第42話 服を新しく作る③
蜘蛛オネエさんからもらった、上質なシルクみたいに触り心地がいい布。
これを使って、『普段着』を作るのは少しだけ申し訳ないが……もらえたからには、ちゃんと使いたい。
セルシスの分も作るから、無難にシャツとズボンね? 色については……私が自分のを城で作成したときの方法を使おう。『炭』から炭素だけを抜き出して、色付けしたのよね? 城では暖炉のをこっそり使ったけど、こっちのはキッチンで使うのから!
「……たしかに。色がしっかりついている」
「洗浄魔法なら、色落ちしにくいし。丈夫でしょう?」
糸や針は、インベントリに入れてあるのを使って。ハサミ以外の裁縫道具ももちろん入れておいたから、だいたいの寸法を測って裁断するのもお茶の子さいさい!! 前世の趣味丸出しだけど、持てる技術は惜しみなく使うわよ?
まずは、パジャマとかにも使えるくらいのゆるいズボンを作成してみた。魔法で着替えてもらったけど……素材がどっちもいいから、似合い過ぎるわね? 滑らかな質感の布だから、セルシスの美貌がシンプルな装いでも映えてしまうわ。
おそるべし、ワイルドイケメン!
「着心地がいい。最上級のお針子とも言っていい仕上がりだ」
「ふふ。シャツも作りやすいのでいーい?」
「任せた」
やっぱり、新しい服があるとテンションが上がるのは仕方がないもの。
シャツはボタン無しでも着心地がいいのを作ってあげて、同じように着替えてもらったら……今回は白にしたけど、上下黒のも似合いそう。ささっと、もう一着つくって着替えてもらったら鼻血が出そうになったわ!! ワイルドイケメンの素材は最高級ね!! 中身は十二歳の男の子なのに。
「さーて、オネエさんに見せに行く予定だから。私のもはやくつーくろ」
こんないい素材なら、黒と白それぞれの動きやすいゴシック風のワンピースもいいかもしれない。
フリルは適度に。裾とかスカートのプリーツとかはゴテゴテしすぎないようにしていけば?
あらあら、不思議。創作意欲が湧いてきたからあっという間に出来上がっちゃった。これはおでかけ着用にするとして、次は普段着用のシャツとズボンね? せっかくなら、セルシスとペアルックじゃないけど似た様なものをつくれば……水魔法の鏡で確認したけど、まずまずな仕上がり。狩りとかのときには、汚れても大丈夫な仕上がりになったと思うわ。
『うんうん。いいね、ふたりともなかなか似合うよ』
ひとり、服を必要としない獣の姿だからか、前足部分で拍手していたレシアム。
ここでひとつ、セルシスとも情報共有しなくちゃいけないから、あのオネエさんが言っていたことを聞かなくちゃ。
「ねぇ、レシアム。追っ手はまだこの近くにいるの?」
私の発言に、セルシスもはっ、として表情を切り替えてくれた。着心地抜群に酔いしれていたとこは申し訳ないけど、これは大事なことだからね?
レシアムはあんまり驚いていないのか、首を縦に振っていた。
『近くにいるけど。君たちの痕跡はかく乱するようにしてある。……精霊のぼくが気に入った子たちの危険を導くことなんて、したくない。たしかに、ぼくの勝手な行動だったかもしれないけど』
「ううん。それはいいの。私もセルシスが来るまで詰めが甘いと思っていたから」
『……なら。契約したぼくの意志であっても怒らない?』
「もちろん。こんな楽しい生活が出来るのはあなたもいるからよ?」
「ああ。俺とアルマリンだけだったら……きっと、無理だった」
セルシスもわかるくらい、私たちの生活は今が楽しい時期。
だけど、私の外見が精神の不釣り合いさを保とうとしたら……その生活も終わりを迎えてしまうと思っていた。
身体はともかく、今の生活保障がレシアム先生のおかげできちんと出来ているのなら、逆に有難いことこの上ないもの。
『うん。ぼくも、君たちと居たかったから』
望んで居たいと互いに願い合ったから。
その意思をきちんと確認し合い。とりあえず、もう服は出来上がったからオネエさんのところにもう一度行くことにした。私はせっかくだからと、シャツじゃなくて黒のワンピースにね?
次回はまた明日〜




