ハナの記録⑥ ククちゃんと被り物
今日、作業中にふと隣を見ると、ククちゃんの髪が伸びていた。
しかも金色に輝いている…
私に見られていると気付いたのか、ククちゃんはサッと髪をかき上げた——
先日この作業場に飛ばされてきたククちゃんは、あれから良くない方向に吹っ切れた。
どうやら、暇さえあればあちこちに入り込んで物を漁っている。
本来なら、こういう時はすぎに主任に報告すべきなのだが…
私が面談室のソファで勝手にくつろいでるのをククちゃんに見られたのもあって、なんとなく報告できずにいる。
そういえば昨日の夜、ククちゃんが立入禁止の第2倉庫に忍び込んでいるのを見かけた。
この急に伸びた髪も、おそらくそこで見つけてきたのだろう…。
……
普段、この工場には長髪は主任しかいない。
なので物珍しいのもあって、休憩時間もククちゃんはみんなの注目を集めていた——
「ククちゃん、それウィッグだよね?」
「うん、古い倉庫で見つけたよ!ロコお姉ちゃんにも貸してあげよっか?」
ククちゃんは、また金髪をかき上げながらロコ先輩の質問に答えた。
なるほど、結局お姉ちゃん呼びは定着したのか…
そんなことを考えながら遠巻きにみんなを眺める——
もしあのウィッグの色が黒だったら、今頃ククちゃんも主任みたいになっていたのだろうか…?
そう考えると羨ましい気もしてくる。
私だって主任になってちやほやされたい…。
いや、待った…
主任はちやほやされてたことがあっただろうか?
冷静に考えると、別に主任にはなりたくないかもしれない。
……
思考を整理して、主任への憧れがなくなったところで、ハロが何やら抱えて走ってきた。
よく見ると、もう使わなくなった黒いコードの束のようだ。
「これ、頭に着けたらいいかも……」
…ハロはたまにこういうところがある。
口数は少ないけれど、豊かな発想をしているのだ。
いそいそと頭からコードを垂らしていくハロの姿を見ていると、なんだかほっこりした気持ちになった。
はぁ…ハロは本当にハロだなぁ。
よく見ると、周りのみんなも何か頭に着けられないかとウロウロしている。
ロナさんは、コンベアのベルトらしきものを割いていた…
「上手くできたらミミ先輩にも着けるんだ〜♪」
…それは多分似合わないからやめてほしい。
私は、白い三角錐のミミ先輩が黒髪ロングになってるのを想像したあと、記憶から消した——
……
ククちゃんきっかけで、みんなの長い髪への憧れが溢れたのか…
気付けば作業場のあちこちで工作大会が始まっていた——
そんな騒がしい状態が見つからないわけもなく…
気が付くと、作業場の入り口に主任が立っていた。
みんなはまだ気付いていないようだ。
主任はゆっくりと見渡して、深いため息をつく——
おや、てっきりすぐに怒鳴られるかと思ったけれど、意外だな。
今日は雷の心配は無さそうだ…
そう思ったけれど、そのあとちゃんと怒られた——




