第86話 パンケーキの仕上げに
生地が出来上がったら、これまた地中の鉄粉を魔法で搔き集めて作ったフライパンで焼いていくの。スキレットより少し大きいくらいだけど、ホットプレートじゃないから、慣れない鉄板で焼くと焦げ焦げになる可能性が高いのよね?
「まずは、こういうケーキの事前儀式みたいなの~~」
熱したフライパンを濡れた布巾の上にじゅっ、と鳴るまで乗せる。
コンロに戻したら、次は生地を適量流し込むの!!
「なにか意味があるのか?」
「表面がきれいに焼けるためなの」
「こだわりか?」
「食べれればいいかもだけど。こういうのは見た目も美味しそうなのがいいでしょう?」
「……一理ある」
「で、蓋をするともっと膨らみやすいけど……ないから、サインを待つわ」
ホットケーキと同じように、縁に気泡が出来たら……コテでひっくり返す。すると、予想以上にきれいなきつね色の表面が出来上がっていた!! シーズニングで手入れしたフライパンだと、テフロン加工みたいになるからバターもそんなにいらない感じね?
「いい色だな?」
「でしょー? ひっくり返した方も同じくらいになるように焼いたら出来上がり」
「これが……パンケーキ?」
「前世だと人気のおやつだったわ。……トッピング、どうしようかしら?」
「トッピング?」
「甘味はティーテウの果汁でしょ? ホイップクリームはまだ試作状態だし……シェルンの実をひと口大に切ったものでいいかしら?」
いちごもどきのシェルンの実に、シロップがわりのティーテウの果汁。まあ、それだけでも十分に美味しそうね?
とここで、玄関からノックする音が聞こえてきた。叩き方から、ザクロさんだろうとレシアムが代わりに対応してくれたわ。
『はぁい? いい匂いが外まで漂ってきてたわん。今日のおやつ~~?』
お昼寝タイムは終わったみたいなのと、なにかお土産をまた持って来てくれたらしい。今回はお肉関連じゃなくて……果物とかみたい。
「なにか取ってきたの~?」
『そうなの。ニーニンって果実なんだけど、甘くて美味しいのよん。思い出したから、お散歩ついでに採りに行ってたわ~』
「にーにん??」
どんなのだろうと見せてもらえば、リザーレのような白い球体のオレンジ版。匂いは既にしていて……マンゴーのような甘い匂いだった。
「いい匂いだな?」
セルシスも見たことないからか興味津々みたい。グルーミンのお山の中は、本当になんでもありなのね? まだまだ知らないことが多そうだもの。
「これ、どう食べるの?」
『薄皮があるから、それを剥いて……だったかな?』
『そうねぇ。あたしとかだと面倒だから、そのままかじるけど』
「種とかある??」
『たしか、ないはずよん?』
試しに包丁でカットしてみれば、瑞々しい果汁たっぷりのマンゴーみたいな果肉とご対面。
ひと口大にして、それぞれ味見したんだけど……パンケーキのトッピングにはぴったりじゃない?と言えるくらいに芳醇な甘さが口いっぱいに。
薄皮はたしかにあったけど、歯に引っかかりそうだから丁寧に除去。セルシスと分担して盛り付けに取り掛かったら……ちょっと、おしゃれなパンケーキの出来上がり!!
外で食べるのに、こっちも最近作ったダイニングテーブルっぽいとこに置いて……私とセルシスはカトラリーを使って。レシアムたちはそのままかぶりついた。
『『「「!!?」」』』
パンケーキも想像以上にふんわりしていて、ほのかに甘くて食べやすいんだけど。
そこに、シロップと果物が加わっているから、予想以上に相性が良くてぱくぱくと手が止まらない!! ちゃんと手間をかけて作った甲斐があるくらい美味しいの!! これはもう毎日食べたいくらいね!!
『なんてふんわりした食感なの~ん。これ、作るの大変だったんじゃなぁい?』
「リザーレの中身を仕分けるのには、このやわらかさが要だったのか」
「作った甲斐あるでしょう?」
「ああ。これは病みつきになりそうだ」
『ふんわふわ~~』
ってことで、生地が無くなるまで全部焼いちゃって。
今度はおかずパンケーキもあるわね、と教えたら……セルシスがパンケーキ修行にどっぷりハマってしまったの。リザーレの仕分けもすぐに出来るくらいになったし、メレンゲの方もコントロールしながら同時展開とか。
美味しいものへのスイッチは、押すべきとこで押す必要有りと思ったわ……。
次回はまた明日〜




