第82話 自分でも挑戦してみよう
最近思うのだが、やはりアルマリンに頼りっぱなしなことが多い。
無理もないのは承知だ。
彼女は転生者なのはもちろん、ここでの生活をするのにこの世界で生まれてたった五年で計画を実行出来た功労者。
俺なんかのように、武や魔法に特化しているだけでなく、生活の知恵が豊富なのは当然のことだ。俺の個性でもある、金属の形状変化も素質があったおかげかですぐに会得出来てしまった。ほかに、彼女の力になることが出来ると言えば、細々とした手伝いくらい。力仕事も、半分はザクロに任せているから……本当に、出来ることが限られてきている。
ほかに何か出来ないか?
探査については、精度の違いがあり過ぎて彼女の方が断然上だ。身体の成長も少し変化があったことで、魔力の保有量も増えたのだろうが……これでは、俺がお荷物とやらになっているばかり。
彼女は気にしていないようだが、近くにいられる男としては……もう少し、役に立ちたいと思うのだ。
だから今も、こうして屋外に出て探査 を広範囲に渡って実行しているが。彼女の次にほしいものというのは、『野菜』らしいが。そもそもの食材について知識の乏しい俺ではこれまでの収穫物を、いくつかのポイントにセットして探しに行くしか出来ていない。
「わぁ。もうこんなに見つけたの?」
それだけを収穫してきただけだが、彼女にはありがたいと喜んでもらえる。その笑顔を見ると胸の奥がくすぐったいが、なるべく顔に出さないようにした。
「インベントリに入れられるだけ収穫してきたが」
「ありがと。これで、またパンもたくさん出来るわ」
「……俺もひとりで作れるようになるだろうか?」
「あら、興味を持つことはいいことだわ。見ててあげるから、作ってみる??」
「ああ」
見た目だけなら、兄妹とかに間違われそうな背丈ではあるが。中身だけで言うなら、転生者のアルマリンの方が断然大人だ。
城とかにいた講師らの、無理難題を突き付けてくるようなことはしない。
少し厳しい指導はあるものの、基本的に温かい目で見守ってくれるのだ。その気遣いが心地よく、いつまでもこの生活をしていきたい意欲が湧いてくる。パン作りは力仕事ではあったが、大量に生地をこねていくのに一種の爽快感を覚えたほどだ。
「バターをいれると、滑らかで触り心地がいいでしょう?」
バターづくりについては、撹拌の方法を魔法でできるようにしたため、今回はレシアムが担当してくれた。その大量のバターを使ってのパン作りもなかかに力仕事ではあったが。最近三人でつくった窯のようなものに入れて焼くと、屋敷や城で食べたものとは違うがふんわりとやさしい食感と甘さの美味いものが出来るようになったんだ。
これを自分で?と疑い掛けるも、アルマリンの指導のもときちんと作ったのだ。彼女はそれを誇っていいとも言ってくれた。
「凄いな。こんなことが出来るだなんて」
「誰でも最初はゼロからのスタートだもの。自分で出来るようになると、達成感があるでしょう?」
「ああ、気持ちがいい」
「頼りにしてるわよ、セルシス?」
「ああ。俺も頼りにしている」
主力の彼女がいなければ成り立たない生活だが。彼女を中心にすると、その楽しさに罪悪感を持つことがない。
成果が得られなければ、出来るまでしなくてはいけない。武の道でそれを学んでいたが、それだけでは生活は成り立たないのだ。同じように、武の道を歩んでいた彼女がそう教えてくれるのだ。
今はまだ頼りがちでも、それでいい。
いつかは、隣で共に歩んでいけれるようになるまで、精進すればいいんだ。
次回はまた明日〜




