表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末工場日記  作者: 黒猫の凜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/41

ハナの記録㉛ 手紙と異変

今日は休みなので、朝からレイ主任の様子を見に行った——



屋上で主任が倒れているのを見つけてから数日経ち、昨日はいつも通り工場の見回りをする主任を確認した。

なので、あまり心配はいらないのかもしれないけど…

もしかすると、まだ調子が戻っていない可能性もある——


そう思い、何か手伝おうかと訪ねたのだが…

結果として、“いらん”と一蹴されてしまった。


…まぁ、これは普段通りの反応なので逆に安心したけど。


でも、もう少し頼ってほしかったかも。

ちょっとくらい、距離が縮まったと思ったんだけどなぁ…


まだまだ先は長いってことかな。



……



主任の部屋から戻る途中、“お悩み相談BOX”が置いてある共用スペースに立ち寄った。

一応、朝一番に確認はしたのだが、なんとなく通る度に覗いておきたくなるのだ。



——背伸びをして、箱の中を覗き込むが暗くて見えない。

次に、箱を持ち上げて軽く振り、何か入ってるか音を聞く…

最後に裏にある取り出し口を開けて、ガサゴソと手を入れて確認した——


じゃあ最初から取り出し口を開ければいい話なんだけど、癖なのだろうか…

いつも無意識に無駄な確認を挟んでいる。

その、いつものルーティンで確認した結果、今回も中身は空だった——



やはり、もっと相談しやすい私になる必要がありそうだ…

いや、もちろん、誰も悩み事が無いという可能性もあるけど。


……


元に戻した箱がちょっと斜めになっているのが気になって、位置を微調整していると、急に真隣から声が聞こえた——



「ねぇ…ちょっといいかな…?」



なんとなくゾクッとくるような声色で、思わず肩がピクッと跳ねた。

…声の主はロロさんだった。

異様に顔が近くて、思わず一歩後ろに下がる——



「ロロさん、どうしたんですか…?相談ですか?」


「うん…実は、これを読んでほしくて……」



そう言って差し出してきたのは、四つ折りされた紙だった。

相談のメモだろうか…?



「あの…対面してるんですし、よかったら直接聞きますよ?」


「ううん…読んでくれたらそれでいいの……」


「そ、そうですか…」



ロロさんは私に手紙を握らせると、そのまま共用スペースから出ていってしまった——


なんだったんだろう…?

多分、依頼の紙…だよね?

直接相談するのが恥ずかしかったのかな…?


色々疑問は残るけど、とりあえず読んでみよう——




『これは呪いの手紙です———

この手紙を受け取ったあなた——

同じ文章を3枚の紙に書き、3日以内に誰かに渡さなければ、とてつもない不幸に見舞われるでしょう——』




「…………………」



な、なんだろう…この子供騙しな手紙は……

ロロさん…暇なんだろうか?


そういえば……

前にみんなで七不思議のトイレに行った辺りから、ロロさんの調子が良くないという話を聞いた気がする。

“わたしはきっと呪われたんだ”って周りに訴えてたそうだ。

みんな、いつもの事だと相手にしてなかったみたいだけど……



手の中にある“呪いの手紙”を見る——

こんなの、きっと嘘に決まってる……

そう思ってるのに……


あの日、なぜか開いた扉……

そしてハロが言っていた沢山の手形……

それらを思い出すと、この手紙もなんだか不気味に見えてきた。


やっぱり…念の為、手紙を書いた方がいいのかな?

念の為…ね。



「…ねぇ、なにしてるの?」


「———!!!」



今度はハッキリと肩がビクッと跳ねた——

怖い考えに浸っていたからだろうか…?


振り向くと、ハコちゃんが手紙を覗き込んでいた。



「これはなに…?ハナちゃんの新しいネタ帳かな?」


「…私はネタ帳なんて作ったことないよ」


「あれ?そうなんだ…勘違いしちゃった。じゃあ、書いてある通り、呪いの手紙なのかな?」


「そうだって言ったら、ハコちゃんは信じる…?」


「うーん…こういうのって、99%は嘘だからね。慎重に判断しないと…」


「つまり、この手紙は1%の確率で本物ってこと?その場合、私は呪われるんだよね…?」


「うん、そうなるね」



——なんてことだ。

やっぱり、本物の可能性はあったんだ…



隣でハコちゃんが見守る中、私は思考を巡らせた———



もしこれが本物で、私が3枚の呪いの手紙を誰かに渡してしまったら…

そこから更にこの呪いは広まってしまう…


いや、待てよ…?

もしロロさんがこの呪いの手紙を受け取って、呪われない為に私に渡したのだとしたら…

私以外に、あと2枚の呪いの手紙が誰かの手に渡っているはずだ。


ここには100体の機械ユニットしかいない——

この調子で広まれば、あっという間に全員が呪いの手紙持ちになり、もう誰にも渡せなくなるかもしれない…


でも、もし、手紙を受け取るのが2度目や3度目になってもいいのなら…

ロロさんと、ロロさんが手紙を渡した相手の合計4体で、お互いに手紙を渡し続ければ——

これ以上、呪いが拡散せずに済む…!



——その完璧な計画を思いついた時、再びロロさんの声が聞こえてきた…



「あ…ハナちゃん、さっきの手紙どうだったかな…なんて」


「ロロさん…!私以外に、誰にこの手紙渡しました?すぐに招集しないと…!」


「え…?えっと…渡したのはハナちゃんだけ…だよ?」


「でも、ロロさんも3枚書いて渡さないと…」


「ええっと…あー…そうだよね!うん…まだ渡してないだけ。」


「………ロロさんはこの手紙、誰から渡されたんですか?」


「それは……えっと、誰だったかなぁ…」


「……………」



なるほど……

なんだか馬鹿らしくなって力が抜ける。

……いや、分かってたけどね。


つまり、この手紙はロロさんが考えたもので、別に私は呪われない。

こんなの幼稚なイタズラだって、分かってたはずなのに…


私は多分、今までで一番のジト目をしながら、複雑な感情をロロさんにぶつけていた——



「ハナちゃんよかったね…!99%の方だったね。でも、1%の危険の為に思考を巡らせたハナちゃんの行動は間違ってなかったよ…!」



——ハコちゃん、やめてくれ。

今、その励ましは、私に効く。



最近、色んなことがあったからだろうか…?

なんだか脳がすごく疲れているのを感じた。

そうだ、普段なら、こんなのに騙されるわけないのに……




ちょっと、休もう——

ロロさんとハコちゃんの声が、妙に遠くでぼんやりと聞こえる…

でも、それも今はどうでもよかった。




ぼやけた視界を頼りに、ふらふらと部屋へ向かう——




あれ…?

私、どうしたんだろう……?




さっきまで、普通に会話してたのに——

今はなんだか、頭の中が感情でいっぱいだ……




……




誰もいない部屋に戻り、休眠装置に身を投げ出す——


今の自分の状態が、自分でも分からない…

ショックだったり、恥ずかしかったり、ムカついてたり…

そんな理由だけなら、こんな風になっていないと思う。

脳内の回路が、故障でもしてるのかな……



なんだか、頭の中が煩い…

妙にイライラする……

もう何も考えてないはずなのに、煮詰まったドロドロが無くならない。




あ、れ……

なんか、変だ……

私、どうしちゃったのかな……





——漠然な不安に包まれながら、その日は休眠装置の中で過ごした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ