第49話 諦めるしかないのか
厄介な報告があった。
山間の捜索部隊から、『Aランクの魔物との遭遇』したとの報告があった。
紅玉の瞳を持つ、蜘蛛型魔物のサンザス。
こちらから接触をしなければ、基本的には温厚な魔物であると書物などには記録が残っていたのに。
『いきなり、我々の前に出現して……威嚇攻撃を』
山の主ではないにしても、縄張りに入り込んでしまったことで機嫌を深く損ねてしまったのか。これでは、ほかの魔物たちの機嫌を損ねてしまっていることと同じ。
つまりは、アルマリンとセルシスの安否などの確認が取れない。
ゴブリンやオークならまだしも……サンザスを含めるAランクの魔物が表に出てくると言うのなら!!
(ああ……ああ!! アルマリン!! セルシス!!)
王としては、ここで捜索を打ち切らねばならないのか。
ふたりはもう、亡き者扱いとして……遺体も見つけずに弔うことすら出来ないというのか?!
親として、なんて決断を迫られてしまったのだろう。痕跡を辿れば、いつか巡り合うという一縷の望みをこれでは断たれたのと同じだ。
「……国葬をせねば」
執務室にほかの臣下らもいて、その言葉を聞いた者らもわかってくれたのか。
我が娘と、その婚約者候補だった者への弔いの儀式。
【宝石族】としての身体はないにしても、せめて最上級の弔いくらいはしてやりたい。
あの子たちの安否は、もう確認しようがなかった。精鋭部隊もお手上げ状態だったのに変わりはないのだ。
ならもう、私たちの出来ることはこれで終わりを迎えるしかない。
「……陛下。それで、よろしいのでしょうか?」
「……ああ。せめてもの手向けだ。姫に公爵家の嫡男を喪ったと……他国にも伝えよ」
「……承知いたしました」
「すぐに手配いたします……」
執務室にひとりになると、私は誰もいなくなるとわかってから目じりに溜まっていた涙を流した。
もう、止められない。
愛する娘を喪ったことへの、喪失感は喩えようがないのだ。
自分の目で確かめたことではなくとも。魔物の徘徊が酷いところで、神童と謳われた子どもであれど生きていける可能性は極めて低い。
セルシスとて外見は大人そのものでも、年齢はまだまだ子ども。経験の少ない戦闘をしたとて、生きている保証がないのだ。
せめて、合流していて欲しかったのだか……今となってはそれすらもわからない。
ならもう、表に出てきた魔物らの威嚇がはっきりした今。
彼女らの国葬を盛大なものにするしか、手向けの代わりにはならなかった。
愚かな父親。
愚かな、【宝石族】の長。
そんな忌み名を与えられても当然のことだが……これからの行く末を任されているのは『王』なので変わりない。娘たちの弔いが終わったら、妻と子たちに今後のこともきちんと伝えなくては。
長子だったあの子は、もう居ないのだから。
次回はまた明日〜




