ハナの記録⑥ ククちゃんとウィッグ
今日、隣を見るとククちゃんの髪が伸びていた。
しかも金色に輝いている。
ここに飛ばされてきたククちゃんは、あれから良くない方向に吹っ切れたようで、暇さえあればあちこちに入り込んでは物を漁っていた。
本当は主任に報告すべきなのだが…
この間、面談室のソファで勝手にくつろいでいるのをククちゃんに見られたこともあって、なんとなく報告できずにいる。
昨日は、長い間使われていなかった第2倉庫に忍び込んでいるのを見かけた。
急に伸びた髪も、おそらくそこでの成果だろう。
この工場には主任しか長髪がいないので、物珍しいのもあって、ククちゃんは朝からとても注目を集めていた。
「ククちゃん、それはウィッグかな?」
「うん、古い倉庫で見つけたよ。ロコお姉ちゃんにも貸してあげようか?」
ククちゃんは金髪をかき上げながらロコ先輩の質問に答えた。
なるほど、お姉ちゃん呼びは定着したのか…。
そんなことを考えながらウィッグを眺める。
もしあのウィッグの色が黒だったら、今頃ククちゃんも主任になっていたのだろうか?
そう考えると羨ましい気もしてくる。
私だって主任になってちやほやされたい…。
いや、待った…主任はちやほやされてたことがあっただろうか?
冷静に考えると、別に主任にはなりたくないかもしれない。
主任への憧れがなくなったところで、ハロが何やら抱えて走ってきた。
もう使わなくなった黒いコードのようだ。
「これ、頭に着けたらいいかも……」
ハロはたまにこういうところがある。
口数は少ないけれど、豊かな発想をしているのだ。
はぁ…ハロは本当にハロだなぁ。
いそいそと頭からコードを垂らしていく姿を見ていると、なんだかほっこりした気持ちになった。
よく見ると、周りのみんなも何か頭に着けられないかとウロウロしている。
ロナさんは、コンベアのベルトらしきものを割いていた。
「上手くできたらミミ先輩にも着けるんだ〜♪」
それは多分似合わないからやめてほしい。
私は、白い三角錐のミミ先輩が黒髪ロングになってるのを想像したあと、記憶から消した。
そんな騒がしい状態が見つからないわけもなく…
気が付くと、作業場の入り口に主任が立っていた。
ゆっくりと見渡して、深いため息をつく。
おや、てっきり怒鳴られるかと思ったけれど、意外だな…。
そう思ったけれど、そのあと普通に怒られた。




