第56話 はじめての手作りスイーツ
ティーテウの果汁、樹液の油。
レレンの綿毛にリザーレの卵もどき部分を入れて、ボウルの中でさっくりと混ぜていく。
ほんのちょっとのクルリの塩も入れて、もにゅもにゅ触れる生地になったら……ケーキドーナツにしたいけど、円は難しいからボール状にしていくわ。
食べるんだから、持ち易さ優先にするもの。
『なぁに? なにを作っているのん?』
「ドーナツってお菓子なの」
「俺もわからない」
「美味しいものよ?」
「そうか」
『こっち、いい感じだよ~』
レシアムには油鍋の火の番をしてもらっていたから、少し離れたところにいてもらってたの。
ちょうどいい感じなら、ボール状にしたドーナツ生地を持って、ぽんぽんと入れていく。揚げ温度は確認したけど、本当に油に似た液体だからかじゅわ~っと、音を立てて生地の周りに泡が出来ていくの。
多分、大丈夫なはずだわ!!
「ころころ転がしながら、全体に火を通して」
こっちの様子をセルシスにお願いしている間に。私は、別の作業に取り掛かることにした。あれだけだと素朴な甘みで、少しもったいない感じがしちゃうの。だから、ティーテウの果汁を使って、『蜜』を作っていこうと思うのよね?
といっても、小鍋の中で粘度を高くするように火を通すだけなんだけど。
「アルマリン。かなり茶色くなったが」
「どれどれ~?」
小鍋を一旦、浮遊魔法で放置して。油鍋の中を見させてもらうと……たしかに、いい感じのきつね色になっていたわ。
ひとつを菜箸で掴み、あちあちを割ってみれば生焼けはなし。小さくちぎって全員で味見よ!
『あらまあ。そんなに甘くないけど、ほくほくしていて面白いわ~』
『うん。ほんのり甘いね?』
「そうだな」
「うん。やっぱり、蜜は必要ね??」
別のボウルに揚げたドーナツを全部入れていき。小鍋の蜜がいい感じにとろとろしたら……そこに投入!
ころころ転がすようにして絡め、表面が艶々してきたら完成よ!!
「……艶やかだ」
『あら、今度はきれいねん?』
「私とセルシスはフォークを使いましょう?」
ほかふたりは自分の足に持つだけで大丈夫みたいだから、準備が出来たらそれぞれ口にしていく。
さくっとした表面。内側はパサパサよりも、しっとり系。
それらを、コーティングした蜜で甘さを補っているから……ケーキドーナツとしては満足のいく出来になっていたわ!! もぐもぐするのが楽しいくらいのおやつとしては、上出来じゃない?
『あんら。蜜をまとわせただけで、こうも味わいが変わるのねぇ?』
『マリン、美味しいよ!』
「……甘い。リリンの果汁ともよく合う」
三人の胃袋をがっつりとつかめたとようなので、これは大成功だ。
なので、無くなるまでティータイムね? と、ドーナツを食べる手が止まらなかった。
「食用油が手に入るとわかったから。もっと、料理の幅が広がるわ。ザクロさん、いいとこ教えてくれてありがとう」
『お安い御用よん。こーんな美味しいご飯も食べさせてもらえるたんだもの。あたしこそ、有難い使い方してもらえてうれしいわん』
「ふふ。揚げ物が増えたんだもの。もっと美味しい食べ方が出来るわ」
『それ。魔物肉で出来るのん?』
「そうね。オークの美味しさはわかったから、出来なくもないわ」
『だったら、お土産に持っていくから。夕飯もご馳走になっていーい?』
「……いいけど」
Aランクの魔物には、オークの狩りはおちゃのこさいさいって感じなのね? 探す手間が省けるから、こちらとしては有難いけど。
住んでいるとこは少し離れてても、半同居人が増えた感じになったわ。
次回はまた明日〜




