第17話 その頃、レーデンブルク王は
「……アルマリン姫の行方は未だわからず。ルティアーク家のご子息とも合流しておりません」
「何故だ!?」
マリンの捜索が始まって、そろそろ五日目になるというのに……足取りがなにも見つからない状況。
親としてはすぐに探しに行ってやりたいのだが、私は国王陛下ゆえに不可能。国を背負う者として、子を持つ親とは言え責務の重要を天秤にかけるくらい……簡単には出来ないのだ。
我々は、わずかに人間の血を引くとは言え。精霊様の加護を持つ、【宝石族】。
ヒトに利用されぬよう、他国との交易はあまり盛んとは言い難い。古くからの付き合いのある同盟国や友好国はまだしも、新たに同盟を交わすなどと言うのは、ここ500年くらいはないとされている。
精霊様の加護を悪しき者に利用されないため。
宝石と呼ばれる貴石の加護を持つ、人の形を成した存在が我らのことだが。
完全な不老不死でない、我らには少し特殊な体質が備わっている。精神が肉体と不釣り合いである場合、いくら子どもの年齢であろうと肉体が成長を迎える仕組み。
その仕組みが我が子にもあるだろうと心配して、先に成長した男児を婚約者としても、守護者としても据え置くつもりでいたというのに。
我が一の姫のアルマリンが、婚約発表の日に姿を消した。
というか、賊に攫われた可能性が高い。まだ溶け切っていないバルコニーの氷魔法を使い……あの子を城から出した。
計画していたにしては、情報がどこから漏れていたのか定かではないのだ。友好国や同盟国にも知れ渡ってしまっているため、捜索隊には彼らにも情報を伝えるようにしているが……何日経っても、賊の拠点らしきものは見つかりはしない。
見つけて捕縛しても、そんな幼児は知らないの一点張りだったそうだ。
となると、考えられるのは……最悪な結論でしかない。
学と武に秀で、神童とも謳われた我が国の最高位の姫自身。精神と肉体が不釣り合いだと自覚したのなら……成長する前に、自分で逃げ出したかもしれないということ。
その可能性は、非常に高い。
親の心配をあまりかけない頭の良過ぎる子であっても、自分の意思で行動を起こすなんて今まで習い事以外であっただろうか?
(むしろ……すべて、そのためなのか?)
籠の鳥のような生活を強いていたつもりはなかったが、本人には合わなかったのか。
まだたったの五歳だというのに、なんて成長の速さ。
久しく、守護石の加護を持つ一族の子どもは誕生していなかったため、精霊様の加護も強かったのかもしれない。その恩恵のおかげもあって、あんなにも利発な子に育つのか?
けれど、王族のすべてを捨ててまで、生きたいという願いを持っていたとしたら……。
単身で捜索を進めていた、セルシスも結局は十二の子ども。その輝かしい感情を向けられていれば……もしかしたら、絆されている可能性も高い。
婚約者同士ではなく、子ども同士の結託。
認めていいものではない。それは非常にまずい。
特に、食事だ。聖なるモノ以外を口にしていれば、精霊様の加護が薄くなると私がこれまで信じてきた知識では確実。
最悪は、ヒトの血が強くなってきて、肉体成長が急激に進んで死に至るとも言われていたのだ。その禁忌を、あのふたりが犯していたとしたら……ああ!!
「捜索隊の中に、精鋭隊を組み込ませろ。セルシスも不明であるのなら共に探し出すのだ!!」
「はっ!!」
遊びで生活をしているわけではなくとも、死に至る可能性を否定できない今となっては。
一刻も早く連れ戻し、その危険に陥っていないか神官たちに調べさせなくてはいけない。
それまでは……心配し過ぎている王妃にも弟妹である子どもたちにも言えないことだ。執務に明け暮れているしかなかった。
次回はまた明日〜




