第16話 山小屋づくりへ
「セルシスはインベントリって使える?」
「? 収納する魔法か? 一応使えなくはないが」
「じゃあ、分担して倒木を探しましょうか? あ、木をそのまま切っても、水気多いから建物には不向きよ?」
「……それは、知らなかった」
「ふふ。じゃ、まずは崖下とかに行きましょう!!」
地すべりとかで落ちた木があるなら、使えなくもないし??
それがあんまりなかったら、さすがに伐採して乾燥させるように手を加えるけど……でも、仲間がひとり増えたからその方がいいかしら?
まあ、言ったからには前者の方法で頑張ってみましょう!!
『マリン~。いっぱい倒れているのがあるよ~?』
先陣を切っていたレシアムが見つけてくれた場所は……多分、雷の被害かなんかで、焦げたりした木がたくさん倒れていた。
ちょうど開けた場所だし、水場からもあんまり離れていない。候補地の近くでもあるから、ここを拠点にしてみるのも有りね?
「セルシス。ここを拠点にするのはどうかしら?」
「……悪くないと思う。広さ的にも、申し分ないな」
「じゃ、まず倒木をインベントリに入れて……そのあとに、地面をきれいにしていきましょうか」
「ああ」
外見は大人でも中身は、大人びた子ども。
それでも、すべきことはわかっているのか……自分のインベントリにどんどん倒木を入れていく手際の良さには、ちょっと感心しちゃった。
お坊ちゃんだろうに、まったく汚れ仕事を厭わないあたり、彼も贅沢な生活はあんまり得意じゃなかったのかも? でなきゃ、私のつくった魚の塩焼きをあんなに美味しそうに食べたりしてくれないもの。あと、腕っぷしは強そうに見えるから、そこは大人に鍛えてもらったでしょうけど。
(さてさて、草は焼け焦げている。灰にしてから地面を掘り返して)
中間地点にしたところと同じようにはしないけど。固い土のままではよくなかったはず。
建築業とかの知識も、テレビの受け売り程度だからうろ覚え。
地面に手を置き、土魔法を展開させて耕してみるの。土の噴水がいくつか出来て、セルシスも驚いてたけど……すぐに邪魔にならない位置まで跳躍してくれた。レシアムもいっしょだから、ふたりに見守られながら地面をどんどん耕していくわ。
小石とか少し固い石とかが出てきたら、粉砕させて。
完全に地面が真っ茶色になったら、一旦仕事は終わり。インベントリに入れてた水筒で水分補給も忘れないわよ。
「……アルマリンは、凄いな。魔力操作が適格過ぎる」
「そう?」
水筒を片付けてるときにこっちに来てくれたので、セルシスは素直に褒めてくれた。イケメンからの賞賛は嬉しくないわけがない。精神年齢だと私の方がお姉ちゃんだろうけど、話し方とか雰囲気で同い年感覚に思えるから気兼ねなく話せるのよね?
「ああ。世界最高とも言われる、守護石の申し子だと言われてたにしても。実力がここまであるとは想像以上だった……」
「……知識とか、武を学んでただけにしても?」
「……なにか、秘密でもあるのか?」
「知りたい?」
「是非」
純粋な好奇心も混じっているでしょうけど。この人には、ちゃんと伝えてもばかにされないだろうから……言うことに決めたわ。
私自身の、本当の秘密について。
「……ただ、精神が肉体と釣り合わない以上のことよ。……異なる世界の前世の記憶持ちなの」
「……君が、か?」
「信じられない?」
「いや。それなら、五年だけでここまでの技術をものに出来るのも……わからなくもない。城から逃げたくなるのも」
「ふふ。すぐ信じてくれるの?」
「おかしいか?」
「いいえ。ついてきてくれる人を貶したりしたくないもの」
信じる信じないかはともかく、くらいのつもりではいたけど。
物わかりのいい人だからか、すぐに納得してくれたのは嬉しかった。
感情の起伏とかは顔に出にくいけど、怒っているとかじゃないし、雰囲気もやわらかいところが多い。なら、レシアムに許可もらわなくても……私自身が話したいと思ったの。足元で待機してくれてたレシアムも『うんうん』って言ってたし。
『敬愛する子を厭わない姿勢。ぼくも、君を受け入れるよ。セルシス』
「……あ、ああ。ありがとう」
「さーて。ここからが本番よ!! 夕方までに、壁と屋根までは完成させなくっちゃ!! そこまで完成したら、寝床くらいは少し距離置くくらいでもいいでしょう?」
「わかった。俺にも色々指示を出してほしい。可能な限り、力になれるよう努力する」
「りょーかい」
支柱になる木を入れる穴を掘ったり、魔法で操作しまくったりして。
レシアムも入れて三人に増えたから、中間のところより時間はかかったけど……だいたい二時間ちょっとで、枠組みが出来たのはすごかった。セルシスは刃物の扱いが得意で、風魔法をたくさん使って、凸凹とかをうまく作ってくれたの。地面に描いた、拙い絵だけでなんとなく仕組みがわかったみたい。
彼もやっぱり、もとは神童扱いされてたんだって。
それだから、お父様は前々から『守護の盾』としても、私の婚約者として据えておきたかったみたいなの。ルチルクォーツは豪運とともに、武の象徴としても最凶の守護石とされているから。
次回はまた明日〜




