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終末工場日記  作者: 黒猫の凜


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ハナの記録⑯ 機械ユニットは夢を見るか

先日、主任に名前を付け、夢の中での約束を果たした。

なので、もしかしたらあの夢の続きが見れるかもと楽しみにしていたのだが…

あれ以来、3日連続で夢を見れていない。


まぁでも、これまでも夢は数える程しか見たことがなかったし、続きもかなり先のことになるのかもしれない…。


そんなことを考え、部屋でぼんやりしているとハハが万歳をして飛び起きた。

これは毎日の事だけれど、未だに油断してるとビックリする。


「ハナ、おはよー!」


「おはよう、ハハ」


そういえば、みんなはどんな夢を見るのだろうか…?


「ねぇハハ。休眠中、どんな夢を見たりする?」


「ん?夢…?夢かー。う〜〜ん…」


なんとなく聞いただけなのだが、ハハは首をぐるぐる回して考え始めてしまった。

ゆっくりと5〜6周したところで考えが纏まったのか、パッと表情が明るくなる。


「休眠中は休眠してる!だから何も見たりしないよー!」


なるほど…ハハは夢を見ないタイプなのか。

じゃあ…と思い、目を開けたまま横になっているハロにも聞いてみる。


「ハロはどう?どんな夢みる?」


「んーと…ボクも見たことない」


あれ、そうなのか…

もしかすると、夢を見るのは珍しいのだろうか?


「じゃあ、この部屋で夢を見るのは私だけか…」


「ちょっと!聞いてよ!!アタシにも夢のこと聞いて!!」


…ハクは相変わらずうるさいな。


「じゃあ、ハクは夢見るの?」


「見るよ♪今も見てる…!アタシは夢見る乙女だからね♪」


シュッ……!!

と、空を切るような音が響く——

見ると、私の右拳が突き出されていた。


ふぅ…思わず手が出てしまった。

綺麗な右ストレートだったけど、ヒョイと躱されてしまったようだ。


兎に角、この部屋では私しか夢を見たことがないと分かった。

もしかして、これって私の不具合なのかな…?


……


そう思い、少し心配していたが…

休憩時間に聞いてみると、先輩達は夢を見たことがあると分かった。

その場にいたのはロコ先輩とロナさん、あと珍しく会話に混ざってくれたロロさんだ。

まず、ロコ先輩がよく見る夢の話をしてくれた。


「その夢ではね、わたしはどこかに入院してるの。それで、よく弟と妹がお見舞いに来てくれてね…『ロコお姉ちゃん』って甘えてくるんだよ?」


「それ、ほんとに夢ですか…?妄想じゃなくて?」


「ハナちゃん…わたしに対して年々辛辣になってきてるよね?」


だって、なんだかロコ先輩にとって、えらく都合の良い夢な気がするから…

なんだかちょっと怪しいので、ハナさんにも聞いてみる。


「じゃあ、ハナさんはミミ先輩の夢とか見るんですか?」


「んー、実はミミ先輩の夢が見たくて色々試したんだけど、未だに見れてないんだー。夢ならなにしても許されるのに…」


ん…?なんか後半、不穏な言葉が聞こえた気がする。

でも、きっと気のせいだろう。


「じゃあ、どんな夢を見るんですか?」


「えっとね、夢の中の私は大きなお屋敷に住んでるんだー。でも、かなり病弱みたいで、いつも室内でお人形遊びをしてるの。」


「その人形がミミ先輩だったり?」


「違うよっ!あ、でも目はちょっと似てるかも…!」


なるほど、ロナさんは病弱お嬢様か…

私もそんな風に色んな設定の自分が見れるなら見てみたいな。


あと聞いてないのは…ロロさんか。

正直、あまり話したことが無いのでちょっと緊張する。


「ロロさんも、夢とか見るんですか…?」


「う、うん…見るよ。でも、みんなより怖い夢の話になっちゃうかも。」


「怖い夢…?」


「うん…よく怖い夢を見るの。だから、夢の話題が気になって、みんなの話も聞いてみたくなって…」


「なるほど…その怖い夢ってどんな感じですか…?話したくなければそれでも…」


「ううん、聞いてほしいかも…。

その夢ではね、いつも診察台みたいなのに縛り付けられてるの…。

それで、『これはなに?説明して!』って言うんだけど、知らない人が『大丈夫、親御さんには説明済みだから』って言って、注射をして、頭に機械を取り付けて……」


なんだか、思ったより怖い…

ジャンルで言うと、ホラーというやつだろう。

思わず唾を飲み込む。


「それで……?」


「分からない…いつも、そこで目が覚めるの。」


「な、なるほど……」


続きが無くてちょっと拍子抜けしたけど、ほっとしたような気もする。

色んな夢を見てみたいと思ってたけど、こういう夢は嫌だな…


その後は、ロロさんのお悩み解決の為に、どうしたら夢を見なくなるかをみんなで考えていた。

何かのヒントになるかと思って、ルームメイトは夢を見たことがないという話をしたけど、ロコさんは、


「もしかしたら、夢は見てるけど起きた時に覚えてないだけかもしれないよ?」


と言っていた。

確かにそうなのかも…。

結局、夢を見ない方法は思い付かずに終わった。



……



その夜、また夢を見た。

ベッドにいる私と、レイ主任……



「前にさ、私が夢の話をした時に、『機械ユニットは夢を見ないから分からない』って言ってたでしょ?」


「ああ、それがどうした?」


「それでね、どうやったら主任が夢を見れるか考えてみたんだ。」


「別に見たいとは思わない」


「でも、せっかくこうして交流してるんだから、理解したいと思わない?」


「…なら、聞こう」


「簡単だよ。まず、記憶の中から『夢で見たい場面』を探す。その記憶が、休眠装置に入った時に一定の確率で再生されるように設定するんだ。」


「……」


「その設定が終わったら、今の会話の記憶を消す。できるなら、この設定を自分で確認できないようにロックをかける。これで、ある日突然、夢を見た感じになるんじゃないかな…?できる?」


「可能ではある。だが、それは夢なのか?」


「それは分かんないけど…でも、人間の夢だってはっきりとした事は分かんないんだから一緒だよ。」


「設定した。記憶の消去は後でやっておこう」


「はやっ!!じゃあ…またいつか夢の話をしてみるね。ところで、どんな記憶を夢に選んだの…?」


「それは…またいつか、夢の話をした時にな。」

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