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終末工場日記  作者: 黒猫の凜


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ハナの記録⑳ 図書室での出来事

今日、私は朝から悩んでいた…


今週から休日が2回になった。

今日はその、初めて迎える"週に2度目"の休日だ。


しかし、何もやることが思い付かない…

なんだかいつもより、時間の流れが遅い気がする——



思えば、昔から私は休みの日をぼーっと過ごしていた。

“休日なんだから、ただ休んでいればいいんだ”くらいに思っていた…

だが、これから休日は週に2度やってくるのだ。

このままでは脳内回路が錆びついてしまう…。


作業が忙しかった時は、突発で休みになると嬉しかった記憶があるのだけれど…

今は、作業の日の方が時間が早く過ぎるのにな…なんて考えている。

我ながら、随分とワガママな思考をしている…



まぁいいや、現実に目を向けよう。

今日やることがないということは、きっと次の休日もやることがない。

このままでは虚無感に苛まれる…



今こそ、趣味を見つけるべきだ——



……



決意を固めた私は、図書室へとやってきた。

先日、案内を受けた時に目を付けていた漫画コーナー…


“漫画”とは、絵を枠内に描き、文字を入れたものだ。

かなり前に、ナオさんが4コマ漫画というのを描いてくれたことがある。

ここにあるのは、あれの長いやつなのだろう…

4コマでもかなり面白かったので、ここに漫画があると聞いた時から興味があったのだ。


とりあえず、適当に1冊手に取ってみる——



《漫画で分かる!弾薬の作り方〜中級者編〜》



パンッ…!!という音が図書室に響いた——

気が付くと、勢いよく漫画を閉じてしまっていた。

なにこれ…?

漫画って楽しいものだと思ってたのに。

なぜ休日に漫画で作業を学ばなければならないのか…

ぶつぶつ言いながら本棚に戻す。


いや、たまたまかもしれない。

なにせここには沢山の漫画があるのだ…

そう思い直し、背伸びをして棚の上段の漫画を取る——



《漫画で巡る円周率の世界-第7巻-》



バシッ…!!という音が響く——

今度は床に叩きつけてしまっていた…。

巡りたくないよ…!

今まで円周率だけでよく7巻まで引っ張れたものだ。

なんか逆に気になってきた…


「ビーッ、ビビーッ!」


音にビックリして振り返ると、ヨヨ先輩がいた。

相変わらずの四角いボディで何かを訴えている…

ヨヨ先輩の身体にある文字盤を見ると、

「本を乱暴に扱わないでください」

と書かれていた。


「あっ…ごめんなさい。気を付けます」


私が謝ると、ヨヨ先輩はスイーっと入口付近のカウンターに入っていった。

どうやら、図書室の係をしているらしい。

確かにヨヨ先輩なら、身体の上に本を積めるし、細いアームで棚の整理もできるだろう…


係か…。

そういえば、ロナさんは楽器の管理係を引き受けたらしい。

どうしても趣味を見つけられなかったら、私も何かの係にしてもらおうかな…?


……


そう考えながら、漫画コーナーの隣を見る——

目に入ったのは、”生活”という札が付けられた棚だった。

なんとなく気になり、手を伸ばす——




《家庭で作れる絶品おかず100種》




見た瞬間、なぜか胸の辺りが苦しくなった気がした…


“生活”というのは”人間の生活”のことだったのか。

じゃあ、このコーナーは私には関係ない……はずだ。


なら、どうしてこんな気持ちになってるのかな……?




“甘い卵焼きでしょ?ちゃんと作るから良い子で待っててね…”




変な記憶データ……前に見た夢みたい…






………寂しい





「ビーッ!ビビ!!」


ハッと現実に連れ戻される———

ぼやけていた視界が徐々にはっきりとしていき、ヨヨ先輩の姿が映る。

文字盤には、「本を乱暴に扱わないでください」と書かれている。


「あっ……ごめんなさい」


手元を見ると、料理の本が強く握られて少し曲がってしまっていた…。

ヨヨ先輩はどこからか黄色いカードを取り出して見せると、また戻っていった——

イエローカード…次やったら出入禁止ということかもしれない。



ふぅ…と息をつく。

記憶の混乱はもう治まっていた。

さっきのは不具合だろうか?

別にみんながいるから寂しくなんてないはずなのに……



……



その後、レイ主任に図書室での話と係について聞いてみた。

話を聴き終えると、主任はしばらく黙ってしまった……


…沈黙が思ったより長い。

何かいけないことを言ったのかとドキドキしてくる…


しばらくすると、こちらに視線を向けて話し始めた。



「本を叩きつけた時点で黄色、本を曲げた段階で赤だ。よって、図書室に2週間出入禁止とする。あと、係はお前には向いていない。以上だ。」



「………わ、わかりました。」



何かと思ったら、私の処罰を考えてたのか…

本を叩きつけたくだりは正直に話さなければよかった…。

求めていた答えとは違った気がするが、それ以上は聞けそうになかったので素直に引き下がる——


……


部屋に戻ってくると、意味もなく大の字で寝転んでみた。

なんだか作業の日より疲れた気がする…


なんにせよ、これで今日の収穫はゼロだ。

それどころか解禁された場所がさっそく立入禁止になってしまった…



“趣味”かぁ…

また次の休みになったら考えよう——

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