第32話 モブキャラが高級肉に①
さてさて、今更だが私には欲しいものが出来た。
スキルとかそういうのもほしいっちゃほしいけど……具体的な道具よ?
食材を捌くための包丁とかそういう、具体的な道具。
コテとかペティナイフくらいはあるんだけど。牛刀とか、サバイバルナイフとかまでは城にいた頃つくってなかったのよねぇ?? 迂闊だったわ。
だって、こんなにも早く、魔物のお肉とご対面になるなんて思っていなかったもの。それに、旅の相棒とかが増えるのなんて、予想外過ぎたし?
「持ち帰ったのはいいけど……これ、どう捌こうかしら?」
「さきほどの『イノシシ』とやらのようにはいかないのか?」
セルシスは公爵家の人だから……解体なんて経験皆無でしょうしね?
精霊のレシアムについてはどう食べたのか気になるけど、そこは生食かしら?
それは流石に毒云々の前にお腹壊すだろうから、ちゃんと火を通して食べたいところね? 前世のラノベ知識とかが適応されているなら……一部の書き手さんだと、魔物を常用食にする以外にも高級肉扱いしているらしいし? 空想の出来事の中に、今いるんだからその可能性もゼロでもないわ。
だったら、ここはひとつ。
「セルシス。金属の形状変化を教えてもらえないかしら?」
今ある道具を進化させるのに、ここは得意分野を教わるに限る。でないと、この生鮮食材を無駄にすることになりそうだもの。
「君の要望通りに俺が作り変えるではダメか?」
「それでもいいけど。自分で出来るかもってことはしたいの」
「……前向きな姿勢だな」
「そうじゃなきゃ、転生してもアウトドア派じゃないもの!!」
「あう……どあ?」
「内向的な性格じゃないってこと。……もしかして、血族の問題で教えるのが禁じられているとか?」
「いや? 君のラピスラズリにも金属の部類が含まれている。そこで、君も似た経験があるのなら禁じ手とは言わない」
たしかに。鉄板やコテは作れたから、適性はあるかもしれないものね?
なので、材料に使っても良さげなコテを彼の前に差し出したの。
「これで、ナイフを作りたいの。両刃というより、片刃の剣みたいなものね?」
「……ひとつ、試していいか?」
「ええ、どうぞ」
片方を受け取り、じっと見つめていたかと思えば。コテが淡い金色に光って……あっという間に、片刃の剣に変化した。と言っても、武器ね。包丁の説明は口で簡単には難しいもの。
「不純物が多いが。これなら初心者でも大丈夫だな」
「単純に言うと、イメージ?」
「話が早くて助かる。ルティアーク家では遊び道具のようにして、形状変化を日常に取り入れていたからな? 俺が赤子だった頃からの遊び道具があの棒とかだったり、様々なものを使っていた」
『面白い遊びだね?』
「と言っても、下手な形状にしたら怪我するから危ないわ……」
「アルマリンの言う通り。傍仕えは常にいた」
剣にしてもらったコテを受け取り、重さとかを確かめたけど。コテだったときよりも子供が扱うには重い道具になっていたわ。模造剣の鉄粉から作ったものだから、たしかに不純物が多くて当然よね?
「じゃ、これでイメージしてみるのは!!」
血抜きはしてあるし。インベントリに保管してあるから、まだ腐敗は始まっていない。
その前に、道具を確保するため……コテをふたつ使って、『形状変化』をやってみる。ひとつは牛刀のような包丁。ひとつは補助用のサバイバルナイフ。
魔力はたっぷり回復しているから問題ナッシング!!
注ぎ込んだ魔力に私のイメージを上乗せしてあげれば……ちょっと重たいけど、両方ともきちんと出来上がったわ。怪我防止も兼ねて柄もちゃんと作ったわよ?
『へぇ? 見たことないね?』
「それで、オークを捌くのか?」
「そうよ? あ。ふたりには使えない箇所の焼却処分だけお願いしていーい?」
「ああ」
『いいよ~?』
インベントリから出す前に、吊るし台をつくる。適当な木材を三角に立て、リザーレの蔓草で縛り上げて……なるべく高く吊るし上げる。私は浮遊魔法があるから、どこからでも捌きたい放題だもの?
「頭は最後。まずは、お腹を捌くところからね?」
ぶにょぶにょした豚と思えば、怖いと思うイメージが薄らいでいく。それだけ、新鮮なお肉が入っていると思えばわくわくが止まらないもの!!
まずはサバイバルナイフの方で上から下に切り込みを入れていく。すると、気色悪い紫の血がしたたってくるけど構わないわ。既に汚れてもいいシャツとズボンに魔法で着替えているから、汚れたあとも浄化とかで洗浄すれば問題ないからね。
どろ~っと、内臓とかが流れ出てきたら魔法で引っ張ってからナイフで食道あたりをカットした。
ぼと、っと落ちていく内臓はセルシスたちに焼却してもらおうとしたんだけど……あまりの『
モツ』の素敵な色艶を目にして、気が変わった!!
お肉も豚肉のような脂身たっぷりのきれいな色合いだし……皮と骨以外は、余すことなく食べてあげるわ!!
次回はまた明日〜




