を持って来たりしてくれるから、いっしょに食べてるの」
『お姉ちゃんも??』
『マリンちゃんたちのご飯は美味しいのよん? チロルちゃんも、食べてみれば気に入ると思うわ~』
『! そうなんだ!!』
絶対的信頼を寄せているわね? テンションの違いが見ていて面白いけど。
出来上がったものから、屋外に設置してある最近作ったテーブルの上に料理を並べていく。
チロルちゃんは、ご飯自体がはじめての経験なのでザクロさんの上から覗き込むように見ていたけど……スライムに味覚ってあるのかしら?と今更思ったが気にしてはいけない。
自分の不注意かなにかで、お仲間を吸収しちゃったけれど。起きたことを今更後悔してもしかたないもの。ザクロさんや私たちと出会ったことで、いいこともあるっていうのを知って欲しい。
そのための親睦会に、料理をけちったりしないわ。むしろ、美味しいものはこういうのだってわかった方が嬉しいし?
「は~い。皆出来たよ~」
フルコース料理とまではいかないけど、それなりにたくさん料理を作ったのでテーブルいっぱいになったのよね? 大食漢が大勢いるし、多分残らないはず。
けど、メインゲストはチロルちゃんだから、ザクロさんに頼んでテーブルの端に乗せてもらったわ。
『……これ、ごはん??』
「そうよ。チロルちゃんの歓迎会も兼ねているから、たくさん用意してみたの」
『かん、げい?』
「ええ。色々あったけど、ザクロさんと住むんなら私たちの友だちにもなってほしいの。そのためのお祝いの料理」
『……マリン、と、お友だち?』
「嫌かしら?」
『……ううん。なんか、ほわっとするの』
つかみ、はなんとか大丈夫みたい。さてさて、吸い込む以外の食べ方を教えてあげなくちゃだから……レシアムたちが席についたのを見てから、フォークでフーリスのステーキを口元みたいなとこに持っていってあげた。
食べるって、概念がよくわかっていないようだったけど、『口に入れる』がわかったのかぷるぷるの本体に隙間を作ってくれた。そこに入れてあげれば、ステーキは炭酸の泡に包まれて溶けていく。
完全に溶け込んだら、チロルちゃんは身体をさらにぷるぷる震わせた。
「どう?」
『……なんだろ。嫌じゃないの。不思議だけど』
「多分、美味しいって感じたんじゃないかしら?」
『おいしい??』
「味覚もはじめてだものね? ほら、ザクロさんもたくさん食べているでしょう?」
『マリンちゃぁあん~~!! これ、すっごく美味しいわぁあ!!』
お行儀よくは見えるけど、瞬間的に吸い込むくらいに消えていくから……お願い、もうちょっと味わって食べて!? チロルちゃんはぽかーんとしてたけど。
『……マリン。もうちょっと、ほしいかも』
「いいわよ? 自分で取ってみる?」
『うん』
私もぺこぺこだから、チロルちゃんが選ぶのを邪魔しないようにして食べ始めていたら。
彼女は、触手を使ってみょーんと料理を掴んで吸収するのを繰り返した。どうやら、お気に召したみたいでほっと出来たわ。
食事デビューにしては、お行儀良かったと思うくらい。
次回はまた明日〜




