ハナの記録㉑ 私のやりたい事
今日は、朝から部屋で天井を見つめていた——
今頃、みんなは作業をしているのだろう。
私はというと、先ほどレイ主任に休暇をもらってきた。
正直、物凄く怒られるのではないかと内心ひやひやしていたのだが…
意外にも、すんなり許可してくれた。
それどころか、"しばらく休め"とまで言われた。
本当にいいのだろうか…?
休みたいと言い出したのは私だが、こうもあっさり休みをもらえると逆に不安になってくる。
クビになって工場から放り出されたりしないだろうか…?
それか、解体されて廃棄処分とか?
私が作られた理由を聞いたことはないけれど、恐らく役に立つ為に作られたはずだ。
だが、今の作業を休んでる私は役に立たないわけで…
存在意義が無いと言える。
…自分で言って悲しくなってきた。
違うことを考えよう。
……
レイ主任は、"何かやりたいことはないのか"とも言っていた。
あれはどういうことなんだろう…?
趣味を見つけろということでいいのかな?
とはいえ、趣味に関しては現状行き詰っている。
解禁された部屋を踏まえると、音楽か運動辺りになるけれど…
今のところピンとこない。
他に私の好きなもの……
今日は作業を休んだけれど、ここでの日々は多分好きだ。
工場のみんなのことも、好きだ。
いつも不具合に向き合っているハロ——
ミミ先輩と一途に交流するロナさん——
誰よりも好奇心旺盛なククちゃん——
こう見ると、みんな個性があって、良いところも悪いところもある。
そういうのを全部含めて好きなのだろう。
じゃあ、私の個性は…?
良いところや悪いところは……?
確か、前にレイ主任が言ってた気がする——
”お前はすぐに気を取られるが、それだけ周りを見ているということでもある”
”短所だな。ただ、長所にもなり得る”
私は周りをよく見ている——
それは長所にもなり得る——
今まで、私はみんなのことを色々と見てきた。
でも、いつも見守るだけで、深く関わろうとしてこなかった。
…私はみんなのことが好きだ。
じゃあ、あと一歩踏み込んでみてもいいのではないだろうか…?
そこまで考えると、私はレイ主任の元へ向かった——
……
「お悩み相談係…?」
「はい。多分みんな、レイ主任に相談するほどでもない小さな悩みとか困り事とかあると思うんですよ。そういうのを聞いて、できる限り解決する係…みたいな」
「それは、お前がやりたい事なのか?」
「はい…多分。やっぱりみんなの事が好きだなーと。なので…」
「…そうか。お前は周りをよく見てるからな。それに、お前になら相談しやすいこともあるだろう」
「じゃあ、いいんですか…?前に、係は向いてないって言ってたので…」
「あぁ、悪かった。こういう係は想定してなかった。お悩み相談なら向いているかもしれん」
そこまで聞いて、内心ほっとする。
それと同時に、自分を認めてもらえた気がして、なんだかあったかくなる…
「だが、悩みにも種類があるだろう。お前の手に余る場合は私に報告するように。それから、簡単な修理や調整が必要な場合はコイの手を借りられるよう手配しておく。それでいいな?」
「はい…!ありがとうございます。」
「…作業はどうする?もし係に専念したいなら、作業をやめるか減らすかしてもいいが」
「えっと…大丈夫です。作業は今まで通りやって、まずは休日にお悩み相談係を始めようかなって」
「本当に大丈夫なんだな…?」
「はい。色々考えたんですけど、やっぱり私はここでの毎日が好きなので。そう思ったら、なんだが気が楽になって、やってみたいことも見つかりました。」
「…そうか。よく考えたな」
そう言うとレイ主任は私の頭を撫でた…
まさかそんなことをしてもらえるとは思ってもなかったので、嬉しいやら恥ずかしいやらで頭がいっぱいになった。
まぁ、半分くらいはビックリが占めていたのだけど。
その時のレイ主任の顔は、撫でる手で隠れてよく見えなかったが、普段より笑ってる気がした——
……
その後、もう少し”お悩み相談係”についてレイ主任と詰めてから部屋に戻った。
いつの間にか休憩時間になっていたようで、部屋で大の字になっているとハロが様子を見に戻ってきた——
心配そうなハロに、寝転んだまま笑顔を見せる。
「ハナ、だいじょうぶ…?」
「うん、午後からは一緒に作業しようね!ありがとう、ハロ。」




