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終末工場日記  作者: 黒猫の凜


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ハナの記録㉖ お悩み相談係のお悩み相談

今日は休み……

いや、気分としては“今日も”休みだ——



週休二日になってからというもの、当然なのだが休日がやってくるのが早くなった。

しばらく経ったが、まだ脳は慣れてきていないようだ。


もちろん、休日はお悩み相談係としての役割もあるので暇というわけではない。

たとえ、今日も相談BOXに何も入っていなかったとしても……


それでもほら、飛び込みの相談があるかもしれないから…。



——そう自分を納得させて、朝から面談室で待機していた。




……




——暇だ。



どれだけ自分を偽っても、やはりこの感情を抑えることはできない。

いくらお気に入りのソファでゆったりできるからといってもだ…

それが休みの度に、何時間も続くとなれば暇でしょうがない。



こういう時、何か趣味でもあれば暇を潰せたのだろうか…?

例えば、読書とか手芸とか…。

そういうのなら、多分、面談室でもできる。

でも、自分が本を読んだり編み物をしたりしてる姿を思い浮かべても、いまいちしっくりとこない。

やってみたら、また変わるのだろうか…?


……


いや、待てよ——

そもそも、“依頼が無い時は面談室で待機して相談を待つ”というのは、とてつもなく非効率的なんじゃないか…?

せっかく相談BOXまで設置してるのだから、それでいいのではないだろうか…?


ナオさんの時は先にBOXに相談メモが入っていて、話を面談室で聞いただけ…

クハちゃんには共用スペースで自分から手助けをしただけで、ククちゃんは部屋に突撃してきたので面談室は使わなかった。


——つまり、今日まで面談室に突発の依頼がやってきたことはない。

私は本当に、休日の度に、来るかも分からない依頼をここで待ち続けるのか…?


そう考えて、私は虚無感に襲われそうになった——


“依頼が無い時は面談室で待機して相談を待つ”というのは自分で決めたことだったが、それは一旦棚に上げておいた——



……



元々は、休日が増えて、"どう過ごせばいいか分からず"に部屋で悩んでいた。

そして、趣味を見つけようと思って図書室に行ったけど、結局成果なしで…

その後、レイ主任に“やりたい事はないのか”って聞かれて…

色々考えた結果、みんなのことを思い浮かべてお悩み相談係に志願した。


そして、今は面談室で"どう過ごせばいいか分からず"悩んでいる。

もちろん、お悩み相談だって、いつもあるわけじゃない。

場所は変わっても、結局私は同じことで悩んでいた…。



……



そんなことを考え、今にも虚無感に覆い尽くされそうになった時、面談室の扉が開いた——

一気に世界に色が戻り、手足の感覚がリアルになった。

そして、私の脳が再び活性化する——


身体を起こすと、訪ねてきたのはハロだった。



「ハロ!どうかしたの…?」


「ううん…朝にハナがね、“今日も相談無いのかなー”って言ってたから…どうだったかなと思って…」


「つまり、様子を見に来てくれたってこと?相変わらず優しいねぇハロは」


「んーと、それだけじゃなくて…最近、休みの日は一緒じゃなかったから、ちょっとだけ寂しかったりもした…」



そう聞いて、内心とてもニヤけてしまった…

今日は、ハロがいつにも増して愛おしく感じる。



「そっかそっか…!予想通り暇してたんだー。よかったら話聞いてくれる?」



そう言いつつ、ハロをソファの一番座り心地の良い場所へ案内する。

今日は私が相談する側になってもいいだろう。

ハロは、ふかふかのソファに慣れていないのか、ぽんぽんと両手でソファを触ってバランスを確かめていた…。


しばらくして落ち着いたのを確認すると、私はさっきまで考えてたことを話してみた——



「…というわけで、ずっと面談室にいるのも辛いところなんだよね」


「うーん…急ぎの人とか、大変な問題ならレイ主任もいるし、ずっと待ってなくてもいいと思う…」


「だよね…?私もそう思ってたんだー。今度、レイ主任に言ってルールを変えてもらうよ」



“依頼が無い時は面談室で待機して相談を待つ”というのは自分が決めたルールだったが、ここでも敢えて口にはしなかった。

わざわざ自分の失態を目立たせる必要はないのである。



「あとね…僕も最初に相談の箱に紙を入れたけど、あれはハハが“ハナはきっと喜ぶよ!”って背中を押してくれたから入れれたんだ…」


「そうだったんだ…?」



きっと、ハハのことだから精神的に背中を押しただけじゃなくて、物理的にも“背中を押していた”に違いない…。



「うん、だからね…悩みはあるけど自分から相談したり、箱に入れたりできない子もいるんじゃないかなって…」



なるほど…それは盲点だった。

確かに、ハロみたいな性格の子は、悩みや相談があっても自分から言い出せないかもしれない。

でも、それならどうすればいいんだろう…?



「ハロは、どうすればいいと思う…?」


「んーと…えっと……」



何気なく聞いてしまったが、これは難しい質問だろう…。

ハロは頭を左右に傾けながら考え込んでしまった。


ハロが相談BOXを使えたのは、ハハに背中を押されたから。

あとは、お悩み相談係が仲の良い私だったからというのも大きいだろう…。



「やっぱり、相手をよく知らないと相談もしにくいよね…」


「ううーん……」



ここでの生活は長い——

でも、まだ話したことがない先輩や後輩は結構多い。

それなら、休日にここでひたすら待つ代わりに、色んなところに顔を出してみるというのはどうだろうか…?


ここにはレイ主任を含めて100体の機械ユニットしかいないんだ。

それなら、みんなが相談しやすい私になることだって、きっとできる——

もちろん、みんなと関係を作るのは急いでやるようなことじゃないし、時間はかかるだろうけど…。



「ハロ、私、もっとみんなの事を知れるように動いてみるよ」


「んーと…もう解決したの?」



私の為にずっと考えていたのだろう…ハロは左にコテンと頭を倒している。



「うん、ハロのおかげだよ。あ…でも、別に急ぐことじゃないから、今度はハロと一緒に過ごす日も作ろうね」


「うん…嬉しい」



そう言ったハロの口元は、いつもより嬉しそうだった。

誰かの悩みを解決できた時の私も、こんな感じだったのかな…?



「今日は、ハロがお悩み相談係だったね。ありがとう」


「うん…よかった。ここのソファ、座り心地良いね…主任との面談の時は気付かなかったけど…」


「そりゃあ、私のお気に入りだからね…!」



ハロは、またソファをぽんぽんと触っていた——

そういえば、私も前はよく触ってたかな……

ハロのおかげで、お気に入りの場所を嫌いにならずに済んだのかもしれない。



次の休日は、まだ行ったことのない部屋に行ってみようかな——

新しい目標を前に、はやる気持ちを抑える。

時間はいっぱいあるんだ…みんなと、ゆっくり関わってみたい。



それでいつか、みんなが頼れる私になれたらいいな。

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