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終末工場日記  作者: 黒猫の凜


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ハナの記録⑤ 威厳とお姉ちゃん

今日は、作業中に遠くから騒がしい声が響いてきた。

なんだか、言い争っているように聞こえる…。

故障とか爆発とかはよくあるけど、こういうことは珍しい。

隣の作業場でなにかあったのだろうかと、ハロと顔を見合わせる。


直後、雷が落ちた——

いや、実際に雷は落ちていないが…

とても久しぶりに主任の怒鳴り声を聞いた。


これは大ごとだなと思っていると、いつの間にかいなくなっていたロコ先輩が駆け寄ってくる——

どうやら、みんなを代表して状況を確認してきたらしい。

要するに"野次馬"である。

野次馬先輩によると、怒られていたのはククちゃんだったそうだ。


ククちゃんは99番で私達の末っ子。

いつも元気で明るい子だが、たまに元気過ぎる時もある。

そのククちゃんが先ほど、みんなにこう宣言したらしい…


「ククが最後に作られたから性能が一番良い!だからみんなのお姉ちゃんになる!!」


それを聞いた他の子達が反発して言い合いになり、事が大きくなったのだとか…。

なるほど…20年間後輩ができなかった鬱憤が、こういう形で表れたのか。



……



そして次の日、当のククちゃんは私の横にいた——

主任に反省しろと言われ、ここに飛ばされたらしい。

反省させる為に飛ばした先が私の隣というのは、なんだか複雑な気持ちだ…。


ちょっと落ち込んだりもしたが、気を取り直して私はククちゃんに作業内容を教えることにした。

私がロコ先輩に教わった時のように、優しく丁寧に教えていく…

たとえ反省の為に飛ばされてきたのだとしても、少しでも良い思い出になるように——

そんな聖母のような気持ちで接した…


「——こんな感じかな。分からないところがあったら何でも聞いてね、ククちゃん」


「…ここの作業ってこれだけ?面白くなさそう」


率直過ぎるククちゃんの言葉に、私は聖母のようなほほ笑みで固まるしかなかった…。


"弾薬を箱に詰めて運ぶ"

ここの作業の大まかな説明はこれで終わる。

別に面白さとかも無い。

私だってそんなこと分かってるさ…。


「あ、でも、細かい注意点とかもあるから…」


なんとかそう続けて、この作業場での先輩としての威厳を保とうとした。

ここで引いてはいけないのだ。

でも、なんで威厳を保とうとしたんだろう…?

ククちゃんがお姉ちゃんに見られたい気持ちと似てるのかな?



……



そんなこんなで休憩時間になると、ロコ先輩が様子を見にやってきた。

先輩はククちゃんに興味津々で、話題は昨日の騒ぎのことになった。

伝え聞いた話は事実だったようで、やはりククちゃんはお姉ちゃんになりたいらしい。


「ククちゃん、性能の良さだけではお姉ちゃんにはなれないんだよ?」


「どうしたらお姉ちゃんになれる??」


「うーん…それを学ぶ為に、まずは私をロコお姉ちゃんって呼んでみよっか?私はここのみんなのお姉ちゃんだから」


なるほど、ロコ先輩が私達のお姉ちゃんだったとは…

ここでキッパリと否定してもいいのだが、それはそれで面倒だ。

そういえば、私とハロがここに来た時も、ロコ先輩は「お姉ちゃん」と呼ばせたがっていた…。


「じゃあ…ロコお姉ちゃん?」


ククちゃんの少し戸惑ったような返事を聞いて、ロコ先輩は満足気にうなずいた。

それを見ていた私は、多分いつもよりちょっとだけ真顔だった…。


なんにせよ、しばらくは周りが賑やかになりそうだ。

トラブルが無いといいけど——

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