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終末工場日記  作者: 黒猫の凜


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ハナの記録㉔ ククちゃんの探し物

今日は休みなので、朝一で相談BOXを見に行こうと準備していたのだが…


その予定は次の瞬間には崩れてしまった。

ガラッ…!と部屋の扉が開いたかと思うと、ククちゃんが駆け込んでくる——


「ハナさんどうしよう!ない!見つかんないの!!」


まったく…最近のご機嫌だったククちゃんはどこにいったのやら。

まぁ、そのうちこういう日がくるかもとは思っていたが…


「おはよう、ククちゃん。で…なにが無くなったの?」


「耳のやつ!ずっとつけてたのに!!」


うん…今のところ全く分からないのでとりあえずククちゃんを落ち着かせて事情を聞くことにした。

話によると、ここ最近は倉庫で見つけた無線イヤホンを四六時中着けて音楽を聴いていたらしい。

それが今朝になったら無くなっていたと。


なるほど…ククちゃんが作業中に縦揺れしていたのはこのせいか。

いや、ダメだろう。

この数週間はずっと無線イヤホンを着けて過ごしていたそうで、もう着けてないと落ち着かないらしい。

今もククちゃんは、なんだかソワソワしている…。

これは…無線イヤホンを見つけても、他の問題が残りそうな気がするけど。


「その無線イヤホンは片方じゃなくて、両方なくなったの?」


ククちゃんは、こくこくと頷いた。

耳から落ちたとかなら両方同時に無くすのは不自然か…。


「念の為聞くけど、どこかに置いて忘れてるとかでは無いんだよね…?」


「休眠中も着けてたもん…!」


…それは誇れるような話ではない。

どうやら休眠装置に入る前は着けていて、朝になったら無くなっていたようだ。

うーん…休眠中は基本的に身体が動くこともないし、ポロっと落ちただけなら部屋のどこかに落ちてるかも?


「じゃあ、とりあえずククちゃんの部屋をもう一度探してみよっか」


「うん、わかった…!わかったよ…!」


色々と注意しなきゃいけないことはあるんだろうけど…

そわそわして落ち着かないククちゃんを見ると、とりあえず解決してあげたくなった。



……



部屋に着くと、中にはクハちゃんがいた。

今日は”おこている!”の紙は貼っていなかった。


「お邪魔するねー。ちょっと探し物してもいいかな?」


「あ、どうも。いいですよ…わたしも手伝いましょうか?」


「いいよいいよ!これも依頼だから、係の私に任せておいて」


「あー、はい…じゃあお任せします…」


クハちゃんは、なんだかちょっと申し訳なさそうな顔をしている。

いつもククちゃんの面倒をみてるから、また迷惑かけてると思って友達として申し訳ないのかな…?


……


とりあえず、ククちゃんの休眠装置周りを探してみる——

テーブル周辺は想像の数倍散らかっていて、さすがククちゃんだなと思わされた。

これでもクハちゃんが片付けてあげてるのだろう…。


しばらく探してみたが、何に使うか分からない謎アイテムばかりが沢山出てくる。

この間、コイ先輩と交換した半透明の指は、既に飽きられたのかテーブルの下に転がっていた…。

よしよしと指を撫でて祭壇に戻す——


その後も頑張ってみたが、お目当ての無線イヤホンはなかなか出てこなかった。


……


「なにしてるのー?」


顔を上げると、ロナさんとミミ先輩が部屋の中を覗き込んでいた。

仲良くお散歩中だったようだ。


簡単に事情を話すと、突然ミミ先輩が「ピピッ、ピーピーポピ!」と音を鳴らした。

何か心当たりがあるのだろうか…?

ロナさんは真剣にその音を聴いている——


「ピポピッ!ピーピピッ!」


…しばらく傾聴した後、ロナさんは笑顔で頷いて話し始めた。


「なるほど…ミミ先輩によるとね、そういう無線イヤホンは接続してた端末を操作して、音を鳴らして探す機能が付いてるかもって」


そういう機能があったとは…!

というか、ミミ先輩の言葉を完全に理解できるようになっていたとは…!

これが愛の力というやつなのだろうか?

こころなしか、ミミ先輩も伝わって嬉しそうにしている。


……


接続していた端末を見せてもらい、それらしき機能を探してみる。

すると、【接続機器を鳴動させる】というものがあった——


「よし、鳴らすよ…!」


…みんなが静まる中、

やや大きめのアラーム音が…


クハちゃんの方向から聴こえた——



顔を見ると、明らかに動揺している…。

近付いてみると、やはりクハちゃんの身体付近が音の出処のようだった。


観念したのか、クハちゃんはポケットから無線イヤホンを取り出した…

後ろで、ロナさんが端末を操作して音を止める。

しばらく沈黙が続いた後、ククちゃんが堰を切ったように話し始めた——



「クハが盗んだの?!なんでそんなことするの!!!」



ククちゃんが暴れ出しそうなのを制止しながら、私もクハちゃんに尋ねる…。


「クハちゃんのことだから、何か理由があったんだよね…?教えてくれる?」


クハちゃんは気まずそうにしていたが、ククちゃんをチラッと見てから話し始めた——



「だって、これを着けて生活するようになってから、ククは誰とも話さなくなっちゃったでしょ…わたしとも。それに、ちょっと耳から外れた時も、慌てて付け直して…そういうの、依存って言うんだよ?良くないよ…」



「でも!!盗んじゃダメなんだよ!?」



”盗んじゃダメ”というのはどの口が言っているんだろうと思ったけど、水を差すのはやめておいた。

もしかして、この前クハちゃんが言ってた”他の手を考える”っていうのがこれだったのかな…?



「盗むのは良くないって分かってるけど…ククが心配なんだよ。それに…寂しいの。わかってよ…」



「う…えと……」



わずかに震えるクハちゃんの声に動揺したのか、ククちゃんの勢いは薄れていた…。

こんなクハちゃんの様子は初めて見たのだろう。

クハちゃんの手にある無線イヤホンを見つめ…クハちゃんの顔を見る。

しばらくすると、もじもじしながら口を開いた——



「分かった……ごめん」



お互い言いたい事を言って、とりあえず落ち着いたかな…?

じゃあ、ここは相談係として提案してみよう。


「コホン…じゃあこうしよう?これからは、クハちゃんと相談して無線イヤホンを着ける時間を決めていこう。ククちゃんも、ずっと着けるのは良くないって反省したから謝ったんだよね…?」


ククちゃんは、ちょっとだけクハちゃんを見た後「わかった」と言ってくれた。

そんなククちゃんの頭をクハちゃんがヨシヨシと撫でていた——



……



部屋を出た後、助けてくれた先輩達にもお礼を言った。


「ロナさんとミミ先輩もありがとうございました」


「どういたしましてー。ちゃんとお悩み相談係できてるみたいだね!」


「ピポピッ!」


「そ、そうですか…?それならいいんですけど…」


なんだか胸の辺りが少しくすぐったい。

前回も今回も、探し物しか解決してない気もするけど…まぁこれからだよね。


それに、クハちゃんとククちゃんの関係が壊れずに済んでほっとしていた。

クハちゃんの寂しい気持ちも、これで無くなるかな…?

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