第79話 これでいいのか
アルマリン、セルシスへの告別式。
皆悲嘆に暮れているが、致し方ない。
遺体のない式では、余計にそれを止めることが出来ないのだから。
「天上世界で、御二方の安寧を願うことを……」
司祭がそれらしく述べてはくれているが、彼もふたりの死を悲しんでいるようだ。声が幾分か掠れている。おそらく、演技ではないと思うが。
【宝石族】としての、葬儀にはそれぞれの加護を持つとされる『宝石』を花束の中央に置いておく。墓にそれごと埋め、遺体があれば吸収して転生への守護石になるとされているが。
ふたりの遺体はどこにもない。
あれでは、ただの飾りに過ぎない。
しかし、慣例通りにしないわけにもいかない。
アルマリンもだが、セルシスも王家に連なる一族の子ども。
無様な式にしては、ふたりの魂が安らかに眠ることもないだろうと、慣例通りに式を行っているのだ。
妻や私はほかの子どもたちが泣くのをあやすしか出来ないでいるが。彼らが、姉たちのことを忘れないためにも……この場にはいてもらわなくてはいけない。
国を担うはずだった、神童とも呼ばれていた第一王女とその婚約者候補。
彼らの損失は国の神髄を喪ったと言ってもいいくらいに大きい。
お前たちが、次代としてそれを務めなくてはならない。
いつか忘れるかもしれないが、私や妻は忘れたりしない。
愛らしい娘を賊などに拐かされ、捜索しに行った婚約者は魔物かなにかに殺された。
それくらいしか、捜索隊でもわかっていなかった。もう少し慎重に捜索すれば違っていただろうが、Aランクの魔物が跋扈するあの山の中でそれ以上の捜索は無理だった。
いくら、優秀な子どもたちでも魔物らには敵わない。
悔しいことだが、無力な私の命令でもこれ以上部下らに危険を冒してほしくもない。
ならば、出来ることはこうやって形ばかりの式を執り行うことくらいだ。
「……とーと?」
「まーま? ねぇーは?」
「……ねぇさんには、もう会えないんだ」
幼い双子に告げても、意味がないことくらいはわかっている。
だけどもう、あの愛らしい娘はこの世にはいない。
それに寄り添うはずだった、ひとりの若者も喪った。
こんな現実があっていいのだろうか。
我々の、輝かしい未来を喪った賊らを許せん。魔物も討伐したいところだが、それに対抗できる強者も喪えば城を守護する者をさらに失うのでダメだ。
区切りを、つけねばならないのだ。
ひとりの親として動いていてはいけない。
聖なる宝石を司る、【宝石族】の長として。国を守護することを優先しなくてはいけないのだ。
だから、アルマリン、セルシス。お前たちには大変申し訳ないが、ここまでしか出来ないのだ……。
次回はまた明日〜




