ハナの記録㊱ ハロという愛しい存在
何日もベッドで過ごしていると、曜日感覚が曖昧になってくる。
今日は工場が休みだということも、とあるルームメイトが面会に来て初めて気付いたくらいだ。
……
——朝、目が覚めると目の前にハロがいた。
寝ている私の目の前にいるということは、完全に真上から覗き込まれているということで……
一瞬、夢かと思ったけど、握られた手の感触が、そこに現実のハロがいると教えてくれた。
「——朝からどうしたの?ハロ」
「うん…ノックしてから入った方がいいのか、ハナに聞いてみようと思ったらね…ノックせずに入っちゃった」
「……そっかぁ。別に気にしなくていいよ?」
「分かった…ハナ、大丈夫?」
「もう大丈夫。……あ、身体はまだ戻ってないけど。心配かけてごめんね」
「そか…よかった。んーと……ちょっと待ってね」
ハロは、なにやら横を向いてゴソゴソし始めた。
ちょっとだけ身体を起こして見ると、箱の中を覗いている。
私に見せる為なのか、色々と入れてきたようだ。
「はい、これ……」
そう言って差し出してきたのは、金属の板だった。
手に収まるくらいのプレートに、文字が刻まれている。
一瞬、【11+】に見えたが、私にくれるということは恐らく【ハナ】と彫ってあるのだろう。
「これは、ハロが作ったの?」
「うん…お守り。部屋にも置いてるよ」
なるほど…ハクが言ってた、休眠装置にぶら下げてるってやつかな?
プレートは、ちゃんと角を削って丸くしてあった。
その丁寧さと、文字の不器用さがいかにもハロらしくて愛おしくなる。
「ありがとう…すっごく嬉しいよ。」
「ほんと…?よかった」
その後、私がいなかった間の話を聞いた。
——と言っても、あらかたハクから聞いているので、知ってることが多かったけど。
初耳だったのは、ハクが私の様子をみんなに話して安心させているということだった。
ハロも、ハクから話を聞いて少し安心したそうだ。
まだハクとの距離感がふわふわしてるので、なんだか気恥ずかしかった。
……まぁ、素直に感謝しておこう。
——そして、やはりハハは元気がないらしい。
ハロから見ても、最近はなんだか上の空だという。
後でここに来るらしいので、私からもそれとなく聞いてみよう……
そんなこんなで、ハロとの時間はあっという間に過ぎた。
あの後も、ハロは箱から様々な物を取り出して見せてくれたが、最後は面会時間の終了を告げにきた主任に連れていかれた。
そんなに疲れたわけでもないのに、なんだか少し頭が重い……
主任とハク以外とは久しぶりに話したからかな…?
ハハが来るまで、まだ時間があるし、脳内を休めておこう………
……
ゆっくりと目を閉じ、また開いた———
ただこれだけの動作……
そう思っていたのに、壁の時計は1時間ほど針を進めていた。
ハロが部屋を出た後に目を閉じて、すぐに開けた…と思っていたけど。
いつの間にか、意識が途切れていたみたいだ。
夜の休眠中を除けば、こんなことは初めてだった。
——そして、部屋の扉付近に、よく知ってるはずなのに知らない姿があった。
微かに浮かべた笑みが、次の瞬間には吹き消されてしまいそうな……
見たことのない、寂しげなハハの顔———




