第55話 腹ごなしついでに、油探し
「ザクロさん、ヨルドのような不思議食材ってもっとあるの??」
ご飯の余韻に軽く浸ったあとに質問したんだけど、彼女はその巨体を縦に揺らしてくれたわ。
『マリンちゃんの好みに合ってよかったわん。ここいら一帯はまだまだ面白いのがあるわよん? どんなのが欲しいのん?』
「えーっと、ね。油かな?」
『『「は??」』』
「調理に油は必要不可欠よ? 材料を活かす方法もだけど、鉄板の手入れとかにも使いたいのよね?」
シーズニングってお手入れは特に大事よ? うまく付き合えるようにしないと、せっかくの道具が台無しになるんだもの。
それを皆に教えてあげれば、感心してくれたわ。
「では。油があれば、さらに調理の幅も広がるんだな?」
美味しいもの大好きセルシスだから、やる気に満ち溢れていたわ。表情だけじゃわかりにくいけど、雰囲気に闘志みたいなのが見えた気がしたの。
「そうよ? あとパンづくりもさらにグレードアップすると思うわ」
「! 探そう。絶対!」
「ってことだけど、ザクロさん。わかる??」
『油のかわりになる食材ねぇん??』
『ぼくの覚えている範囲でも、現代にあるかわからない。でも、探す価値はあると思う』
「やるぞー!」
『『「おー!」』』
ということで、きちんとバーベキューの片づけをしてからの捜索にはなったんだけど。
まずは、ザクロさんがヨルドの実が自生している場所に案内してくれたわ。距離からして二キロくらい離れてたから、魔法でばびゅんと移動したの。
『ここはこーんな感じねぇ?』
ヨルドの自生地は、南国風の木々があるところだった。本当にココナッツみたいなぶら下がりで、全然落ちてこない様子。あれはもいで収穫するらしいから、ザクロさんが昇って収穫してくれたのよね。
「ん~~。芽吹いて、膨らんで。果実になって……が、基本なら」
「なにか思い当たることでも?」
「うん。木に切り込みを入れて、樹液が油とかじゃないのかなって」
「じゅえき、が??」
「確かめてみましょう~」
ナイフで切り込みを入れてみれば、じんわりと樹液があふれてきた。すんすん、と嗅いでみたけど……ほとんど無臭。念のため触ってみたけど、さらさらした手触りには覚えがあったわ。
『それが、油??』
「このぬめり具合は似ているんだけど……」
「少し集めてみるか?」
「そうね?」
セルシスの言う通りだから、コップに溜まるのを慎重に待ってみる。その分、切り込みもサバイバルナイフで大きくえぐってみたら……たら~っと、樹液が垂れてきてコップの中に溜まっていくの!! その色は無色かと思ったら、うっすら黄色い。
これはまさか、菜種油みたいなもの??
『いっぱい溜まったね~』
『樹液が料理に使えるのかしらん?』
「試す価値有りよ!! 皆、お腹平気?」
「いつでも大丈夫だ」
「じゃ、ここで作りたいのは……」
砂糖もあるから、ドーナツね??
鉄板をすこーし、湾曲させてみてグリルドパンのように浅い油鍋にも使える形状に変化させてから。私はセルシスとふたりで、ドーナツの生地を仕込んでみることにしたの。油で揚げるからケーキドーナツっぽいのがいいのよねぇ?
次回はまた明日〜




