表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末工場日記  作者: 黒猫の凜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/41

ハナの記録㉘ 講堂で運動(ギャグではない)

今日は朝から工場内を散歩していた。


この前考えた通り、特に依頼のない休日は色んな場所に顔を出してみようと思ったのだ。

まずは、先日解禁された講堂にでも行ってみようかなと思っている。


講堂では色んなスポーツの道具も置かれてるらしいし、一度、色々見ておきたい。

こんな朝っぱらじゃ、誰もいないかもしれないけど…



……



講堂の重たい扉を押して中に入ると、一気に解放的な雰囲気になった。

初めて来た時は目新しいものが多くて気にしてなかったけど、よく見たらここは2階までぶち抜きの構造になっていた。

どうりで天井が高いわけだ…



「お、ハナちゃんじゃーん!どしたのー?」



天井に気を取られていると、明るい声が聞こえてきた。

左横を見ると、ナオさんが壁にもたれて床に座っていた。

その前には、ボールを持っている先輩もいる。

目元がクールな雰囲気だ。

確か…ナミ先輩だったかな?



「あっ…えっと、おはようございます。ナオさんと…ナミ先輩ですよね?」


「うん、そうだよ。おはよう」



ナオさんよりも少し低めの声が耳に響く。

…かっこいいかもしれない。

なるほど、私の周りにはこういうタイプが不足していたのか。



「えっと…先輩達はなにしてたんですか?」


「私がね、ナミちゃんがバスケしてるとこ描かせてほしいってお願いしたんだ〜!」


「バスケットボールってやつですか?映像では見たことありますけど」


「そそ、ナミちゃん上手いんだよ〜。ほらあれ、見せたげてよ!クルクル〜って…!」


「あんまり見せるようなものじゃないけど…」



そう言いながら、ナミ先輩は片手でボールを回すと人差し指の上に乗せた…!

すごいバランス感覚だ…



「おぉ……!凄い。曲芸みたいですね」


「ね?凄いでしょ〜。こういうボール持ってるポーズとかって脳内だけじゃイメージしにくいからさ、参考になるんだよねー」



そう言うと、ナオさんはいそいそとペンを走らせ始めた。

確かにナミ先輩はかっこいいし、立ってるだけでも絵になる。

筆が乗るのも分かる気がする…


ナミ先輩は、せっせと絵を描くナオさんを眺めていたが…

しばらくすると思い出したようにこちらに視線を向けた——



「ハナちゃん…でいいかな?ナオとは仲が良いの…?」


「えっと…まぁ、そうですね。前はよくお話してました。今は作業場が違うので会う機会も減ってますけど…」


「ふぅん……そうなんだ?」


「は、はい……」



あれ…?

なんだろう…ナミ先輩、声のトーンが一段下がったような気がしたけど。

なにか怒らせるようなことでも言ったかな…?



「と、ところでここって、色んな道具とか置いてるんですよね?」


「ああ、向こう側に倉庫があってね。そこに色んなボールとかマット、跳び箱とか色々置いてあるよ」


「なるほど…そういう道具って、みんな使ってたりしますか?」


「跳び箱はまだ使ってるところは見たことないかな。大抵はどれかのボールを出して遊ぶか、講堂をぐるぐる走るか…かな」



ぐるぐる走る……

そんなの、余程動くのが好きでもなければやらないだろう。

もしかして、案外、ククちゃんみたいな元気の塊がいるのだろうか…?



「よかったら、僕と走ってみる?」


「えっと…でも、私達は運動しても鍛えられないわけで…」


「なに言ってるんだい?身体は使わなければ錆び付いてしまうよ」


「錆び付き防止にはオイルを使うので…」


「いいから、ほら…」



なぜか、やたらとナミ先輩に背中を押され、結局走ることになってしまった…。


床にテープで書かれたトラックを3周…

最初は10周しようと提案されたが、それはなんとか拒否した。


私は、走った後の疲れを想像して、その想像だけで疲れ始めていた…。

横を見ると、ナミ先輩は異様なほどに真剣な顔つきだった…




「それじゃ、いくよー!よ〜い…ドン!!」




ナオさんの合図で一斉に駆け出した——



講堂内に足音が響く——

ナミ先輩と私だけなのに、床の反響音が聞こえて、まるで大勢で走ってるようだった。



1周目はそんなに差が出なかった。

全力で走ったのはいつぶりだろうか…?

こうして走ってみると、思ってたより講堂が広く感じる。




2周目…

既に差がつき始めている。

おかしい…私の方が後に作られたから、性能としては良いはず…

日頃から身体を動かしていないから、やはり錆び付いてきてるのだろうか…?





3周目…

脚が重い……

足音も、1週目の時のような軽やかなものではなくなっている。

誰だ、運動はストレス発散になるとか言ったのは…

でも、これは私の怠惰のせいかもしれないから、後でコイ先輩にオイルを注してもらおう。






そんなこんなでゴール……

気付けば半周以上の差がついていた。

まぁ…当然と言えば当然か。



ふらふらと先輩達の元へ近付いた。

なんだか少し目がチカチカする…

ナミ先輩はスタート前とは違い、少し心配そうな顔をしていた。



「すまない…ちょっとムキになってしまった。君は慣れてなかったよね。大丈夫かい…?」


「はい…でもなんか、一気に充電が減った気がします」


「ああ、もしかして知らなかった…?」


「……?」


「僕達は普段の作業を前提として1日持つように設計されてるから、作業以上の負荷…例えば運動とかをすると早く充電が無くなってしまうんだよ」



なるほど…それは知らなかった。

確かに、今までも少し早めに充電が無くなりそうになったことはあったけど、何かの誤差かと思ってた。



「じゃあ、ナミ先輩は運動する時どうしてるんですか…?」


「休日は昼と夜、2回充電してるよ。そのせいで時間が減っちゃうけど、そうしないとやりたいことができないからね」



そうだったのか…休日でも色んな過ごし方があるんだな。

じゃあ、今日は私も2回充電するか、夜を早めにするかしないといけないわけだ。


……やっぱり、そこまでして運動したいとは思えない。

これは私の趣味にはできなそうだ。


……



「うし…描けたー!!」


「どれ?見せてくれる…?」



ナミ先輩は、ナオさんの声を聞くと素早く駆け寄っていった。

絵を覗き込むようにして顔を寄せている。

なんだか距離が近い気もする……


もしかして……

ナミ先輩はナオさんのことが好きなのだろうか…?

しかし、私には正面からそれを聞く度胸は無い。



「後は部屋で仕上げたいかもー」


「よし、じゃあ戻ろうか。僕も充電したいしね」


「あ、先輩達は部屋に戻るんですね。じゃあ…」


「ナオには同室の僕がついてるから大丈夫だよ……?」


「い、いや…私も自分の部屋に戻ろうかなーって…」


「なんだそうか…じゃあ、気を付けてね」


「ハナちゃんまたねー!完成したら見せるよ!!」



……



講堂の前で先輩達に手を振って見送った。

私は多分、半笑いになってたと思う……



ナミ先輩…

前の作業場で顔見知りではあったけど、あんな感じだったのか…。

少なくとも、私とナオさんがよく話してた頃はそんな素振りは見せてなかった。

じゃあ、この数年でああなったのだろうか…?


でも、自分のやりたいこと、好きなことがはっきりしてるところは素直に羨ましい。

私も見つけられればいいな。



とりあえず今日の目標は1つ達成したし、一度部屋に戻ろう…

確か、休眠装置に短時間モードがあったはずだ。


でも、なんだか疲れたのは身体だけじゃない気がするけど……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ