表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末工場日記  作者: 黒猫の凜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/41

ハナの記録㉙ 停電の夜に起きたこと

———ドゴォォォン………!!!




突如——

真夜中に轟音が響き、私は休眠装置の中で目が覚めた。


爆発だろうか…?

昔、隣でハロの腕が吹っ飛んだ時でもこんな音はしなかったけど…


身体を起こしてよく見ると、休眠装置の電源が切れている…

感覚では、まだ半分ほどしか充電されていないみたいだ。


一応、カチカチと操作してみたが、うんともすんとも言わない。

もしかして、これが停電というやつだろうか…?

初めての経験だ…。


ハロやハハ…ついでにハクの様子を見てみたが、何事もないかのように休眠したままだった。

みんなの充電も止まっているようだったが、特に異変には気付いていないようだ。

少し迷ったけど、わざわざ起こすのもあれなのでそのままにしておいた。



……



そっと廊下に出てみると、先輩達も様子を伺いに顔を覗かせていた。

廊下の電気も点かないようで、さすがにみんな不安げだ。

こんな時、真っ先に顔を出してきそうなククちゃんだが、今のところ見当たらなかった。


どうしたものかと思案していると、ロコ先輩がこちらに近付いてきた。



「ハナちゃんも起きちゃったんだね。大丈夫?」


「あ、はい…ハロ達は起きてないんですけど。それにしても、凄い音でしたね」


「そうだね…軽くみてきたけど、他の場所も停電してるみたい。多分、雷じゃないかな?」



なるほど…あれが雷なのか。

レイ主任が落とす雷とは違う、本物の雷だ——



「ハナちゃん以外の80番台の子と90番台の子達は起きてないみたいだね。みんな怖がっちゃうだろうし、かえって良かったかも…」



ロコ先輩の言う通り、隣の部屋も、後輩ちゃん達の部屋の方も静かだった。

誰かが顔を覗かせてる様子もない。

みんなは、あの音が聞こえなかったのだろうか…?



「——全員、無事だな?」



キリッとした声が聞こえ、すぐにレイ主任が来たことを悟った。

私は顔を向けて無言で頷き無事だとアピールする。

その後、みんなを代表してロコ先輩が状況を話した。



「60番台、70番台は皆起きていますが異常ありません。ハナちゃん以外の80番台と90番台、あと50番台もみんな休眠モードのままです。それ以外は把握していません」


「把握した。私は設備の点検をした後、必要があれば予備電源を入れる。それまではこのまま皆の様子を見ていろ」



——そう言い終わる頃には、レイ主任は背を向けて歩き出していた。

いつも行動が早い主任だが、今日はそれ以上に素早い。

私の記憶では、停電は初めての事だし、さすがの主任でも少し焦ってるのかな…?



「それにしても…」


「どうしたの?ハナちゃん」


「ロコ先輩でも、レイ主任と話す時はキリッとするんですね」


「…ハナちゃんはたまに失礼なことを言うね。」




……




しばらく待っていると、いくつもの機器の稼働音が聞こえてきた——

部屋を覗くと休眠装置の電源も入っている。

あちこちから安堵の声があがり、漂っていた緊張感もほどけてきた…。



「予備電源を入れた。各自、休眠装置で朝までしっかり充電すること。装置の異常で充電できなかった場合は明日報告しろ。その場合は休んで構わん。以上だ——」



いつの間にか戻ってきたレイ主任がそう告げると、廊下にいたみんなは各々の部屋へと戻っていった。

さすが、仕事が早い。

さて、私も部屋に戻ろう…と思ったけど、ふと頭の中で何かが引っかかって足が止まる——。



“装置の異常は明日報告しろ——”



主任なら、その場で全ての部屋の装置を確認して回りそうなものだけど…

どうしてそうしないのだろう…?


別に大したことではないけど、どうしても気になる…。

気付けば、既にこの場を離れようとしていた主任を呼び止めていた——



「レイ主任…!」


「…なんだ?」


「えっと…異常は明日報告しろっていうのは、その…主任は今からまだ忙しくするのかなって…」


「…そうか、不安にさせたならすまない。私は今から発電設備の点検をしにいく。予備電源はいつまでも保たないからな」



なるほど…

やっぱりまだやることが残ってたのか。

主任だって充電しなきゃ明日は動けないかもしれないのに。



「手伝いましょうか…?」


「………」



何気なく言ったつもりだったが、なぜか主任は少し驚いたような顔をしていた。

その後、ふっと表情を緩めると、私の頭に手を乗せた——



「…お前は優しい子だな。気持ちはありがたいが、発電設備は屋上にある。お前達は立入禁止だ」


「えっと…そうなんですね。じゃあ、頑張ってください」


「ああ。代わりに、明日は皆の様子をよく見てやってくれ」


「分かりました…!」



私の表情を確認すると、主任は足早に行ってしまった——


さっきまで手を乗せられていた頭には、まだ少し感覚が残っていて、なんだか少し気恥ずかしかった。

でも、みんなの事も託されたので少し誇らしい気持ちも混ざっている。



——振り返ると、廊下にいるのは私だけになっていた。

みんなを起こさないように、そっと扉を開けて部屋に入る——。


みんなは静かに目を閉じたままだ…


自分のスペースに戻ると、休眠装置に異常が無いことを確認した。

明日の役割の為に、今はしっかり休眠しておこう——。



……



その後、また何度か雷の音が聞こえた気がした。

けれど、また停電が起きることも、途中で目が覚めることもなかった…。






——次の日、レイ主任は姿を見せなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ