ハナの記録④ 寝癖と鳥の声
今日は、なぜか朝からハロとハハにじっと見られてた…
どこか警戒しているようにもみえる。
「お、おはよう…どうしたの?」
「あっ、ハナだったんだ…!」
…ルームメイトの顔を忘れるとはなにごとだ!
そう思ったけれど、どうやら今日の私は髪がピョンと跳ねているらしい。
なるほど、生まれて初めての寝癖だ。
でも、それだけで私って分からなかったの…?
ちょっとショックを受けたりしながら、鏡に向かう——
うん、確かに元気よくピョンと跳ねている。
髪をチョイチョイと触ってみたり、濡らしてみたけれど、どうにも頑固である。
最終的には、跳ねてる部分を持って指で加熱してみたけれど、今日の私の髪はどうしても上を向きたいらしい…
……
仕方なくそのまま作業場に向かうと、案の定、主任の目を引いてしまった。
主任の視線は明らかに頭上に向いていたので、先手を打つ——
「…個性です」
「個性は寝て起きたら増えているものではない」
なるほど、そうなのか…。
でも、私の初めての個性もいきなり増えていた気がする——
「でも、余計なことを考えてしまう個性も、急に出てきましたよ…?」
「………」
これまた余計なことを口走ったなと目を細めて覗き見ると、なぜだか主任は複雑な表情をしていた。
あまり見たことのない表情だ…。
結局、それ以上はなにも言われず解放された。
つまり、私の寝癖も個性ということで落ち着いたのかな…?
持ち場に向かうまでも、いつもよりみんなの視線が向いている気がした。
なんだかちょっと恥ずかしいから、ピョンと跳ねてるのは早めに落ち着いてほしい…。
でも、個性が減っちゃうと思うと残念な気もしてくる。
……
休憩時間になると、「休みの日は何をするか」という話題で盛り上がった。
昔は休憩時間も休みの日もなかったけど、なぜか4年ほど前からこうなった。
ロコ先輩は休みの日に鳥の声を聴いたそうだ。
鳥はピーピー、チュンチュンという声を出すらしい。
どうやら、共用スペースにある端末にそのデータが入っているそうだ。
まだ時間があったので、みんなで聴きにいくことにした——
……
共用スペースは結構広めの部屋で、作業場よりも床が柔らかい。
まぁ、広めといっても、さすがに工場のみんなが集まったら身動き取れなくなるだろうけど…
ロコ先輩は端末を操作して、「リラックスBGM01〜鳥の声と川のせせらぎ〜」というデータを流し始めた。
なぜか、みんな目を閉じて聴き入っていたので私も同じようにする…
なるほど、確かに"ピーピー、チュンチュン"と聴こえる。
これが鳥の声……どことなくミミ先輩の声に似ている。
あと多分、それ以外の音が"川のせせらぎ"なのだろう。
川は知識として知っているけど、"せせらぎ"とはなんだろうか…?
確か「せせら笑う」という言葉があったはず。
つまり、"せせらぎ"とは川の笑い声…だと思う。
そんなことを考えていると、ロナさんが「ミミ先輩の声に似てる…!」とはしゃいでいた。
そういえば鳥は飛べるらしいけど、ミミ先輩もフヨフヨと浮かぶことができる。
となると、ミミ先輩は天使ではなく鳥だったのかもしれない。
この事実が広まったら、またミミ先輩人気が加速しそうだ——




