第5話 犯罪なのか、違うのか
あり得ない、出来事が起きていた。
「姫さまぁ!?」
「アルマリン姫様!!? どこに!!?」
「なんだこれは!? バルコニーが凍っている!!?」
堅苦しい城でのパーティーで、俺にとっても重大発表とやらをしなくてはいけないこんな日に。
主催である王家の方で問題が起きた。寵姫とも言われている、一の姫の姿が見当たらない。それがなんと、バルコニーから不審な者に侵入されたかのような痕跡を残され、姿かたちがどこにもないという光景だ。
俺もかけつけてはみたが、たしかに幼い子どもには到底出来ないと思われる芸当がバルコニーから下にかけて広がっていた。氷魔法で顕現した氷のスロープ。これを、幼い姫が創り出したとは普通では思えない。ある程度の訓練を受けた城の衛兵らでも出来るかどうかだが。
「……? シーツが、巻き込まれている??」
よく見ると、氷の中に寝床に使うシーツが巻き込まれていた。賊がわざわざ使ったにしても、氷魔法に混ぜる意味がわからない。俺だったら、割いてひも状にしてから地面に垂らすが……まさか、姫本人がやった?
まだ、たった五歳の子どもだぞ? 謁見したことはないが、そんなにも大人びているのか? 至高のラピスラズリを司る期待の神童とまで噂は立っているが……こんな日に限って逃げ出した。
つまりは、婚約が嫌で逃げ出した可能性もゼロではない。
考え方が大人びているのなら、自由を求めて今日まで色々自分なりに用意した。こんな、混乱している大人たちには賊の仕業だと思わせるような痕跡を、きちんと残してまで。
自分には構うな……とでも、言いたいのか? 将来の約束なんて、興味がないとでもいう感じだ。
(……興味、あるな)
俺を拒否したことではない。
『婚約』を蹴ってまで、自分の生き方を自身で決める潔さに感心したのだ。
あくまで、予想ではあっても……ここから王女捜索には俺も加わることになるだろう。なら、そのためにも、この痕跡を辿って子どもの足で向かうことの出来る場所を徹底として探さねば。
とは言っても、国王に呼ばれたため、すぐに出立することは出来なかった。溺愛している娘が攫われたかどうかで焦っているのかもしれない。顔色を窺ったが、最悪なくらいに落ち込んでいた。
「セルシス……呼び出したのは、ほかでもない我が姫のことだ」
「……婚約の件はひとまず。私自身で捜索に向かうことをお許しください」
「!? 君自身が?? まだ十二だというのに!?」
「外見はそう見られませんし、訓練は大人たちに混じらせてもらっています」
そう、俺も外見はともかく、実年齢はまだ子どもに過ぎない。だからこそ、姫の遊び相手も兼ねた婚約者として発表する予定になっていたのだ。
【宝石族】の中でも、月と刃に魅入られた『ルチルクォーツ』を司る我が身。比較的早く精神が整い過ぎて、十歳のときにはもう、外見が二十近くまで成長してしまった。不釣り合いな婚約だと、姫には思われたかもしれない。
会っていなくても、それがわかる理解力とかが俺の予測通りなら……どんな『女』へと成長しているかも、非常に興味が湧く。それくらい、子どもだろうがなんだろうが、見つけ出してやりたくなった。
んで、事情を聞いて、俺との帰還を望まないなら……そのときは、きちんと話を聞こうじゃないか。
お互い、大人ではないのだからな?
次回はまた明日〜




