第108話 可愛すぎるんだが
俺はいよいよ堪えるのが困難になってきていた。
(か、可愛らし過ぎる!!)
幼すぎる少女から、俺の実年齢くらいの大人びた少女の姿に成長したときも、かなり平常心になるまで耐えてきたものだが。
髪の色が俺と似た風合いになり、さらにザクロが色々とあのふんわりした髪を整えたことで、より一層愛らしさが増したのだ。
ひとまずは、左右に結んで流す髪型に落ち着いたが。首周りはあんなにも細かっただろうか? 普段はそのまま下ろしていたため、気づきにくかった。そんな扇情的なものを露わにするだなんて……はっきり言おう、目の毒過ぎる!!
(……陥落していたんだな。俺はとっくに)
城での騒動もだが、アルマリンにはとっくに惹かれていたんだ。
婚約者候補としてただのうのうと生きていただけの俺を、奮い立たせてくれた。成長する前からも、共にいることで喜びを感じていたのは嘘ではない。だが、彼女は自由になれたことで生きる喜びを見出しているのだから……この感情を押し付けても邪魔にされることだろう。
もしくは、前世の記憶保持者だから精神年齢は俺より上だ。俺のような、外見との不釣り合いなだけで成長したのとは事情が違い過ぎる。
(しかし、気づかれていたとしても……突き放したりはしていないようだが)
外見は……悪くないと思う。城では女たちに群がれるくらいには、『モテていた』はず。あの頃は鬱陶しいと思っていたが、アルマリンにもし傍に居てもらえるのなら、正直言って嬉しく感じる。
とは言え、彼女にそんな気はないと思う。
外見はともかくとして、料理の指導をしてくれるときなんかは同年代よりは年上のように振舞うことが多い。実年齢はともかくとして、そこはやはり前世で培ったものが関係しているのだろう。
(となると、むしろ脈無しか?)
その回答みたいなのに行き着くと、俺はかなり落ち込みそうになった。あんなにも愛らしい少女に、まったく恋愛対象に見られていないことが……想像だけとは言え、落ち込む要素になるだなんて思わなかった。
おそらくだが、初恋……だと思う。
快活で、気配り上手で、料理も美味いし、魔法などのセンスもずば抜けている。
惚れない要素がどこにある? と、よく今まで我慢していたものだ。いや、城を抜け出したときには少々考えていたなと、今更思い出したのだが。
(……彼女の横に立てるように、精進するしかないのか?)
同じ【宝石族】という種族だけしか、共通点がない。王族である彼女の身内は漏れなく美形揃い。陛下方だけでなく、縁戚も含めて。だとしたら、外見の魅力など些末なことかもしれないではないか。
(焦るな。嫌われてはいない。それだけはいいことだ。まだ、チャンスはいくらだってある)
押しかけてきたとは言えど、共に生活することを許可してくれたのも彼女だ。俺の願い出たときの態度はあれだったにしても、友人以上の関係に近いと自負してっもいいだろう。
だが、自分で言っておいて『婚約破棄』したのも同然ではと行き着いたら……何ともったいないことをしたんだと、内心悲しみで埋め尽くされた。悔いても仕方ないが、釣り合うような男になるんだ!!
次回はまた明日〜




