第18話 宝石の血を合わせ
せっかくなので、床も整えてみたけど。薄く切った木の板をカットしながら張りあわせ……毛布が敷きやすいように出来たら、ふたつあるうちのひとつをセルシスに渡してあげた。
「アルマリンが使うべきだろう?」
「ここに来るまで、寝るときどうしてたの?」
「……マントをかけてただけだが」
「私たちは病気になりにくいけど。ダメよ、夜は寒いんだから」
『マリンの好意だから、受け取ったら?』
「……わかった」
素直でよろしい。
敷居になる壁も張れたし、扉もまあまあの出来栄えになってので。そろそろ、夕飯をと思ったがセルシスからひとつ提案があったの。
「なあに?」
「この拠点に、血の加護をかけないか?」
「……レシアムがいるけど。自分たちで、二重に結界をかけるってこと?」
「ああ。彼にまかせっきりも良くないと思ったんだが」
「そうね。精霊様のご厚意に甘え過ぎていたもの」
『ぼくは気にしないけど~?』
「いいえ。今後のためを思うと、自営できるようになる練習も必要よ?」
血の加護。
文字通り、宝石族の血には司る宝石の一部が宿っているとされている。
王族はともかく、王侯貴族については家ごとで宝石は決まっているけど……王族は基本的にバラバラ。私のラピスラズリの出現は、歴史上、まだたったの三度目。
だから、殊更大事に育てられてきたんだけど……大事にされ過ぎて、籠の鳥かよと思ったくらい。武術についても、結構お父様を説得したから習えたんだけどね? 師匠たちも、最初は加減されてたんだもの。
とにかく、血は宝石そのものと言っていい。精霊様の加護を宿す液体とも。
レシアムはその本体だから、レシアムには出会ってから結界をまかせっきりにしてたけど……たしかに、セルシスの言うとおりね。自己防衛できるようにしないと、セルシス以上の追っ手が来ないとも言い切れないもの? セルシスは、追っ手をはやいことやめて……こっち側に来てくれたんだけど。
「なら、俺からしよう」
玄関あたりで、彼は腰に佩いている短剣で指に傷をつけた。ヒトの形であっても、血は宝石の色。銀と金が混じった不思議な液体が床の上にぱたぱたと流れ……小屋全体を包み込んでいく魔力を感じ取れた。
金と銀の光の軌跡。
きれいな光景を見れて、ちょっとうっとりしちゃったわ……。
「じゃ、次は私ね?」
インベントリに入れてある短剣を手に、セルシスの横に立つ。血の跡の上に重ねるようにして、自分の青と金の血を流した。すると、室内に夜空の星々みたいな光景が天井に映し出されて……なかなかに、きれいな光景を作り出してしまった。
ちょっと、派手だったかしら?
「……さすがは、ラピスラズリ。俺より、数倍以上の強い結界になった」
『ぼくもいるから、余計に反映されているんだと思うよ? けど、マリンの魔力操作は練度が高い』
ふたりに褒められちゃった……。ものすっごく、照れるんですけど!!?
結界張っただけなのに、反応式が出ただけでなんか壮大なものを見せた気分になってる??
けどまあ、悪い気はしない。とりあえず、お互いの指はそれぞれ治癒魔法ですぐに傷口を治したわ。
「じゃ、そろそろ。夕飯にしましょうか? ……セルシス、魚の方がいい?」
「いや? 君が用意するものに異は唱えない。というか、国の慣習が古すぎて……あの噂は嘘だとわかったんだ。今更何を食べても怖くない」
「あの噂?」
「王族と同様、公爵家でも聖なるモノを口にし続けてきた。まったくそこから外れた食材を口にすれば、不死に近い宝石族であれ命を落とすとか」
「……そうなの? レシアム」
魔物についてはそんな謂れがあるとされてきたけど。不思議食材とか魚食べた私たちふたりどころか、精霊様のレシアムもなんともない。
話題を振ってみると、彼は首を左右に振った。
『ヒトの血が混じった当初は、弱いからだね? 千年以上は経っているし、一族として順応してるからその心配はないよ? まあ、魔物の肉だけはちょっと気にした方がいいくらいかな?』
「アルマリン。それは食べたのか?」
「まだよ? 川魚は魔物じゃなかったし」
「俺も、途中君が収穫したらしい変わった肉の実を食べたが……なんともないな」
「フーリスの葉ね? 美味しかったでしょ?」
「ああ。すごく。……外で、焼くか?」
「そうね! クルリの塩は必要ないし、せっかくだからたくさん食べましょう?」
外の四面にも同じように結界を張ってから焚火を起こし。
存分と言わんばかりに、フーリスの葉を蒸し焼きと炙り焼きにしてから、焼肉パーティーのようにして楽しんだわ。
セルシスはフーリスの葉が大好物になっているようで、年相応のようながっついた食べ方が可愛かった!! そんな風だと、育ち盛りの大きいだけの子どもにも見えてしまう。むっちゃ、ワイルドイケメンだから……肉汁舐めるとことかエロかったけど!!?
次回はまた明日〜




