第27話 胡椒の石綿バージョン??
クルリの塩の相対する石綿と聞いて、どんな感じなのか想像していたけれど。
滝つぼみたいなとこじゃないけど、そう遠く離れていないところに洞窟はあったわ。レシアムの灯りの魔法で中を見渡したんだけど……たしかに、それらしきものはちゃんと存在していた。
たとえるなら、そう、それは。
「真っ黒くろすけね?」
「? なんだそれは?」
「異世界用語とでも言えばいいかしら? ほこりの塊みたいなのを喩えたりするのよ」
「まあ、たしかに真っ黒な塊ではあるが……」
『異世界は面白いねぇ? ティルンの石綿。これも触れると形が崩れるから魔法で捕獲しようか?』
「魔法でか?」
「風魔法の応用よ~」
「なるほど……」
セルシスは風魔法の『投網』っぽいやり方は、あまり慣れていないのかでコツをつかむのは最初大変そうだったけど。
胡椒になる前に私やレシアムの魔法が受け止めていたから、無駄にはしなかった。胡椒と言っても粗挽き胡椒って感じだったからくしゃみを我慢したわ~~。
「これを使って、フーリスの葉をもっと美味しく焼きたいわ~」
『もっと美味しくなるの?』
「あれでも十分に美味いのにか?」
「胡椒の可能性は偉大よ~? 塩胡椒はそろったし、帰りながらほかの食材を収穫しましょうか?」
シェルンの実もだけど、フーリスの葉もたっぷり収穫しておけばお腹いっぱいになるもの。魚も川辺に行って罠をしかけておけば問題なし。
帰宅途中、レシアムもだけどセルシスも追っ手が来ないか気を配ってくれていたが、特に影の気配はなかったらしい。ここって、よっぽど見つかりにくいのかしら?
セルシスが神童クラスに頭がよかったせい? 彼だけが意外性のある考えを持っただけかもしれない。面白いわぁ……。
「手伝えることは、なにかないか?」
拠点に戻ってきて、すぐにご飯の用意をしようとしたら。餌付けされた子犬のように、耳と尻尾の幻影が見えた気がした。ワイルドイケメンなのに、なんてかわいいのかしら! ……じゃなくて、厚意を無碍にしてはいけないわ。
「そうね? まずは、見ててくれる?」
「見るだけでいいのか?」
「手順がわからずに、いきなり実行するのは難しいでしょう?」
「……そうだな」
自己主張し過ぎない姿勢も好感度を持てる。
まず、私はさっそくティルンの胡椒をインベントリから取り出し、フーリスのお肉みたいな果実の部分に擦り込むようにまぶしていく。
馴染むまで、これは常温に置いておく。インベントリに入れておくと時間経過が起きないからダメなのよね?
次に、まだ捌いてたくさん残っていた魚の切り身にはクルリの塩で臭み抜きをする。こっちも少し放置したら、水魔法で塩を洗い流す。そのあとには、味付け用の塩胡椒をまんべんなく振りかけるだけ。
「セルシス、焚火つけてくれる?」
「ああ」
清潔にしておいた、木の枝に刺している間に彼に指示を飛ばし、出来上がったら浮遊魔法を使って食材にじっくりと火を通す。浮遊させるだけじゃなく、くるくると回しながらの操作魔法も使うからセルシスには見て覚えて欲しいのよね?
「あとは、パンとかがないから……リザーレを割って」
鉄板も取り出して、それもじっくり焼いていく。クルリの塩とティルンの胡椒を適量振りかけて。
飲み物は、それぞれの嗜好品に決まった果汁をセルシスがコップに入れてくれたので完璧だ。
飲み物は常温だけど、他は熱々の湯気が立つ食事ばかり。
主食こそはないが、美味しい主菜とかがあるだけ十分よ! 切り分けて皿に載せたのを、見ていくとつい顔が緩んじゃう~~。
お城じゃ、まず味わえないものばかりだし。常温以下の冷たい食事なんてもう二度と食べたくないんだもの。日本にいたときだって、全部が全部そうじゃないのはわかるけど……出来るだけ、あったかい食事は口にしたかった。
それだけじゃなく、変な食事制限がかかるのも苦痛で仕方ない。食べたいものをすぐに食べれないって、本当にストレスなんだもの!!
だから、今は。
『「美味しい~~!!」』
「美味い! ぴりっとしているが、風味がいい!!」
美味しいものを分かちあえる仲間といっしょのご飯が、こんなにも美味しいとわかると嬉しくて仕方ないんだもの。
王族だろうが、貴族だろうが関係ない。
贅沢な生活をしていたかもしれないが、あんな苦痛だらけのはごめんだもの。
完全自由な、今の生活の方がずっといい!! のんびりスローライフ、最高だわぁああ!!
(うふふ~~!!)
ティルンの胡椒を追加しただけでも、風味も味わいもさらに豊かになっていく。こんな素晴らしい食材が探せたのはレシアムのおかげだけど。使えるようにしたのは、私とかセルシス。
肉も魚もひときれずつじゃ足りない男性陣は、何枚もおかわりしてくれた。私も少しおかわりしたけど、残しそうだったので食べかけはインベントリに入れておくことにした。
ふたりみたいにたっぷり食べたいのに、まだ身体が小さいから無理なのよね……?
いつになったら、精神年齢に合った体つきに成長するのかしら??
次回はまた明日〜




